美容師としての視点で、どんな方にも満足度の高いヘアケア機器を作りたい。

若林美津恵 若林美津恵

家庭用の美容機器とは、美の専門家向けではなく一般の生活者が使うもの。
特にヘアケア機器は使う人が多く、髪質によってニーズもさまざま。
ヘアケアユーザーに最も近い立場で開発途中のサンプルをモニターテストし、商品化に向け改善点を見出すという専門的な仕事が、パナソニックビューティにはあります。

元美容師という異色のキャリアをもつ若林美津恵が、興味深い仕事の内容を語ります。

美容師のキャリアを活かし、商品を作る側へ

学校を卒業後、美容師として働いていたのですが、3人目の子供が誕生したときついに仕事と育児の両立が難しくなり、子供といる時間を増やしたかったというのもあって家庭に入りました。美容師としては13年間働きましたね。

写真:話をしている若林美津恵さんの横顔

その後、子供の手が離れたときまた仕事がしたくなって、職業安定所を訪ねたんです。そこで、松下電工(注:現パナソニック)が美容師を募集しているのでどうか、と提案を受けました。ヘアサロンに戻るつもりで職探しをしていたので驚きましたが、仕事の内容がヘアケア関係の商品開発だと聞き、髪にまつわる仕事ができて自分の技術も活かせる。さらに新しいもの作りに関わることができる! と、迷うことなく決めました。とにかくすぐ働きたかったというのもあります(笑)。

それが、28年前のこと。最初の9年は商品企画に携わり、今は技術開発という仕事を担当しています。

使う人の技術やニーズを知る、モニターテストの大切さ

ひとつのヘアケア機器が完成するまで、そこにはたくさんの人が関わっています。電気設計の技術者、マーケティング担当者、デザイナーとさまざまな専門分野の仲間が集まって、議論しながら作っていきます。

私の担当は、商品開発のそれぞれの過程でモニターテストを実施し、プロ視点で分析をして改善点を提案すること。また、商品の使い方を開発したり、完成間近の段階で実使用評価を行いエビデンスデータを取得したりもします。

写真:モニターテストをしている若林美津恵さん

モニターテストは、ヘアケア機器の開発過程において非常に重要です。商品を手にしたときの使い方は、人によってさまざま。たとえばドライヤーなら、ずっと上から一定方向にあて続けてゆっくり乾かす方がいれば、頭をがっと下げてうなじから豪快に乾かそうとする方も。くるくるドライヤーやヘアアイロンなども、ある程度なじみがあるアイテムだけに、独自の使い方をする方が多いです。

また、個人がもつスキルも、仕上がりに求めるレベルも人それぞれ異なります。スキルがある方だと、多機能や親切設計よりもシンプルな機能と突出した仕上がりの良さを求める傾向があります。逆に初心者の方だと、ある程度技術を補えるような親切設計が必要です。

そういった細かな違いに気づいて分析・検証し、商品の使い勝手や満足度の向上に反映させることが、美容師である私に求められることだと思っています。

たくさんの苦しさが、やがて楽しい思い出に変わる仕事

使い方やスキル以上に千差万別であるのが、髪の状態です。例えば髪が太い人はボリュームが出しやすいですが、反面広がりやすく、アレンジのしにくさも。加齢でクセが出てくるとさらに課題も増えます。髪が細いと、ふんわりして動きが出しやすくアレンジもしやすいのですが、ボリュームが出にくく何もしないと貧相に見えがち。さらに、長さも、ヘアスタイルも、パーマ施術の有無も……。そのすべての髪である程度の満足度が得られるような商品に落とし込むべく、考察していきます。

写真:モニターにシャンプーをしている若林美津恵さん

幅広い方にご満足いただくためには商品の機能だけでなく使い方のメソッド開発も重要で、プロ視点のちょっとした使い方を取り入れるだけで、仕上がりがかなり向上します。最近は取扱説明書だけでなくYouTubeでも使い方をご紹介しているので、ぜひご覧いただきたいです。

商品ができるまでの過程には、苦しいことがいっぱい。でも、完成するとそれが楽しかった思い出に変わります。難しい商品ほど関わる人数も増え、関門が多く、長いと3年ぐらいかかったりもします。そしてひとつの商品が完成する頃には、次やその次の商品の難関に立ち向かっている。この繰り返しの毎日が、私にはとても魅力的で楽しいです。

プロフィール

若林美津恵(わかばやしみつえ)

1959年生まれ。子供のころから髪に興味があり、お人形の髪をカットしたりスタリングしたりしていた。高校生で美容師になりたいという思いが芽生える。美容師時代は休憩時間がほとんどない超多忙な店舗に勤務し、技術とセンスを磨く。1994年に松下電工(現パナソニック)へ入社。

写真:若林美津恵さん
  • インタビュー内容は2022年8月現在のものです
  • 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です