エアコンの仕組みを解説! なぜ空気を冷やしたり温めたりできるのか?

エアコンの仕組みについての監修:田中 真紀子(たなか まきこ)
ライター:UP LIFE編集部
2024年9月25日
空気

暑い日も寒い日も快適な室温にしてくれるエアコンは、もはや生活必需品と言っても過言ではありません。にもかかわらず、エアコンがなぜ空気を冷やしたり温めたりできるのか、よくわからないという人も意外と多いのでは? そこで今回は、家電の専門家である田中真紀子さんに、エアコンの仕組みを教えてもらいました。イラストを交えながら、わかりやすく解説します!

冷たい風が出てくるのはなぜ? エアコン冷房運転の仕組み

エアコンを構成する主なユニットと役割

エアコン運転の仕組みを知るなら、まずはエアコンがどんなものなのかをおさらいしておく必要があります。田中さんによると、「エアコンは部屋側にある室内機と、屋外に設置された室外機で構成されている」とのこと。

「室内機と室外機は2本の配管でつながっており、配管の中には“冷媒”が循環しています。また、室内機と室外機は、それぞれに熱交換器を装備。この熱交換器とは、熱が温かいものから冷たいものへと移動する性質を利用し、より効率良く熱を移動させる機器のことです。さらに室外機には、冷媒を圧縮するコンプレッサー(圧縮機)と、冷媒の減圧を行う膨張弁も備えられています。

冷媒は空気中の熱を取り出し、運ぶ役割を担う物質のこと。“冷媒ガス”とも呼ばれ、常温では気体ですが、圧力をかけると液体になります。その際、周囲の熱をうばったり反対に熱を放出したりするのですが、その仕組みを利用してエアコンは空気を冷やしたり温めたりしています」

注射の前にアルコールで腕を消毒するとひやっとしますが、あれはアルコールという液体が気化する際に、腕の熱をうばうから。あの状態を意図的に作り出しているとイメージするとわかりやすいかもしれません。

イラスト:エアコンの主なユニットと役割

冷房運転の仕組み

実際に冷房運転の場合は、どのようなやりとりが行われているのでしょうか? 田中さんに聞きました。

「冷房運転のとき、低温の液体となった冷媒は室外機から室内機へと移動。室内機の熱交換器を通る際に、室内機が取り込んだ室内の空気の熱で蒸発し、気体へと変化。ここで働くのが先ほど紹介した気化熱の原理で、液体が気化するときに熱を吸収します。冷媒は周囲の空気から熱だけを取り込んで室外機へと移動する一方、熱を奪われて冷たくなった空気は室内機のファンで再び室内に戻されます。これが冷房時の冷たい風ですね。

そして熱を乗せた冷媒は、室外機のコンプレッサーで圧縮されて高温の気体へと変化。熱交換器を通る時にファンによって熱を室外機に排出すると同時に、熱移動によって熱が奪われ、液体に変わります。そこからさらに膨張弁で減圧され、より低温になった状態で室内機へと移動。エアコンの冷房運転はこの一連の流れを繰り返すことで、部屋の中を涼しく保っているんです」

イラスト:冷房の仕組み

冷房運転とは何が違う? エアコン除湿運転の仕組み

続いて教えてもらったのは、除湿運転の仕組みです。田中さんによれば、「基本的には冷房運転と一緒ですが、設定温度まで冷やすのが冷房運転なのに対し、除湿は湿度を下げることを優先している」のだとか。

「空気は温度が下がると含むことができる水分量が減るため、取り込んだ空気を冷やせば空気中の水分は結露して水へと変わります。除湿運転はこの水を屋外に排出することで、空気中の水分を取り除く仕組み。“弱冷房除湿”などと呼ばれる方式ですが、これだと室温も下がって肌寒く感じてしまうこともあるため、できるだけ風量を抑えるように設計されています」

このような肌寒さを抑えるために、エアコンによっては「再熱除湿」と呼ばれる除湿方式を採用したモデルもあるのだそう。

「再熱除湿では、一度冷やした空気を温め直してから室内に送るため、部屋の温度はそのままに湿度だけ下げることが可能。温め直すには電力を使うことから、最近は省エネの観点から再熱除湿方式は少なくなっていますが、古いモデルなら当てはまる可能性もあります。もし、自宅のエアコンの除湿方式を知りたいなら、説明書で確認してみてください。説明書がない場合は、除湿運転時にエアコンから出る風を手に当ててみましょう。少し冷たいなら弱冷房除湿、常温なら再熱除湿である可能性が高いと思います」

冷房運転を行えば、除湿もしてもらえる?

冷房も除湿も、基本的にしていることが同じなら、冷房でいいと思うかもしれません。でも、梅雨や秋雨の時期などは、湿気だけが気になりがちですよね。そんなとき、田中さんがオススメするのが“自動運転”を行うこと。

「冷房と除湿、どちらを選べば良いかわからない場合は、自動運転を選びましょう。外気温の環境も踏まえながら、エアコンが自動で運転してくれるので快適に過ごせます。ただし、どうしても感じ方には個人差があるのでまずは、自分に合うかどうかを試してみては? もし、ちょっと寒く感じるようなら、温度を1℃上げるなどの工夫も取り入れてみるのも良いでしょう」

湿度だけ下げられる『エオリア』の“パーシャル制御”

パナソニックのエアコン『エオリア』は、GXシリーズとJシリーズを除く全モデルに“パーシャル制御”を採用。熱交換器に除湿する部分としない部分をつくることで、ごく弱い除湿を可能としています。

「除湿運転中に室温が下がりすぎたときは、オンオフを繰り返して調整していましたが、この制御方式なら冷えすぎが抑えられるんです。初めて聞いたときは、“そんなこともできるんだ” と思ったし、“その発想も、実現する技術力もすごい”と感じましたね」

冷房と逆の流れで温める。エアコン暖房運転の仕組み

では、暖房運転の場合、エアコンはどのような動作を行うのでしょうか?

「暖房運転では、冷媒は冷房運転と逆の向きに移動します。まず、室外機のコンプレッサーで冷媒を圧縮。高温の気体となった冷媒は室内機の熱交換器へと移動し、熱を手放して液体に変化します。このときに手放した熱は温風となり、室内に送られることで部屋を暖める仕組みですね。

その後、冷媒は室外機の膨張弁で減圧され、低温の液体となって室外機の熱交換器に移動し、大気の熱を取り込んで蒸発。気体の状態でコンプレッサーの圧縮を受け、高温となって室内機へと向かう、というのが暖房運転の一連の流れです」

寒い季節に「大気の熱を取り込む」と聞いても、なんだかピンと来ないかもしれませんが、実はこのとき、冷媒は外気よりもずっと低い温度になっています。そのため、たとえ真冬でも外気から熱を奪うことができるのだそう。

イラスト:暖房の仕組み

エアコンの仕組みから考える、使用時の節電ポイント

空気中の熱を取り込んだり送り出したりしながら、快適な室温を保ってくれるエアコン。この仕組みを知ると、空気や熱をできるだけ効率良く通す必要があることがわかります。「フィルターの掃除はこまめに」「室外機の周囲にはモノを置かない」といった節電のコツは、まさにこのため! もちろん、これ以外にもさまざまな節電ポイントがあるので、簡単にご紹介しましょう。

フィルターはこまめに掃除!

フィルターが汚れていると空気が通りにくくなり、エアコンの能力は低下してしまいます。さらに、消費電力がアップするほか、エアコンに余計な負荷がかかって寿命を縮める可能性も……。2週間に1回の頻度で掃除をすると、年間1万円以上の電気代を節約できるという試算も出ているので、掃除はこまめに行いましょう。

※パナソニック「F401D2」を使用。電気代27円/kWhでの実験

室外機は空気の通り道を確保する

室外機の周辺はいつもキレイに、すっきりさせておきましょう。熱の吹き出し口をふさぐと冷房効率ダウンにつながるため、モノを置くのは厳禁。特に強風が吹いた日は、ホコリや落ち葉などがたまってしまう可能性があるので、しっかりチェックするのがおすすめです。

風向きと風量を調整して、運転効率をアップ

冷たい空気は下に、暖かい空気は上に移動する性質があるため、冷房時は上向き、暖房時は下向きに風を送るようにしましょう。また、たとえば暑いからと設定温度を下げるより、風量を強くしたほうが節電につながります。

室内の温度ムラを解消する

空気を循環させることで、室内の温度ムラが解消できます。冷気や暖気がたまらないように、サーキュレーターや扇風機も使って室内の空気をかき混ぜるようにしましょう。

湿度調整で体感温度をコントロール

たとえ気温が高くても、体感温度が低ければ快適に過ごせます。同じ28℃でも湿度が高ければジメジメして暑く感じ、除湿していればカラッとして涼しく感じるもの。また、暖房時なら、湿度が低いと寒く感じやすくなります。人が快適に感じる湿度は50%〜60%なので、加湿機や除湿機を使って上手にコントロールして。

熱の出入りが大きい窓はカーテンなどで断熱を

家の中で熱の行き来する量が最も多いのは窓と言われています。高断熱タイプのサッシやガラスを使っていない場合は、断熱用のシートやカーテンを利用しましょう。また、カーテンと窓の隙間から冷気が入り込まないよう、床まで届くタイプのカーテンを使うなどの工夫も必要です。

エアコンの仕組みを理解して、もっと上手に使いこなそう!

田中さんによると、「エアコンの仕組みを知れば、効率の良い使い方や節電のコツが自ずとわかってくるもの」なのだとか。

「たとえば、自宅のエアコンが再熱除湿方式だと知っていれば、冷房と除湿はどちらがお得か、イメージがつきやすいですよね。また、なぜ室外機の周りをキレイにするのかなど、ひとつひとつの節電ポイントについても納得できますよね。理由も併せて理解することで、より節電行動がとりやすくなると思いますので、知っていて損はないですよ」

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エアコンの仕組みについての監修

田中 真紀子

田中 真紀子(たなか まきこ)

白物家電、美容家電の専門家兼ライターとして活躍。日々発売される新製品をチェックし、製品の紹介記事やレビュー記事を雑誌やweb、新聞などで紹介している。日常的にも話題の新製品を使うことで、ライフスタイルに合わせた選び方や、上手な採り入れ方の提案も行っており、テレビ出演も多数。

2024年9月25日 空気

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