ライカレンズ × 写真家 連載企画 Vol.7
16mm(32mm相当)/絞り優先AE(F8、1/800秒、-0.7EV)/ ISO 800/ WB:曇天
紅葉の進み始めた丘に虹を架けたかったので時雨れるタイミングで撮影した。豊かな質感描写とコクのある色で虹と紅葉の大地が鮮やかに浮かび上がった
高橋真澄
1959年、北海道生まれ。北海道上富良野町在住。大学時代より北海道の山を中心に撮影し始める。丘をはじめとする美瑛・富良野の自然風景を独自の感性で表現し続けている。『風景』、『四季』シリーズ(青菁社)など、著書は70冊以上におよぶ
【北海道/富良野】
盆地気候で気温差がガスや時雨などの現象を生み、それが風景に作用してさまざまな表情を見せる。タフで寒さに強い愛用の長靴を履いて、この地の撮影を続けている
絶えず変化する空と大地の表情その両方が1枚の写真に収まる
登山に夢中になり、大雪山や十勝岳連峰へ通っていた大学生の頃、行き帰りで美瑛・富良野のたおやかな丘の大地に触れ、山々に囲まれた広大な景色に魅せられていった。それから40年ほどたつが、今なお新鮮な風景を見せ、新たな表現の切り口を与えてくれるこの地に感謝したい。
私に写真の師はいないが、美瑛・富良野の自然が写真への取り組み方や自然への洞察力を教えてくれた。
13mm(26mm相当)/絞り優先AE(F8、1/50秒、-1.7EV)/ ISO 400/ WB:曇天
日が落ちるとメラメラと空が焼けてきた。1本の白樺をポイントに空の広さを強調して、すっきりと鮮やかに焼けた空の色を感じられるように意識した
若い頃は目の前の風景しか見ることができず出会い頭の撮影が多かったが、最近は虹やサンピラーの出現を予測できるので、想定の中の偶然を楽しむようになった。風景写真はタイミングが7割。自然が教えてくれたことだ。
私は現在、上富良野町の丘の上で暮らしており、大雪山や十勝岳連峰に囲まれ常に撮影待機状態でいられる幸せな状況だ。自然を追いかけ、予測しながら撮影しているのでカメラはその撮影動線を阻害しないことが重要になる。その点、LUMIX G9PROは機動力に優れ、操作性が良いので素早く景色を捉えられて心強い。今回表現を託したレンズは超広角のLEICA DGVARIO-ELMARIT 8-18mm / F2.8-4.0 ASPH.。撮影意図を明確にしなければ雑然としやすいが、狙いを決めてファインダーをのぞいたとき、肉眼の視野とは明らかに異なる広大な景色に気が引き締まる。すっきりとした解像力がありながらコクのある描写はこの地の風景を描き出すのにぴったりだ。
8mm(16mm相当)/絞り優先AE(F8、1/250秒、-0.3EV)/ ISO 400/ WB:曇天
16mm相当の画角の広さを生かし、左に大雪山、右に十勝岳連峰の稜線を入れ込みながら、その稜線を割って立ち上がるウロコ雲を強調した
美瑛・富良野の広大な大地、空いっぱいに広がる虹までをも余裕を持って収められる。
自分の思いや変化を意識したいなら超広角レンズを使うと良い。強烈なパースペクティブを意図を持って制御すると、相手任せでない個性あふれる写真ができあがる。細部まで見渡せるEVFと超広角の組み合わせは相性が良い。ファインダーの断ち切られた空間の中で隅々まで意識して作画していくと、表現意図が明確になり作品の質が向上する。この超広角レンズが、長年向き合った丘にまた新しい風を吹き込んでくれた。
18mm(36mm相当)/絞り優先AE(F16、1/250秒、-1.3EV)/ ISO 100/ WB:曇天
十勝岳連峰から登った太陽とV字谷のシルエットでパターン化した。
ゴーストやフレアが抑えられているので、太陽を入れた構図も作りやすい
8mm(16mm相当)/絞り優先AE(F11、1/160秒、+0.7EV)/ ISO 400/ WB:オート
キガラシの花は緑肥で畑にすき込んで肥料にするが、丘全体を黄色に染め上げるので見栄えがする。周辺部まで解像するので、気持ち良く丘の色彩を表現できる
使用機材
DC-G9
電子シャッターでの約60コマ/秒連写や高速なAF性能など、G9PROは鉄道写真を撮る上で十分なポテンシャルを持ったカメラだ。EVFも120fps※の高フレームレートで、動く被写体でも心強い。
※撮影条件によっては60fpsで表示されます
LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm / F2.8-4.0 ASPH.
コクのある描写力と繊細な解像力を併せ持ったレンズ。前玉が突出していないためPLフィルターも装着でき、風景の撮影にとても便利だ。周辺もキリリとすっきり写り、開放F2.8と明るく望遠端も36mm相当までカバーするので使いやすい。小振りで機動力があることもポイントだ。