寝ぐせ悩みからの解放を目指し原因を“見える化”

寝ぐせ悩みからの解放を目指し原因を見える化。袖本菜々美 寝ぐせ悩みからの解放を目指し原因を見える化。袖本菜々美

個人の感覚が重要視されやすい美容という分野では、判断や評価がときに感覚的になることも。学生時代に情報工学を学び、かつ、美容という誰にとっても身近な分野に魅力を感じた袖本菜々美は、入社後、美容をロジカルに分析することに取り組んでいる。その成果として誕生した、寝ぐせ悩みからの解放を目指す機器について、開発の道のりと熱い思いを取材した。

寝ぐせの主な要因は、髪の乾かし残し

大学で情報工学を学び、大学院を経て2023年に入社。現在はヘアケア機器の技術開発に従事する袖本菜々美。ナノケアドライヤーの新たな(2025年7月時点)主力商品・EH-NA0Kに付属されている「ナイトキャップノズル」の開発に携わった。

「お客様の声として頻繁に聞かれるのが、寝ぐせの悩みです。寝ぐせの主な要因を防ぐには、就寝前の髪の乾かし残しを防ぐことが大切です。髪は濡れた状態において、内部の水素結合が切れて形が変わりやすい状態になります。その状態で就寝し、頭の重みで髪が固定された状態で乾くと、寝ぐせがついてしまうのです」

ヘアコームで髪を梳かしている様子

なかには、きちんとドライヤーで乾かしているのに寝ぐせがついてしまうというケースも。

「それは乾かし残しがあった可能性が高いです。乾かしている間は髪が温かいので気づきにくいのですが、ドライヤーを使い終えてしばらく経って髪が冷えたときに、部分的な湿気に気づく方もいるのではないでしょうか。でも、再びドライヤーをあてるのは面倒です。そこで、乾かし残しを機器側の工夫によって防ぐことはできないかと考え、複数のモニターの方にご協力いただき、ドライヤーを使うときの動きを分析しました。その結果、乾かし残しがある方は風のあて方にムラがあり、絡まりも発生しやすいことがわかりました」

より均一に乾くよう、風の流れをデザイン

そこからさらに、風のムラや絡まりが発生する原因の特定を試みる。

「新たな技術を取り入れて風のムラや絡まりを可視化し、定量分析を行いました。これには大学で学んだ情報工学の知識が役立ちました。画像解析システムを構築して濡れた部分を可視化し、髪の乾燥状態を一目で理解できるようにしたのです。絡まりについては、トラッキング(注:追跡)技術を用いて毛先の動きを把握し、髪の絡まり方を解析しました。その結果、絡まりの原因は風の分布が関係していることがわかりました」

パソコンを見る袖本菜々美さん

これらの分析結果から発案したのが、ドライヤーの先端に装着するノズルによって、髪の流れをデザインすること。

「風を分割したり空間を作ったり、風速を調整したりといった機能をもたせ、髪をほぐしながらより均一に乾かし、かつドライヤーから発生する『高浸透ナノイー』を髪全体へより均一に届けられるように工夫しました。乾かす時に髪の乱れが発生しにくいことで、絡まりにくく、髪の乾き具合もより均一になります。この『絡まらない均一乾燥を目指したノズル機構』については、特許出願中です」

美容という分野をもっとロジカルに

感覚的になりがちな美容という分野に、できるだけ確かな解決策と情報を提供していきたいと語る袖本。

「技術を活用することで、見えない問題を可視化し、具体的な課題を明らかにし、効果的な商品開発へとつなげていくことにやりがいを感じます。それが今回の寝ぐせのような、お客様の日常的な悩みの解決へとつながることが幸せです。また、商品のベネフィットをできるだけわかりやすく、お客様へお伝えしていきたいとも考えています。画像やグラフなどで可視化し、商品の魅力がパッと伝わるような情報作りに力を入れていきたいですね」

袖本菜々美さん

数年という長い年月をかけ、苦労を重ねて誕生する商品だからこそ、その魅力をわかりやすく伝え、たくさんの方に手に取ってほしい。ときに不器用なほど真摯なパナソニックビューティの商品開発チームに、新しい風が吹き始めている。

プロフィール

袖本菜々美(そでもとななみ)

1998年、福岡県生まれ。大学院で化粧品などの経皮ドラッグデリバリーシステムを研究したことをきっかけに、日常にある美容というフィールドの重要性を強く感じ、美容機器の製品開発を志す。2023年に入社し、現在は主にナノケアドライヤーの技術開発を担当。

写真:袖本菜々美さん
  • インタビュー内容は2025年6月現在のものです
  • 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です