ライカレンズ × 写真家 連載企画 Vol.10

田中雅美 作品1

300mm(600mm相当)/マニュアル露出(F5.6、1/500秒)/ ISO 3200/ WB:オート
木々の間をかすめるように飛翔するカンムリワシの若鳥。わずかな木漏れ日しかないという厳しい条件だったが、期待通りの描写をしてくれた

田中 雅美

1961年、埼玉県生まれ。写真学校卒業後、フィルム会社で手焼きに従事。独立後、ネイチャーフォト全般の撮影を開始した。1998年より北緯60度以北での撮影を始め、数多くのオーロラ作品を公開。写真集に『リアルタイム・オーロラ』(廣済堂)など

【源流/沖縄県 石垣島】
写真家を志した20歳のころに出合った野鳥に猛禽類やカワセミ科の鳥がいる。その鳥たちがいたからこそ今の自分がある。現在も沖縄の鳥に魅せられ撮影を続けている

田中雅美 プロフィール画像

フレキシブルなレンズを手に臨機応変に野鳥と向き合う

18歳で自宅にフィルムの現像・プリントを行える環境を作ってから、撮影にのめりこむようになった。美しい風景が撮りたくて全国をさまよっていたある日、渓流でキャラキャラと耳に残る鳴き声がする。声の主を見ようとした刹那、その主は水の中へと飛び込み魚を捕らえた。声の主はカワセミ科のヤマセミだった。ヤマセミに心を奪われて以来、被写体は風景から野鳥に変わった。主にカワセミ科や猛禽類の鳥を撮るようになる。

アオバズク

161mm(322mm相当)/マニュアル露出(F6.3、1/125秒)/ ISO 3200/ WB:オート
夜になると活発に動くアオバズクを狙った。月と雲が程よく絡むように撮影ポジションを調整しながらの撮影となったが、フットワークの良いシステムなので苦にならない

琉球アカショウビン

400mm(800mm相当)/絞り優先AE(F6.3、1/80秒、+1.0EV)/ ISO 400/ WB:オート
琉球アカショウビンをブラインドの中でじっと潜んで狙う。7月の石垣島のテント内は高温・多湿で機材トラブルが起きやすい条件だが、このシステムでは問題なく撮影できた

行き着いた地の1つが石垣島。カンムリワシやカワセミ科のアカショウビンに出くわし、年に数回撮影に行くようになった。当時、仕事でオーロラの撮影を始めていた。極寒の北極圏でのオーロラ撮影と亜熱帯の石垣島での野鳥撮影。空全体を捉える魚眼と野鳥に迫る超望遠。使用レンズまで両極端だ。1歩引いて周囲を見る写真と1点に集中する写真。2つの視点を持つ機会に恵まれたことが、写真家として成長する糧となった。

カンムリワシ・アカショウビン
チョウゲンボウ

280mm(560mm相当)/絞り優先AE (F6.3、1/800秒、+0.3EV)/ ISO 800/ WB:オート
散水機の上で獲物を探すチョウゲンボウ。沖縄らしい鳥のいる景色だ。560mm相当の画角を選ぶと背景の木々を適度にぼかせるので奥行きを表現しやすい

石垣島での野鳥撮影はレンズ選択が難しい。薄暗い森や強烈な明度の海と空、南国特有の強い逆光、その複雑な撮影環境を1本でこなすために選んだのがこの超望遠ズームだ。ライカレンズ特有の色味やコントラストは鮮やかな石垣島の風景と相性が良く、描写力も素晴らしい。
35mm判換算で200~800mm相当という画角をカバーしているので、島の環境を生かした撮影から野鳥のアップまで幅広いシーンを1本でクリアできる。警戒心の強い鳥でも800mm相当の画角なら驚かせず撮影でき、自然な姿を捉えることが可能だ。野鳥の瞬間の動作に対応すべく、機動性重視で撮影の7割は三脚を使用しない。特に鳥が逃げやすい夜は三脚にセットする時間がなく、通常の撮影概念とは逆に手持ち撮影が多い。手ブレ補正の精度が重要だが、LUMIX G9 PROのボディ内手ブレ補正と連動する強力な手ブレ補正が助けになってくれる。野鳥撮影は、状況を瞬時に判断することが欠かせない。このレンズは現場での判断に幅広い選択肢をもたらし、臨機応変に自然と向き合う私の撮影スタイルを支えてくれた。

獲物に向かうカンムリワシ

187mm(374mm相当)/絞り優先AE(F5、1/60秒、+1.0EV)/ ISO 400/ WB:オート
獲物に向かうカンムリワシの飛翔を流し撮り。明るい葉が光跡のように流れスピード感を表現できた。解像力もハンドリングも良いレンズだから撮影できた奇跡の1枚だ

使用機材

DC-G9

強靭なタフネスとボタンの操作のしやすさで過酷な条件下でも思うようにカメラ操作ができる。高性能なボディ内手ブレ補正は超望遠ズームとの相性も良く、瞬間を捉えるために安心して使えるカメラだ

LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.

35mm判換算で200~800mm相当の画角をカバーする超望遠ズームながら、コンパクトで手持ち撮影も容易。1本で撮影範囲が拡大する。薄暗い森でも手持ち撮影可能な手ブレ補正能力とコンパクトネスで、原野の奥にもう1歩踏み込める。合焦部のシャープネスは非常に高く、単焦点レンズに匹敵する高性能レンズだ。

商品一覧

一眼カメラ

コンパクトカメラ

交換レンズ