自らの顔で試して、ヒゲへ効果のあるIPLを開発する実践派研究者。

功刀公太 功刀公太

自らの体験から「こんなものが作りたい」と発案し、実行に移す。簡単そうに思えて、日常生活であらゆるものやことにアンテナを貼り、疑問を持ち続けないとできないことです。
多分起きている間じゅう、美容機器や生活家電の技術開発のことを考え続けている人、功刀公太。その頭の中を、少しだけのぞいてみました。

きょうだい3人分の洗濯が面倒くさくて

パナソニックに入社したきっかけは、大学時代にきょうだい3人で上京して、アパート暮らしをしていたことです。分担しながら3人分の家事をするのですが、私は洗濯が苦手でした。仕分けて洗濯機に入れる、終わったら干す、乾いたらたたんでアイロンをかけて…という長い工程が面倒に思え、洗濯は妹や弟に任せて買い物や調理を積極的に担当していました。

大学では振動工学を学んでいたこともあり、就職活動が近づくにつれ、この勉強を活かして洗濯機の開発がしたいと考えました。家事は女性だけのものでなく、働く男性にとっても大きな負担です。働いているとさまざまな苦労や悩みが生じるので、誰にも邪魔されない家の中では苦労も面倒も少ない方がいい。そんな思いを抱えて入社しました。

最初は希望通り、洗濯機の先行開発の部署に配属されました。4年間従事し、希望に近しい仕事ができたと思います。

自らの顔でIPLのヒゲへの効果を実感

2018年にビューティ関連の事業部へ異動。ヘアスタイラーの担当を経て、2019年より、IPLという光を使ったムダ毛ケア技術の開発を担当しています。

写真:脱毛器を顔に当てている功刀公太さん

私はヒゲや体毛が濃いのですが、IPLを初めて自分の体で試してみたとき、生えていた毛があっという間に縮れ(注:本来毛は短く剃ってから行います)、その高い効果を肌感覚で理解できました。また、本来は体用にとどめるべき強い出力でIPLを顔にあてると、痛いけれど、濃いヒゲには高い効果を実感できました。さらに、その痛みも保冷剤を一瞬でもあてて照射することで少なくなることが、実験によってわかりました。

この体験をもとに、冷却装置をつけたガラスを肌にあて、冷やしながら強い出力のIPLを照射することで、ヒゲなど太い毛にも効果を示す技術を開発しています。自分の顔の半顔のヒゲで試し続けて、高い効果を実感しています。

写真:功刀公太さん 左側は実験していない顔の左半分のヒゲの状態。右側は開発した技術を3か月間試した顔の右半分のヒゲの状態。ヒゲへの高い効果が確認できる。 写真:功刀公太さん 左側は実験していない顔の左半分のヒゲの状態。右側は開発した技術を3か月間試した顔の右半分のヒゲの状態。ヒゲへの高い効果が確認できる。

リスクを体感することも大切

もちろん、過去の膨大なデータとモニター評価等で安全が担保されているものも、あらためて自分の肌でも様々試し、安全性の検証に役立てています。たとえばヒゲに照射する際、使い方を間違えると光が唇にあたってしまう可能性も考えられるので、自分のヒゲで試したりしてリスクの度合いを体感したのもそのひとつです。

写真:脱毛器を左腕に当てている功刀公太さん

こういったリスクをひとつずつ確認することで、効果と安全性の両立を狙うことができます。

IPLはさまざまな美肌効果のポテンシャルを秘めている技術です。自分自身も体感していますが、男性はヒゲが薄くなることでカミソリ負けがしにくくなり、肌への負担を減らせることができます。そして、ヒゲ剃りによる肌への影響が気にならなくなると、初めて美肌への意識が目覚めると思います。そんな男性に向けて、将来的には美肌の技術も提供できればと考えています。

自分の体験を信じ、良くしたい心を忘れずに

なんでも自分自身で試すのは、開発する技術に責任をもちたいという思いからです。体質の異なるさまざまな人が試した意見を聞くことは大切ですが、うのみにしてはいけない。聞いた上で、自分でも試します。

写真:脱毛器を操作する功刀公太さん

実はまだ新人だった洗濯機担当時代、開発品のテストを怠って進行しようとしたら先輩に見とがめられ、そこでテストをしたら、案の定開発品がトラブルを起こした、という経験があります。「実際にやってみないとわからない」を強烈に刷り込まれました。

そんな私ですが、本来は面倒くさがりな性格です。面倒なことを合理的に、楽にしたいという思いは学生時代から変わっておらず、ITを使って誰もが楽に働けるような職場のシステムを作りたいといろいろ新しいツールに触れています。自分の体験を信じて、「良くしたい」と思う心を忘れずに。これからもチャレンジを続けます。

プロフィール

功刀公太(くぬぎこうた)

1989年生まれ。大学で振動工学を学び、洗濯機を作りたいという思いを抱えてパナソニックへ入社。洗濯機の先行開発に関わった後、ビューティの技術開発を担当。最初の一台となる試作品の開発から、量産への見通しを立てる部分を担当している。

写真:功刀公太さん
  • インタビュー内容は2023年3月現在のものです
  • 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です