ライカレンズ × 写真家 連載企画 Vol.6
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15mm(30mm相当)/マニュアル露出(F1.7、1/125秒)/ ISO 800/ WB:オート
オレンジ色のターバンが見事な洋品店の若旦那。このレンズは人肌を優しく繊細に描き出す。ディテールを残した柔らかで自然なボケ味、落ち着きのある色味は私の求めるライカレンズの色だ
稲垣 徳文
1970年、東京都生まれ。法政大学社会学部卒。旅、自転車、ライカレンズを好む。「撮って、走って、食って、寝る」。旅の4原則に忠実な旅する写真家。フォトエッセイに『旅、ときどきライカ』(エイ文庫)。 日本写真協会会員
【源流/インド ニューデリー】
ニューデリー駅前のメインバザールには世界中から旅行者が訪れる。ブレッソンの写真集『INDIA』に触発されながら歩いた街だ
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あの日撮れなかった光が優しく柔らかに描かれる
横浜から船で上海へ。列車とバスを乗り継ぎヒマラヤを越えてニューデリーにたどり着いたのは学生の頃になる。それは写真家になるべく道を模索する、写真修行の旅だった。旅の途中、カトマンズの書店で見つけたカルティエ・ブレッソンの写真集『INDIA』は僕にとってバイブルのような存在だ。自らをフォトジャーナリストと呼んだブレッソンのレンズワークをその旅で日々実践した。
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15mm(30mm相当)/マニュアル露出(F5.6、1/500秒)/ISO 200/WB:オート
日中のメインバザールにオート三輪やスクーターが駆け抜けていく。高速なAF駆動を生かしてスナップショット。4:3の比率と15mmの組み合わせは数値以上に広さを表現できる
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15mm(30mm相当)/マニュアル露出(F1.7、1/500秒)/ISO 200/WB:オート
サイクルリキシャー(三輪自転車)に木箱を載せたスクールバス。コンパクトなボディとレンズだから躊躇なく子どもに近寄れる。トタンの質感や口元の産毛まで描く解像力に驚く
ニューデリー駅前にメインバザールと呼ばれる商店街がある。日暮れからにぎわいを見せるその街は、異国情緒という言葉にふさわしい光景だ。白熱灯やランタンで闇に浮かぶ夕景が美しく輝いて見える。けれども、いざ撮影となるとニューデリーの夜は暗かった。カラーポジでは光源の色温度がダイレクトに反映されてしまい、高感度では粒子が荒れてシャドウの締まりも悪くなる。当時の撮影環境では見たままのイメージに写すことは困難だった。
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それから四半世紀、インディラガンジー国際空港に降り立つとスパイスの香りがした。排ガスでよどんだ空に、再びインドに来たことを実感する。もう一度インドを撮るべく選んだのはLUMIX GX7 Mark ⅢとLEICA DG SUMMILUX 15mm /F1.7 ASPH.だ。開放F1.7の大口径レンズならば夜のバザールでもISO 800を超える高感度は必要ない。開放絞りからディテールを繊細に描き出すのはライカレンズが得意とするところ。近年では照明にLEDも加わりより複雑になった街の光も、AWBで見たままに写せる。フォトスタイル「スタンダード」とこのライカレンズが出す色を組み合わせると、かつては写真からこぼれ落ちてしまった優しく柔らかな光も表現できた。
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15mm(30mm相当)/マニュアル露出(F1.7、1/30秒)/ISO 800/ WB:オート
オート三輪に自転車。さまざまな人々が行き交うメインバザールの夜。F1.7の開放絞りでも画面周辺部まで驚くほどシャープに描写する
30mm相当の焦点距離は、数値以上に画角が広く感じられる。雄大な景色や街並みを切り取るには最適な「旅の標準レンズ」であり、ポートレートではわずかな距離感のコントロールでイメージの違う絵作りが可能になる。手の小さな私でも包み込むようにホールディングできるこのコンパクトなコンビが、四半世紀越しの思いを叶えてくれた。
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15mm(30mm相当)/マニュアル露出(F1.7、1/250秒)/ISO 200/ WB:オート
インドでは珍しいビーグル犬。超ローポジションでの撮影もチルト式ファインダーにより限界知らず。レンズ前10cmまで寄れる近接性能も心強い