速く美しく乾く、理想のドライヤー作りをサイエンスで叶える。

速く美しく乾く、理想のドライヤー作りをサイエンスで叶える。 齋藤健志 速く美しく乾く、理想のドライヤー作りをサイエンスで叶える。 齋藤健志

現代人は忙しい。髪を乾かす時間、スタイリングする時間は1分でも短い方がいい。そんな現実と向き合い、へアケア機器の可能性に挑戦し続ける研究者、齋藤健志。この秋、彼の研究が実を結び、理想を叶えるドライヤーが誕生します。その中身について詳しく取材しました。

美容のサイエンスに興味を抱いて

大学では電子工学(電子運動による現象を研究し、その現象を、情報伝達を使った技術や装置に活用することを目的とした学問)を専攻しており、肉眼では見えないナノサイズ(1mmの100万分の1)の材料の基礎研究をしていました。目には見えないことを想像しながら組み立てていく作業が好きで、美容にはいたって無頓着でした。しかし、ある日ふと見た美容雑誌で美容のサイエンスにまつわる話が詳しく書いてあり、こういう理屈を想像するもの面白いかも…と興味を抱いて「電子工学+美容=美容機器の開発」を志しました。入社14年目になります。美容とサイエンスについて、今は一般のユーザーの方々も深い興味を抱く時代になっており、こういった美容機器の中身についてもお伝えしていけることをうれしく思います。

齋藤健志さん

モーターと高浸透ナノイーデバイス、ふたつの進化

ドライヤーやヘアアイロンにまつわる新規技術の開発、美容向けナノイーデバイスの開発などを手掛けています。

パナソニックの数多くの家電商品に搭載されている技術「ナノイー」とは、大気中の水分を電極に結露させて集め、高電圧を加えることで発生させるパナソニック独自のイオンのことです。美容ではドライヤーやストレートアイロンなどに搭載されています。今回は、高浸透ナノイーを搭載したドライヤーの進化についてお話ししたいと思います。

多くの人がドライヤーに求めることは、早く乾くことだと思います。私たちパナソニックでは、ドライヤーにナノイー技術を搭載し、しっとりとつややかでまとまりのある仕上がりをお客様に提供しています。この特長をさらに追求しながら、速乾性も上げて、使い勝手も仕上がりも満足のいくドライヤーを叶えたい。パナソニックは、速乾性と髪の美しい仕上がりとのバランスに20年以上こだわってきました。担当者が一丸となって研鑽を重ね、また新たなナノケアドライヤーを研究開発しています。私はこのアップデートについて、高浸透ナノイーと風の部分を担当しました。

速乾性を上げるには、パワフルなモーターを搭載し、風速を上げることが必要です。しかし、ここにひとつ大きな問題があります。高浸透ナノイーは、先にお伝えしたように、大気中の水分を集めて作ります。つまり、パワフルなモーターによってドライヤー内の風の流れが乱れると、高浸透ナノイーがうまく発生しなくなってしまうのです。

そのような難しさがある中で、今回は、水分発生量が進化した高浸透ナノイーデバイスを開発し、新たに搭載しました。さらにチームメンバーがさまざまな工夫を重ね、高浸透ナノイー発生エリアにおいて良好な環境を保ち、たくさんの高浸透ナノイーが安定的に発生して放出される仕組みを完成させました。

パーソナルな髪悩みへの対応を実現

モーターを替えて風速を上げることについては、もうひとつの問題がありました。風速が上がると、風で髪が暴れてしまうのです。すると、髪が絡んだり、つやとまとまりが失われたりして、思い通りの美しい仕上がりが得られにくくなります。

そこで我々が検討したのは、強い風を広げながら放出する仕組みです。例えば、同じお湯の量でも“打たせ湯”は1か所に強くお湯があたりますが、シャワーだとお湯が拡散されてさほど刺激を感じません。これと同じように、風を髪に広範囲にあてることで、髪が暴れにくく、まとまりの良い仕上がりを叶えました。

齋藤健志さん

さらに、お客様自身の髪質やなりたい髪の仕上がりに合わせたパーソナルケアを目指し、ひとつのドライヤーで複数の仕上がりを提供できるにはどうすれば良いかを研究して、構築しました。発生させる高浸透ナノイーと、ミネラルやマイナスイオンのすべてを調整し、髪悩みに応える4つの仕上がりを、乾かしながら作り上げます。しっとりまとまる、クセを感じさせない、ふんわりボリュームが出る、サラサラで手ぐしが通る、という仕上がりの違いです。ナノケアドライヤー=しっとり、だけではなく、より多くのお客様に満足いただけるための商品をお届けしたいと考えています。

最終の着地点を見据えて努力を重ねる

新しい機能や商品を開発するときには、お客さまの求める効果を常に見据えることを忘れないようにしています。速乾やうるおい、スタイリング力、など、たくさんの要件をひとつの機器に盛り込むのはとても難しく、夢中になって研究をしているとつい着地点を見失ってしまいがちですが、何かひとつだけが優先されないようにすることが大切です。ものごとには長所と短所が必ずありますので、そのバランスをとりながら、最善のレシピを作り上げて、狙い通りの着地点に辿り着くようにしています。

齋藤健志さん

試作品を評価するモニターさんに使っていただいて、わぁ、という驚きや満足感の手応えを得られると、目的地にたどり着けたんだ…とホッとします。何より、長い間の苦労が報われたという達成感を覚える、うれしい瞬間ですね。

プロフィール

齋藤健志(さいとうつよし)

1986年生まれ。美容という分野の奥に広がるサイエンスに興味を覚えてパナソニックに入社し、ビューティ商品部でヘアケアの技術開発を担当する。「お客様が楽しい気持ちになる技術を創れること」に魅力を感じており、そのために技術を生み出す自分自身がまず楽しめること、を大切にしている。

写真:齋藤健志さん
  • インタビュー内容は2024年5月現在のものです
  • 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です