なぜ、その効果が得られるのか?を実証する、毛髪専門研究者

なぜ、その効果が得られるのか?を実証する、毛髪専門研究者 石原 綾 なぜ、その効果が得られるのか?を実証する、毛髪専門研究者 石原 綾

ヘアケア機器の開発においては、仕上がりの美しさはもちろんのこと、髪ダメージの軽減を追求することも重要です。双方の効果を高めるために、パナソニックでは毛髪専門の研究者が機器の開発に参加しています。石原 綾。高浸透ナノイーを始めとするその研究内容について、聞いてみました。

機器は、作れませんが…

パナソニック社員としては異色の経歴のもち主だと思います。機器を作ったことは、過去も現在も含めて、ありません。

前職では育毛剤の基礎研究をしており、パナソニックに入社したのも、毛髪関連の基礎研究職の募集があったから。今は毛髪の専門家として、将来的に商品へつながる可能性のある、ヘアケア関連先行技術の探索をしています。具体的には、毛髪を乾かす、ケアする、スタイリングする技術の研究です。また、それら技術の作用メカニズムを明らかにすることも、私の仕事です。毛髪は直径が数10μm(マイクロメートル)と大変小さい組織であり、研究の進みも遅い分野であるため、まだまだわからないことがたくさんあります。未開拓だからこそ、自分で謎を解明していくような作業におもしろさを感じますね。

石原 綾さん

所長からは〝毛髪の魔術師〟と、非常に光栄なあだ名をつけていただきました。その名前に値する存在でい続けるべく、日々さまざまな研究に取り組んでいます。

高浸透ナノイーを使って髪をまっすぐに

最近では「高浸透ナノイー」をストレートアイロンに搭載する研究を担当しました。ナノイーとは、空気中の水分に高電圧を加えることで生成される、ナノサイズのイオンです。マイナスイオンが水で包まれたごく小さな粒と考えていただくとわかりやすいと思います。高浸透ナノイーとは、髪への浸透性を高めたナノイーのことです。

ナノイーを浸透させた髪と、ただ水で濡らした髪とは、その状態がまったく異なります。髪の構造は複雑で、普通に濡らすだけだと水が届かない場所があります。高浸透ナノイーは、キューティクルのわずかな隙間に浸透して毛髪内部に入っていけるので、内部の水分状態が均一になります。それにより、髪内部の水分不均一で起こるうねりやクセを解消したり、しっとりと潤いのある手触りを持続させることができます。さらに、狙い通りのスタイリング効果やケア効果が得られます。ここについてはしっかり髪内部の研究を行い、エビデンスも取得しています。

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高浸透ナノイーのこういった効果はストレートヘアと相性が良く、長年にわたりストレートアイロンへの搭載を希望していました。細長い形状の機器のどこに搭載したらいちばん効果を実感できるか? など、機器の開発担当者と連携して研究を重ねました。そもそもヘアアイロンは細長いので、ナノイー発生装置を搭載すること自体が難題です。重すぎず使い勝手が良く、デザイン性もすぐれたものを…とこだわり、ようやく完成させることができました。

スタイリングによる髪ダメージを軽減

高浸透ナノイーを搭載したストレートアイロンのメリットは、髪ダメージの軽減です。ナノイーを髪に浸透させながらあてることで無理なくストレートに形作れるようになるので、髪が傷みにくくなります。むしろスタイリング後の方が、しなやかで柔らかくしっとりとした手触りを感じることができます。ヘアアイロンは髪が傷むから…と使う回数を調整していた方にも、毎日ストレスなくお使いいただけると思います。

仕上がりの艶やかな質感も特徴です。パナソニックでは、美容機器の完成までに数多くの官能テストを繰り返しています。お客様に使ってすぐに効果を実感していただけるという確信を得ないと商品化はできないからです。今回の製品では、ヘアオイルをつけなくてもつるんとした仕上がりを実現することにこだわりました。プロのヘア&メイクさんに使っていただいて「仕上がりが全然違う!」「髪がつるつるになって使いやすい」という評価を得られたときはうれしかったです。

石原 綾さん

地球1周分もの髪でテストを繰り返す

高浸透ナノイー搭載ストレートアイロンの実現まで、膨大な回数の実験を繰り返しました。
髪の種類は十人十色なので、より多くのお客様が満足していただけるよう、実験にはさまざまな毛髪を使用します。ブリーチ毛、パーマ毛、ダメージ毛、くせ毛、黒髪、金髪…。使用した髪の長さ合計は地球1周分に及ぶほど。

評価は髪内部の状態と見た目の両面から行います。もちろん安全性の担保も必要です。あらゆる側面で納得のゆくものが完成するまでに、構想から完成まで3年かかりました。

石原 綾さん

今はすでに次の夢が膨らんでいて。ゆくゆくは熱ダメージも気にならない、ほぼダメージゼロのヘアスタイラーを作りたいです。また、さまざまな髪質に対応するヘアケア機器も作りたいなど、先行研究構想も広がっています。最終的には、世界中の人の髪を美しくしたいですね。

プロフィール

石原綾(いしはらあや)

1978年生まれ。「自分が関わった美容商品で人を笑顔にしたい」という思いで、大学卒業後は化粧品会社に入社し、育毛剤の基礎研究を担当することに。そこで毛髪研究の面白さに目覚め、松下電工(現パナソニック)の毛髪研究開発職に転職。自身の毛髪がくせ毛であることから、くせ毛さんが笑顔になれるような技術を世に出したいという野望をもつ。

写真:石原綾さん
  • インタビュー内容は2024年4月現在のものです
  • 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です