ヘアアイロンで美しい髪色へ。
潜在ニーズを捉え、具現化する情熱
ヘアアイロンは、スタイリング、つまり髪を美しく見せるという動機で使うもの。それならば単にスタイリングするにとどまらない“美髪機能”があってもいいのでは?という着眼点のもと、髪色にフォーカスした製品を企画した豊田真央と、具現化を叶えた技術開発担当の齋藤健志。まだ世にないものを生み出す情熱と、その道のりについて取材しました。
プロフィール
齋藤健志(さいとうつよし)
1986年生まれ。大学では電子工学を専攻し、ナノカーボン材料の基礎研究をしていた。あるとき手に取った美容雑誌で、美容には科学的な考え方や技術的な裏づけがあることを知り、電子工学と美容を掛け合わせた美容機器の開発に興味をもつように。2010年にパナソニックへ入社し、ヘアスタイリングに関する技術開発に従事。
豊田真央(とよたまお)
1997年生まれ。幼少時から絵を描くことや創作が好きで、将来は自分のアイデアを形にする仕事に就きたいと考えていた。大学では芸術工学を専攻し、人々の生活をより豊かにするモノ・コトのデザイン手法を幅広く学ぶ中で、プロダクトの企画職を志すように。2020年にパナソニックへ入社し、ヘアケアデバイスの商品企画に従事。
ヘアアイロンで髪色にアプローチする潜在ニーズ
齋藤:
一昔前まで、「髪をスタイリングする」という行為に対して、髪に負担がかかるというネガティブな印象もありました。最近では、スタイリングをしながら髪への負担に配慮したい、髪をいたわりながら整えたいというニーズも高まっており、そうした価値を意識した商品が増えていると思います。
豊田:
そうですね。特にヘアアイロンの分野では、髪のケアに配慮した商品も増えています。パナソニックにもナノイー技術を搭載し、うるおいケアが同時にできるヘアアイロンがありますが、友人や知人との会話の中で「え、パナソニックにはヘアアイロンもあるの?知らなかった!」と驚かれたことが何度もあります。認知度の低さを悔しく思った反面、同時にチャンスとも捉えました。
齋藤:
それが、新しいストレートアイロンの着想へとつながったのですね。
豊田:
きっかけのひとつになりました。Webの定量調査やインタビュー調査、店頭やSNSなどで幅広く情報収集を行う中で、スタイリングをしながら、うるおいケアができるだけでなく髪色をきれいに見せるヘアアイロンに、潜在的ニーズがあるのではと閃きました。私自身も髪をカラーリングしていますが、ヘアアイロンを使っていると熱によって髪表面の髪色が褪せる感覚があります。この企画案をもとに20〜30代の女性へ調査を行ったところ、大きな反響がありました。
髪色をきれいに見せるには、髪表面の光の乱反射を減らすこと
齋藤:
最初に豊田さんから商品アイデアを聞いたときは「髪色をきれいに見せるヘアアイロン?」と驚きました。でも、具体的にはこんな仕上がりにしたい、という資料をたくさん共有してもらって、少しずつ理解が深まりました。髪表面のなめらかなツヤを追求していくと、光の乱反射が減ってきれいに反射し、くすみ感のない、ツヤと透明感のあるきれいな髪色を表現できるのだ、と。
豊田:
教えていただいたセーターの事例がわかりやすかったです。
齋藤:
新品のセーターは、毛並みがなめらかに揃っていて、色も鮮やかに見えるのに対し、何度か着て毛羽立ったり毛玉ができたりすると、色もくすんで見えることがありますよね。少しの毛羽立ちや毛並みの乱れでも、光を乱反射し、それによりくすみ感が出てしまうのです。髪も同じで、表面のなめらかさを追求していくと、ヘアカラーの色味も美しく表現されます。
豊田:
実際に取り組んでいただいた技術について教えてください。
齋藤:
2点あります。まずは、熱の均一性への取り組みです。ヘアアイロンは一般的に温度を設定して使用しますが、実際の使用時には髪に熱が奪われていくたため、プレートの温度が常に同じ状態とは限りません。髪に熱が移っていく過程で温度が下がり、それをセンサーが感知して温度を上げる、ということが繰り返されています。そこで、セラミックヒーターを採用することで温度制御の正確性を高め、安定した温度を保てるようにしています。
豊田:
ヘアアイロンの場合、上から下までアイロンをあてる中で、髪に与える温度のムラが発生し、髪の伸びにもムラができてしまう。その不均一さをできる限りなくして髪に均一な温度を届けることで、髪色がきれいに見えるなめらかなツヤ髪が叶うということですね。
齋藤:
その通りです。さらにナノイー技術によって髪に水分を与えることで、うるおいによって髪色が鮮やかに映える仕上がりとなります。ナノイーとセラミックヒーターによって髪に美しい面のツヤが生まれ、それによりきれいな髪色を引き出せることは、評価試験でも良好な結果を得られています。
ストレートだけでなく、スタイリングのニーズにも応える
豊田:
さらに、髪にあてるプレートにも工夫があるんですよね。
齋藤:
プレートにクッション性があり、さらに前後左右に動く「3Dスムースプレート」を採用しました。これにより、髪に与えるテンションがより均一になり、なめらかな髪に仕上げる要素として機能しています。
豊田:
全体はストレートで毛先だけくるんとワンカールさせたいとか、少しだけ外巻きにしたい、前髪をサイドに自然に流したい、などのアレンジのニーズにも応えられるよう、丸みのある設計にしていただきました。
齋藤:
豊田さんから日々さまざまなスタイリングのイメージ写真が送られてきて(笑)、なるほどこういうニーズがあるのか、と新しいことの連続でしたが、なんとか実現させることができました。
豊田:
デザインもピンクやベージュなど、若い女性のニーズに合うものに仕上げることができ、大満足の仕上がりです。
齋藤:
自分には気付けないニーズに対して議論を重ね、イメージを言語化や具現化し、技術に落とし込んでいく。今回は、この企画と技術開発との連携が生きた商品化の事例だと思っています。多くの方に使っていただき、反響をいただくのが楽しみです。
- インタビュー内容は2026年7月現在のものです
- 「Panasonic Beauty Laboratory」に掲載の情報は、当社の研究や開発の取組み内容です