S5Ⅱ/S5ⅡX開発者インタビュー 外装・デザイン編
スペックに表れない細部にまで、妥協なき完成度を追求する。
─ S5Ⅱの外装についてお聞かせください。
金田:S5Ⅱではグリップ性を高めるため、中指に引っ掛かる部分の食い込みや親指の反り返しの部分などをS5よりもブラッシュアップしています。このため少し質量は増えているのですが、その重さを感じさせないようなグリップ性を実現しています。
ストラップ取り付け部はこれまで三角環を付けていましたが、特に動画ユーザーから雑音への懸念の声をいただき、平型の金具に変更しました。加えて握ったとき三角環の部分が邪魔になりにくいよう配慮しています。また細かい部分ですが、シャッターボタンを人差し指側に少し傾け、自然に指が触れる位置にボタンを配置し、操作感を高めています。
─ 放熱ファンをペンタ部に設置した理由についてお伺いします。
金田:放熱ファンはペンタ部に収納しており、後ろ半分がファインダー、前半分が放熱ファンという構造です。ちょうどセンサーの真上のところにファンがある構造になっています。
従来LUMIXのカメラは背面部に放熱ファンがあり、センサーの熱を後ろに引っ張って、大きなファンで一気に飛ばすという考え方でしたが、やはり距離が遠いのでロスが大きかったんです。センサーとファンの間にメイン基板があり、グルっと周ってこなければならず効率が悪かったので、直上に、最短距離で結ぶことでロスを減らして放熱するという構成にしています。しかも、今回はセンサー部から直接熱を引く構成を採用しています。手ブレ補正(B.I.S.)搭載ですので、一番冷やしたいセンサーは常に動いている状態なので、そこに放熱部材を接触するのは動きの邪魔になるため通常はできません。しかし、今回はB.I.S.担当のメンバーと共に実験を繰り返し、センサー部の動きを阻害しない範囲で熱伝導部材を追加することに成功、その直上のファンにつなげて最高効率で冷やすという一連の仕様が確立できました。
吸排気口からの水の侵入を心配されるかもしれませんが、放熱ファン部分は完全にカメラの外部という扱いにしていて、ファンよりももっと内側で防塵防滴のシーリングを施しています。内部に風を送っているのではなく、熱だけを外側の領域に持ってきて、ファンで冷やすという設計になっておりますのでご安心ください。
─ HDMI端子をタイプAに変更した理由は?
金田:ユーザーからのご要望が多かったこともありますが、故障リスクや接続時の信頼性の点からHDMI端子をタイプAに変更しました。端子サイズの変更によって後ろ側に2mm程度厚くなってしまうのですが、内部構成を工夫してフロント面を下げることで厚みアップ分を吸収し、フロント面から液晶までの厚みはS5と同等にしています。結果的にグリップの先端から正面までの距離が長くなるため、グリップ性の向上にもつながっています。
ハイブリッドミラーレスに相応しい操作性とデザインを。
─ S5Ⅱのデザイン面で苦労した点はありますか?
北出:S5Ⅱは「ハイブリッドミラーレス」のコンセプトを掲げています。なので、放熱ファンを搭載したとしても、それをあからさまに誇示するのではなく、スチールのユーザーにも違和感なく使っていただけるデザインを目指しました。
放熱ファンには吸気口、排気口が必要ですが、それが目立たないようにということでかなり苦心して設計を進めました。正直、ペンタ部に放熱ファンを入れるという構想を設計から聞いたときは、マジかって、驚きましたが(笑)。
─ その他、デザインで特にこだわった部分はありますか?
北出:内部構成の変更により、操作系の配置も見直した部分があるのですが、S5と一緒に使用しても違和感がないよう、設計と何度もやりとりしながら調整しました。
実際に自分でも使ってみると、もう少しこうしたいとか、ユーザー目線から見えてくるものがありまして...。ジョイスティックの操作ももっと良くなるのではないかとか。S5のジョイスティックは4方向だったところ、S5Ⅱでは8方向に改善しているのですが、さらにジョイスティック自体の形状にも変更を加えています。これまでは親指で角を引っ掛けるような操作の仕方を想定していたのですが、長時間使っていると指先が痛くなるというご意見もあり、S5Ⅱでは親指の腹を使う形で自然に操作できるように変更しました。
─ ブラックエディションのS5ⅡXも発表しましたが、デザインのコンセプトは?
北出:Sシリーズ最初のモデルであるS1R/S1の開発時、デザインフィロソフィーとして「無心」というキーワードを設定しました。実際にクリエイターの方にヒアリングや現場立ち合いをさせていただいた際、皆さんカメラを「道具」として捉えられていて、むしろ撮影時は存在を忘れるぐらい被写体に集中されると、たくさんの方から方聞いたんです。LUMIXとしては撮影に没頭できる「道具」でありたいという思いがあり、それをデザインフィロソフィーに掲げたのです。
実はS1R/S1検討時にも、ロゴすら消し去るというアイデアもあったのですが、そのときは採用しませんでした。今回はベーシックモデルとしてS5Ⅱがありましたので、クリエイターの撮影の「黒子」としての考え方も突き詰めて、S5ⅡXのブラックエディションとして実現することができました。