「空気環境」とは何を指す?
私たちへの影響と、室内の空気環境を保つ換気の重要性
空気環境と、室内の空気環境を保つ換気の重要性についての監修:Yuu(本名:尾間 紫)
ライター:UP LIFE編集部
2024年12月12日
空気
「空気環境」と聞いて何となく想像できても、説明するのは難しいと思う人もいるはず。あまり聞いたことのない言葉かもしれませんが、一体、何を指すものなのでしょうか? また、空気環境が私たちに与える影響は?気になる空気環境について、一級建築士でリフォームコンサルタントのYuuさんこと尾間 紫さんに、その概要や快適に保つ方法を教えてもらいました。
空気環境を構成する4つの要素とは?
空気環境とは、どのようなものを指すのでしょうか? そんな質問に対し、Yuuさんは「温度」「湿度」「気流」「清浄度」という4つの要素があることを教えてくれました。「これらを適切にコントロールすることで、健康的で快適な空気環境をつくることができる」のだとか。
空気環境の要素①温度
「室内の温度は、快適さや空気の対流、さらには暮らしの質や健康にも大きな影響を及ぼすことがわかっています。当然ながら、高すぎても低すぎても良くないため、エアコンなどを利用して適切な温度に調整する必要があるんです」
空気環境の要素 ②湿度
「空気中の水分量を示す湿度は、高すぎればカビやダニの発生を促すうえに、暑い時期なら熱中症リスクも跳ね上がります。一方、湿度が低すぎると、乾燥を引き起こすなどといった可能性もありますね」
空気環境の要素 ③気流
「気流を適切に調整すると、室内の温度ムラが解消され、快適に過ごすことができます。たとえば冬、顔だけポカポカしていて足元は冷たいという状況だと、不快なのはもちろん、冷えなどを引き起こす可能性も。空気は冷たいと下へ、暖かいと上に移動する性質があるため、適切な空気の流れをつくり、温度ムラを抑えることが大切です」
空気環境の要素 ④清浄度
「汚れた空気の中で過ごすことは、健康にも良くない影響を与えかねません。健康的で快適な空気環境づくりのためには、花粉やハウスダスト、PM2.5、二酸化炭素といった汚染物質が少ない、もしくはほとんど存在しないことが大切。このほか、ガスの不完全燃焼などによって一酸化炭素濃度が上がると、即座に命に関わるので、十分な注意が必要です」
人が1日に吸う空気の量でもわかる、空気環境の大切さ
人が1分間に呼吸する回数は、12〜20回。1日分なら最大で約2万9000回と言われ、吸い込む空気の重さは約18kgにも上るのだそうです。そこまでの量を体の中に取り入れるとなると、適切な空気環境がいかに大切かも想像しやすくなりますね。
「深呼吸をするとき、家の中よりも屋外のほうが気持ち良く感じられませんか? それはつまり、家の中よりも外の空気のほうがキレイだというイメージがあるから。家の中で思いっきり深呼吸をしても、外でしたときと同じくらいキレイな空気環境を目指していただきたいですね。
特に注意したいのは、小さなお子さんがいる家庭です。東京都保健医療局によると、人が吸い込む化学物質の量を体重1kgあたりで見たとき、子どもは体が小さい分、大人の2倍近くにもなるとか。これを受けて東京都では、『化学物質の子供ガイドライン』を策定し、公共施設の建築仕様書を改定するなどの取り組みも行っています」
室内の空気環境が私たちに及ぼす影響
続いて、どのような空気環境が私たちに影響を及ぼすのか、Yuuさんに教えてもらいましょう。
快適かつ健康的に暮らしていくための空気環境とは
「人が快適と感じる温度は夏なら25℃、冬は20℃ほどで、湿度は基本的に50%前後が目安。このほか、適切な空気環境としては温度ムラが少なく、ニオイがないことなども挙げられます。
また、有害物質は先ほど挙げた花粉やPM2.5などに加え、VOCと呼ばれる化学物質の濃度にも注意が必要。昨今の住宅は化学物質に対し、非常に配慮して建てられているので安心ですが、こうした物質への規制は国によって異なるため、輸入された家具や雑貨などの中には、有害物質を発散しているものもあります。ちなみに、わが家でも以前、楽器ケースを輸入したところ、それが発散した有害物質の影響で気分が悪くなるということがありました」
温度と湿度が整っていない環境で起こり得ることは?
「高温多湿の場合、カビの発生や熱中症のリスクが高まります。意外と知らない方もいるようですが、熱中症リスクは温度だけでなく湿度も大いに関係するもの。たとえ気温が28℃でも、湿度が75%だったら熱中症リスクが大幅に高まるんです。
逆に湿度が低すぎると、肌やのどが乾燥することに。私も、のどが乾燥して声が出にくくなることは実感しているので、乾燥しやすい時期は講演の1週間前から加湿機で家中の湿度をコントロールし、マスクを着けて眠るようにしています。このほか、鼻やのどの乾燥にも注意が必要です」
二酸化炭素濃度と集中力の関係性
「二酸化炭素の濃度が上がると健康に影響を及ぼしたり、生理的な変化が起こったりすることがわかっています。たとえば、二酸化炭素濃度が1000ppmを超えると認知機能が低下し、判断力や集中力に影響を与える可能性も。ボーッとしたり、あくびが出て眠くなったりするほか、頭痛やめまいを起こす、睡眠の質を下げるといった研究結果もあります」
快適な空気環境を保つためにできること
それでは、私たちが適切な空気環境に身を置くには、何をすれば良いのでしょうか? Yuuさんに聞きました。
まずは換気を怠らないこと
「室内の空気環境を整える方法のひとつが、換気。窓を開けて新鮮な空気を取り入れることで、室内の有害物質を追い出せます。花粉やPM2.5などは家電を使用することで一部取り除くこともできますが、二酸化炭素濃度を下げるには、空気の入れ換えが必須。そのため換気は必ず行うようにしましょう。ちなみに、最近は二酸化炭素濃度計というものが販売されているので、興味のある方は利用するのも良いと思います」
24時間換気システムがあれば、窓開け換気は不要?
「住宅の24時間換気システムは、空気の取り入れ口となる吸気口を部屋に備え、浴室などの換気扇からまとめて排気をするタイプが一般的。2時間で家全体の空気が入れ替わる仕様となっており、スイッチは切らずに常時オンにしておきましょう。
ただし、オンにしておけば、窓開け換気が不要というわけではありません。特に寝室は、それほど広くない空間で長い時間を過ごすため、空気か汚れやすいもの。24時間換気システムだけでは不十分なので、ドアを少し開けておいたり、サーキュレーターなどを使って空気を入れ替えやすくしたりするといった工夫も必要です。
また、吸気口と排気口には、空気の汚れを取り除くフィルターが付いていますが、汚れたままで放置しておくと換気機能が落ちてしまいます。説明書に沿って数か月に1度は状態をチェックし、汚れている場合は交換するようにしましょう。このフィルターが入っていないと、外気の汚れがそのまま家の中に取り込まれてしまうため、入れ忘れにはご注意ください」
家電を利用して空気環境を整える
「空気の温度と湿度のコントロールに役立つのがエアコン。また、湿度のコントロールには、除湿機や加湿機が効果的です。もちろん、空気清浄機や次亜塩素酸 空間除菌脱臭機『ジアイーノ』を使えば、室内の空気に漂う花粉やPM2.5などの有害物質を取り除くことも可能。換気扇やサーキュレーターで空気の流れをつくりながら空気清浄機などを上手に使えば、家のすみずみまでキレイにできますよ」
空気環境は目に見えないからこそ注意が必要
「きちんと換気計画が立てられ、気密性と断熱性も高い最近の住宅は、空気環境を管理しやすいと言えます」と、Yuuさん。
「古い家は隙間風などが入るから換気は不要、と思う方がいるかもしれませんが、言い換えれば有害な物質や湿気なども入り込みやすいということなので注意したいですね。いずれにせよ、換気や家電を利用して空気環境を整えることは大切。空気は目に見えないため、つい疎かにしがちですが、快適性に加え、仕事や勉強のパフォーマンスにも影響を及ぼすものなので、上手にコントロールしてくださいね」
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空気環境と、室内の空気環境を保つ換気の重要性についての監修
Yuu(本名:尾間 紫)
多くの現場経験や相談実績を持ち、リフォーム全般に精通する一級建築士。住宅リフォームコンサルタント・住宅リフォームガイド。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱しており、講演・監修・執筆などを通じて本当に満足するリフォームのノウハウを伝えている。総合情報サイト『All About』リフォームガイド。
2024年12月12日 空気
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