S5Ⅱ/S5ⅡX開発者インタビュー AF・手ブレ補正編

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像面位相差AFを新搭載し、より速く、高精度なAF追従性能へ。

─ 像面位相差AFの初搭載がS5Ⅱになった理由は?

大神:LUMIXは、画質に高いこだわりを持って、開発してきました。
像面位相差では画素欠損など画質への影響があるため、画質への影響がないコントラストAFとDFD技術で、高速・高精度のAFを実現してきました。
「LUMIXは頑なに像面位相差を搭載しない」という声が届いているのは承知しておりましたが、それでも、今まで搭載しなかったのは、画質へのこだわりがあったからです。
S5Ⅱでは、そういった画質面の課題が完全に克服されたことで、像面位相差AFの搭載に至りました。

大神 智洋(AF担当)
大神 智洋(AF担当)

─ コントラストAFに対し、像面位相差AFはどのくらい速度が向上していますか?

大神:静止画においては、AF時に高フレームレートに切り替える処理とDFD技術で、高速・高精度なAFを実現してきました。
像面位相差AFになったことで大幅に改善したのは、動画時のAF速度になります。
ただし、動画時のAF速度というのは速ければいいというわけではないと考えています。従来のLUMIXでも、AFカスタム設定でAF駆動速度を高速にすることができましたが、高速にするとフォーカスが行ったり来たりして迷うようなことがありました。S5Ⅱでは、像面位相差AFになったことで、高速でも低速でも安定したAFを実現することができるようになり、幅広い動画の表現が可能になっております。

─ 像面位相差AFは、すでに発売されているLマウントのレンズで使用可能なのでしょうか?

大神:LUMIXのレンズに限らず、Lマウントのすべてのレンズで像面位相差AFは使用可能です。S5Ⅱでは、撮影シーンや撮影条件によって、像面位相差AFと、コントラストAF+DFDを自動的に切り替えております。

─ 像面位相差AFの搭載により、低輝度AFの性能は変わっていますか?

大神:静止画の低照度AFについては、例えば、従来機種のS5では、-6EVという数値をだしており、S5Ⅱについても、この数値は変わりません。 実際のシーンにおいても、例えば夜明け前などの薄暗いシーンでピントが合うなど、ユーザーからも評価をいただいております。 動画の低照度AFに関しては、像面位相差AFを搭載したこともありますが、自動認識AFモードでは、低照度での人物の検出性能も上がっておりますので、従来機種よりも格段に性能が上がっています。

─ 認識AFの対象についてお聞かせください。

大神:LUMIXでは、認識AFの対象は、人物(人体・頭部・顔・瞳)と動物になっております。動画撮影においては、7~8割は人物が含まれるシーンだと考えており、まずは、人物を対象とした認識AFで、安定したAFを実現する技術の確立に最も注力しております。
S5Ⅱでは、人物が2~3人いるようなシーンにおいても、像面位相差による距離情報を使った新しいアルゴリズムを入れており、他の人物に乗り移りにくいような制御を入れております。今後も、人数が多くなった場合でも安定した性能を出せるように、人物撮影シーンでの性能改善に注力したいと考えております。

強化された手ブレ補正で、新たな表現領域への挑戦を。

─ 新しい手ブレ補正「アクティブ I.S.」の特徴は?

櫻井:一言でいうと、動画歩き撮り時の手ブレ補正性能の大幅な改善です。従来、動画撮影時の手ブレ補正では限られた補正範囲の中、縦方向、横方向、回転方向それぞれの補正をある程度割り振って補正制御をしていました。S5ⅡのアクティブI.S.では、例えば、縦方向が大きく揺れている場合は縦方向の補正を強く、横方向だったら横方向、回転方向だったら回転方向というように、そのときの手ブレの状態に応じて補正の割合を変えるような制御をしています。この制御により、歩き撮り時の補正性能が大きく向上しました。

櫻井 幹夫(手ブレ補正担当)
櫻井 幹夫(手ブレ補正担当)

─ 静止画撮影でも効果はありますか?

櫻井:アクティブI.S.は動画に特化した機能になります。 静止画では、CIPAが定める補正効果段数としてはS5から変わらないのですが、撮影に至るまでのライブビュー中の補正など、随所で制御アルゴリズムの適用など改善は行っており、手ブレ補正トータルでの改善効果は十分感じられると思います。

─ 画角が狭くなるなどの制限はありますか?

櫻井:アクティブI.S.は物理的な手ブレ補正制御の改善になるので、画角が狭くなることはありません。もちろん、今までのようにボディ内手ブレ補正に電子手ブレ補正を掛け合わせすることができます。電子手ブレ補正をオンにされた場合は、画角がやや狭くなります。

─ 広角、望遠など補正が得意な画角はありますか?

櫻井:今回メインでの機能改善は歩き撮り時の効果であり、広角系レンズを使って歩き撮りする場合は十分効果が感じられるかと思います。一方、望遠のフィックス撮影においても制御アルゴリズム進化の恩恵はあると考えており、レンズ内手ブレ補正があるレンズとの組み合わせることで、従来制御よりも十分効果が期待できると思います。

─ 画面が横に振られるパンニングなどでも効果はありますか?

櫻井:S5Ⅱにおいては、アクティブI.S.という歩き撮り時の補正強化を前面にアピールしていますが、動画撮影時の手ブレ補正機能全体の強化を行っています。機種開発において、様々なシーンの歩き撮り撮影と評価を行っただけでなく、手持ちでの撮影と評価も繰り返し行いました。この中で、パンニング速度が速かったり、急に姿勢を変えるシーンがあったりと、急に画角が変わるシーンもありましたが、このようなシーンでもより滑らかな補正になるような制御を実現、導入しています。

─ 手ブレ補正を大きく改善するとなると、ボディサイズに影響はなかったのですか?

櫻井:S5Ⅱにおける、メインの進化ポイントは制御アルゴリズム進化です。 メカの修正による、ボディサイズに与える影響は最小限に留めており、従来のS5とほぼ変わっていないことを分かっていただけると思います。

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