「タオルは育てるもの」 IKEUCHI ORGANIC(株)代表取締役 阿部哲也さんに聞く、いいタオルと過ごす良質な生活。
ライター:UP LIFE編集部
2022年3月17日
家事・くらし
毎日の暮らしに欠かせないタオル。だからこそ、いつも清潔に、そして気持ちよく使いたいもの。でも、長く使っているうちに、手ざわりが悪くなったり、きちんと水を吸い取ってくれなくなったりといった経験をもつ方も多いのでは?そんなお悩みに答えるべく、IKEUCHI ORGANIC(株)代表取締役でタオルソムリエの阿部哲也さんに、いいタオルの選び方からお手入れのコツまで、実演を交えて語っていただきました。
プロフィール
阿部哲也
IKEUCHI ORGANIC株式会社 代表取締役社長
1991年 慶應義塾大学卒業後、證券会社に入社
2000年 小売チェーン店へ転職。販売促進、新業態開発、基幹システム導入に携わり管理部門取締役を経て退職
2009年 IKEUCHI ORGANIC株式会社に入社
2016年6月より現職
IKEUCHI ORGANIC(株)
1953年にタオルの街、愛媛県今治市に創業。
「最大限の安全と最小限の環境負荷」を理念に掲げ、オーガニックコットン100%のタオルを作る今治タオルの製造会社。全製品、赤ちゃんが口に含んでも大丈夫な世界最高水準の安全テスト「エコテックス®スタンダード100」のクラス1をクリア。
直営ストアは、東京・京都・福岡・今治の4店舗。
ノーマルなタオルが一番好き。タオルソムリエが語る、タオル愛。
僕がタオル愛に目覚めたのは、2009年にいまの会社に入ってから。それまでは、特に意識せずに使っていました。2014年にIKEUCHI ORGANIC(株)の東京ストアがオープンした頃からは、お客さまからいただいたお悩みやご相談にお答えするためのタオルのケア、特に洗濯方法をいろいろ試すようになりました。そうしているうちに、だんだんと手のセンサーが働くようになり、目をつぶりながら触っても、いいタオルかどうかが分かるようになったんです。朝、顔を洗って、タオルの棚をまさぐって、自分のお気に入りの一枚を引き当てると、それだけでラッキー!って気持ちになりませんか?(笑)。
僕が好きなタオルは、第一に水を良く吸うこと。水を吸うことがタオルの一番のお仕事ですから、外せません。さらには、買ったときの風合いがなるべく長持ちすること。私の好みのタオルは、柔らか過ぎず、経年劣化が緩やかなもの。「ど」がつくほどノーマルなタオルです。言うなれば「塩むすび」のようなタオル。鮭でもイクラでもタラコでもなく、塩。どんなにいい具材を入れても、基本の塩むすびが美味しくないとアウトですから。うちの商品でいうと、『organic120』。どこから見ても普通のタオルですよね。まさに王道。特別な加工も施されていないところがいいんです。
とはいえ、人の好みは千差万別なので、これが一番いいタオルと定義付けることはできません。用途やお好みに合わせて自分に合ったタオルを探してみてください。
タオルの命は「パイル」!性質や用途別のおすすめも紹介
タオルの命ともいえるのが、「パイル」。「パイル」とは、布の表面にあるループ状の糸のことです。糸の種類、長さと太さ、撚りの回数や織りの密度などにより、タオルの性質や表情ががらりと変わります。一例ですが、
◇パイルが長いタオル…表面積が大きい分、吸水量が多くてふんわりしているが、ひっかかってほつれやすい。
◇パイルが太いタオル…吸水量は多く丈夫だが、柔らかさと繊細さに欠ける。
◇撚りの甘いタオル…柔らかいが、耐久性に劣る。
◇無撚糸のタオル…撚りのない糸を使い、空気を含んでいるのでふんわり柔らかい。耐久性は低い。
手ざわり、吸水性、耐久性と、タオルごとの得意分野はさまざまです。また、用途別としては、
◆旅行用…軽くてかさばらず、速乾性のある薄手のタオル。
◆家でのバスタイム…洗髪後の髪の水分までしっかり吸い取ってくれる、厚めでボリュームのあるタオル。
といった使い分けがおすすめです。吸水性を求めるなら綿100%のもの。速乾性を重視するならポリエステルなどの合成繊維が含まれたタオルもしくは、重量が軽いタオルがあります。
タオルは「育てる」もの。いいタオルに育てるケア方法
※本記事はパナソニックから、阿部哲也さんに、「洗濯機・衣類乾燥機」を提供した上、インタビューを依頼し、コメントの内容を編集して掲載しております。
ショップで見たときはすごく良かったのに、洗濯したらすぐにヘタった、もしくは固くなった、色がくすんだ…といったトラブルを耳にすることがあります。せっかく気に入って選んだタオルですから、長く、気持ちよく使いたいですよね。ご家庭の洗濯機で、自分好みのタオルに仕立てるための方法は大きく3つ。僕はこれを「タオルを育てる」と呼んでいます。
1.洗濯はたっぷりの水で。
ご家庭の洗濯機でタオルを洗う際、極端に水が少ないと繊維同士がこすれやすくなり、パイルがつぶれてしまうことがあります。たっぷりの水量で、優しく洗ってあげましょう。
2.脱水後に、タオルをもってパタパタはたく。
バスタオルなら2つにたたんでから、端をもってバサ!バサ!と勢いよくはたきます。タオルをグルグル回しながら、四方向からそれぞれ5回ほど計20回程度はたくと、洗濯で寝たパイルが立ってきます。タオルのシワを伸ばすためにと、干すときにタオルをパンパンと上から叩いて、パイルをつぶさないこと。
3.乾かし過ぎない。
タオルには、繊維自体がもっている水分が含まれています。これを過乾燥で水分を奪ってしまうとタオルがゴワゴワに。天日干しの場合は干しっぱなしにせず、ほんの少し水分が残る段階で取り込むのがコツです。
よりいいタオルに育てるためのコツはこれ!
【洗剤・柔軟剤について】
柔軟剤の使い過ぎもNG。繊維を柔らかくする成分が洗濯の度にタオルに残留して、水を吸う力が弱まっていきます。
【洗う頻度】
毎日でも、2日に一回でもOK。基本的に、洗ったあとの清潔な身体に使うものなので、汚れにくいからです。ただし、水気を拭いた後は広げて乾かしておくのがポイント。使用後のタオルを濡れたまま丸めると、繊維の奥に雑菌が繁殖し、ニオイのもとになります。
【お風呂の残り湯は使わない】
エコとしてはいいのですが、タオルを洗うということに関してはあまりおすすめしません。なぜなら、湯の中に残っている皮脂や入浴剤、バスオイルなどが洗剤と反応して、タオルの風合いを損ねたり、変色の原因になる恐れがあるからです。
【収納】
洗濯、乾燥が終わったタオルはふんわりと折りたたんで収納しましょう。その際に、圧をかけてパイルをつぶさないことが大切。それと買ってきたばかりのタオルは、早めにビニールや段ボールから出してください。ビニール袋や段ボール内の特定の物質が空気中の成分と反応して起こる変色が防げます。
いかがですか?タオルを育てるのは一朝一夕ではできませんが、日を追うごとに馴染んでいくタオルには、きっと愛着を感じるようになると思います。
タオルって、1日の初めと終わりに必ず使うもの。いいタオルを使うことで、朝は「よし!今日も1日頑張ろう!」と気分が上がるし、疲れて帰ってきた夜には、優しく「お疲れさま」と迎えてもらっているような心地になれます。ぜひ、いいタオルと過ごす豊かな時間を味わっていただきたいです。
IKEUCHI ORGANIC(株)監修のタオル専用コースを搭載!
2021年11月に新発売されたNA-LX129Aに搭載されている「タオル専用コース」は、水量を増やし、ゆりかごのように優しく揺らし洗い。洗濯から乾燥まで一貫したコースで、タオルの命であるパイルをつぶさず、ふんわりした風合いに仕上げてくれます。
※ 「タオル専用コース」は、ななめドラム洗濯乾燥機 NA-LX129A、127A、LX125A、VG2600に搭載されています。
インタビュー時には、開発担当の山田恵美さんとの開発秘話も聞くことができました。
山田「阿部さんとの出会いは、IKEUCHI ORGANIC(株)さんのイベント会場でしたね」
阿部「もう3年経ったのか、早いなぁ。当時、洗濯によるダメージをお客さまから指摘されて、たまたま会場にいらしていたパナソニックさんに相談したのが始まりでした」
山田「開発中、千通りもの洗濯方法を試し、阿部さんには多い時は1日100枚以上ものタオルを触っていただきましたよね」
阿部「はい、おかげで手指センサ―の感度も高まりました(笑)」
山田「一番苦労したのは、阿部さんがタオルを触ったときの表現を、設計のための数値に置き換えることでした。人の感性を数値化するのって難しいですね」
阿部「“塩むすび”とか“育てる”とか…。普通は使わないですよね(笑)。でも満足の行く仕上がりになったので、ぜひ天日干しが一番!と思われてる方にこそ使っていただきたい製品です」
山田「私もすっかり阿部さんのタオル愛が移ってしまって(笑)。いま家で、タオル育ての真っ最中なんですよ」
この記事で紹介した商品
2022年3月17日 家事・くらし
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