ミドルエイジにコミットする美容機器作りへの情熱

ミドルエイジにコミットする美容機器作りへの情熱 干場太一・森田祐輔 ミドルエイジにコミットする美容機器作りへの情熱 干場太一・森田祐輔

1台の美容機器の開発には、たくさんの人が関わっています。この連載では研究者や技術者にインタビューを行ってきましたが、今回は「ミドルエイジ向けの美容機器」をテーマに、技術者の干場太一と商品企画を担当する森田祐輔、ふたりにインタビュー。それぞれの熱い思いから、美容機器の未来が見えてきました。

プロフィール

【写真左】干場太一(ほしばたいち)

1995年生まれ。大学時代には、生体内に埋め込んで使用される金属インプラント材料の研究をしており、生活のQOLを上げる商品の開発や研究に携わりたいと考え、2019年にパナソニック入社。入社当初は衣類用アイロンの商品設計に2年半携わり、3年前からフェイス・ボディケアの技術開発を担当している。

【写真右】森田祐輔(もりたゆうすけ)

1989年生まれ。調査会社や化粧品メーカーで商品企画とマーケティングを経験した結果、人の生活を豊かにする商品は、自己実現の支援につながると考えるようになる。その最たるものである美容関係のモノ・コト作りを生業にしたいと心を決め、2022年にパナソニックに入社。美顔器の商品企画に従事している。

写真:干場太一さん・森田祐輔さん

ミドルエイジの肌悩みに応えるRFとEMS

森田:
40代から50代のミドルエイジの肌は、ハリのなさやフェイスラインの肌の変化など、美容に関する悩みが増える年頃です。干場と私は、その悩みに寄り添う効果的な美容機器を開発すべく、一緒に研究を進めています。私は、市場調査やお客さまの声から「こんな美顔器があったらいいのに」というところを考える役割で、干場がそれを実現する役割です。といっても私も技術の部分を理解できていないと話にならないので、干場と日々会話を重ねて勉強しています。

干場太一さん

干場:
ミドルエイジの肌悩みに寄り添うその有効な手段のひとつにRFがあります。「ラジオ波」とも呼ばれるRFは、物体に電気を流し、流れた領域に“ジュール熱”という熱エネルギーを発生させ、物体そのものを深部から温めるものです。表面を温めるヒーターとは異なり、保温効果が持続しやすいのが特徴です。もともとは医療機器で使用されていた技術ですが、適切な条件で肌に使うと深部まで加温され、コラーゲン産生を促し肌にハリを与えるなど、さまざまな美容効果が期待できると注目されています。

RFだけでなく、筋肉運動を促すEMSにも、ミドルエイジの悩みに応える力があります。EMSとは筋肉に電気的な刺激を与え、筋肉の収縮を促すものです。体と同じように顔にも、皮膚の下には多くの筋肉が存在します。それらは表情筋と呼ばれ、複雑に絡み合っています。表情筋に適したEMSでアプローチすることで、筋肉の収縮による血流の増加やそれに伴う水分量の増加、ハリの改善なども期待できます。

肌深部を温めるRFは、ミドルエイジにぜひ取り入れてほしい手段です。一方でEMSはよりスピーディに効果を実感しやすいので、RFとEMSを組み合わせるのは効果的です。私たちは肌への安全性を担保しながら、RFとEMS双方の効果を高めることを研究しています。

クリニックレベルの効果を目指すRF

森田:
RFによる温感は、肌表面で感じる温度が高ければよいわけではありません。肌深部が温まっている時間が長くなることが大切です。これにより体感がよくなり、保温などの美容効果もより高くなります。1ストロークの時間を長くして肌深部まで温めることも考えましたが、それでは使い勝手が悪くなってしまいます。そこで、1ストロークの時間は変えないまま、より肌深部で温まりを感じられるようにという方針で研究テーマ化しました。

干場:
それを受けて、温度を上げるのではなく「より早く温めること」に目を向けました。肌深部への温感を目指す中で、やけどは絶対にあってはならないためです。そして、皮膚に流す電気の周波数を上げると、より効率良く温まるという特性に注目しました。これまでも弊社ではRFの周波数の研究を続けてきましたが、美容クリニックに学び、より高周波のRFの検討を進めています。これにより電気を流れやすくし、安全にスピーディに深部を加温できると考えています。ちなみに美容クリニックの現場ではもっと高い周波数のRFを使用している場合もあり、美容向けRFのさらなる進化の可能性を追求すべく、研究を続けています。

複雑な表情筋に効かせるEMS

森田:
EMSの方もふたりでアップデートを図っており、苦労しながら検討しています。EMSのどのような刺激が効果実感を高めているのか、逆に、どのような刺激は好ましくないのかなど、さまざまな電気刺激の組み合せを試しました。

干場:
筋肉を収縮させる作用は、体感として鍛えている実感が高く、逆に表面的なピリピリとした刺激は不快感を与えます。1秒の中で細かく筋肉の収縮と弛緩を繰り返す動きの中で、収縮の時間を増やすことで、表情筋へより効率的にアプローチできることがわかりました。

干場太一さん、森田祐輔さんの手元

美容機器ならではのエイジングケア可能性

森田:
RFの効果は肌深部の温め、EMSは筋肉刺激ですが、これを肌へのベネフィットに落とし込むと、さまざまなことを叶えることができるといえます。まず、コラーゲンやエラスチンの産生を促すことで肌にハリが出やすくなります。さらに、筋肉がほぐされたり鍛えられたりすることで肌状態が良くなり、うるおい、明るさ、ツヤ、化粧ノリのよさなどもアップします。電気と熱を使った美顔器による、スキンケアだけでは叶わないさまざまなエイジングケア効果を、ぜひミドルエイジの方にお届けしたい思いで研究開発に取り組んでいます。

左:干場太一さんと右:森田祐輔さん

干場:
RFとEMSについては、まだまだやれることが多いと感じています。どちらも電気刺激を応用した技術という点が共通しており、わずかな調整で効果が変わったり、ふたつの組み合わせによる改善も無限大です。これからも改良を重ね、ミドルエイジの肌悩みにより応えるものを提案できたらいいなと考えています。

  • インタビュー内容は2024年7月現在のものです
  • 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です