Interview 清水宏明 | LAMDASH DNA

INTERVIEW 研究開発 清水宏明 INTERVIEW 研究開発 清水宏明

じっくり考え抜く。まずそこからラムダッシュは鍛えられてゆく。

研究開発 清水宏明

完成は次なる進化への第一歩

入社してすぐ、実現して間もないリニアモーターの開発へ。その後に刃の開発に転じ、4枚刃そして5枚刃の立ち上げに携わってきた。清水はラムダッシュ独自のコア技術、そのすべてがわかる開発者である。

外刃の精緻な構造が生み出すラムダッシュのスピーディーな剃り味は、進化するたびに市場の高い評価を得てきた。清水の一番の喜びはそこにある。5枚刃になって増さざるを得なかったヘッドのボリュームを、いかに小さくするか。この点にもこだわり、苦心を重ねた。ラムダッシュの完成度にはもちろん自信を持っているが、使う人のちょっとした辛口の感想が気になるという。「これからの進化のヒントもきっとそこにあると思います」。

清水宏明さん

いかなる剃り方でも100%の力を発揮する。それが本物の証

しかし、どんなに完成度を上げても、清水は開発の手を緩めることはない。いかなる剃り方をされても刃の力を100%発揮できるよう、ヘッドの動きを一から見直した。そこで生まれたのが「3Dアクティブサスペンション」。従来の前後・左右の動きに、上下の動きを新たに加えることでヘッドの可動域がアップ。アゴ下のラインや頬の凹凸にしっかりと密着させることができ、滑らかでやさしい剃り心地を実現した。 「お客様の剃り方によって性能が左右されるようでは、それは本物の性能とは呼べません」。清水の揺らがない職人魂が、またひとつラムダッシュを進化させた。

3Dアクティブサスペンションのイメージ

二律背反の難題を突破した新開発の「スムースローラー」

さらに清水は、ローラー部にも目を向けた。ラムダッシュは刃の枚数を増やすことで、常に剃り味と密着性を追求してきたが、刃の総面積が大きくなるほど、シェーバーは肌面で滑りにくくなってしまう。開発の仕事には、常にこうしたトレードオフ(一方を追求すれば、他方を犠牲にせざるを得ない状態・関係のこと)が付きものだ。清水が新たに開発した「スムースローラー」は、そんな相反する課題を同時に解決する新機能である。チタンコーティングされた2つのローラーで、肌への摩擦を約2/3に低減。ドライ剃りでもよく滑り、よりスムーズな剃り心地が得られるようになった。

ラムダッシュの刃のイメージ

小さな可能性でも、考えることをあきらめない

開発のキャリアの中で、これまでさまざまな課題をクリアしてきた。「それは不可能です」と答えるとしかられた。「今はここまでならできます」そう答えろと。
小さくてもいい、明日につながる可能性をとことん大切にすることでいつか道は通じ、やがて広がる。

これからの開発者たちもさまざまな課題を突きつけられることだろう。素早く答えを出すことも求められるだろう。
それは仕方がない。しかし、目先の課題に対処するばかりでは本当にいいものは生み出せない。
時には立ち止まり、いろんな角度からじっくりと考える時間を持ってほしい。
忙しい毎日の中に、いかにしてそういう時間をつくるか。それがとても大切だと清水は思うのだ。

作業する清水さん

鍛え上げた一台を、最高の品質で

開発から製造までを国内で一貫して行うことで、高い技術と品質を維持し磨き続ける彦根工場。例えば開発は製造に高い精度を要求し、製造は開発にデザインの再考を要求する。お互いの意思がダイレクトに疎通することは大きな利点ではあるが、「主張がぶつかりあうこともよくあります」と清水は打ち明ける。それを乗り越え皆が首をタテに振るまで理想とするその一台は鍛えられ、やがて彦根品質として誕生するのだ。
自分の思いをカタチにするために、開発者は時として仲間とも対峙(たいじ)し渡り合わねばならない。
その時、自分を励まし支えてくれるものは、きっと時間をかけて考えることによって得られた確信。

価値のあるものを世に生み出したいという強い意思しかないのだろう。

写真:機器と部品