S5Ⅱ/S5ⅡX開発者インタビュー 静止画・動画性能編

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「生命力・生命美」の絵作り思想を継承し、新次元の描写性能へ。

─ S5ⅡでもLUMIXの絵作り思想は引き継がれているのでしょうか?

栃尾:マイクロフォーサーズ機のLUMIX G9 PROから「生命力・生命美」という絵作りのコンセプトを掲げ、画質設計のメンバーだけでなく、写真や動画への熱い想いを持ったメンバーが集まってプロジェクトを立ち上げました。「生命力・生命美」もここから生まれた言葉です。
S5Ⅱでも、その絵作り思想をキープしつつ、新しいエンジンやセンサーを使ってどういった表現ができ、いかにブラッシュアップができるかに注力しました。

栃尾 貴之(画質設計担当)
栃尾 貴之(画質設計担当)

─ 具体的にはどのような部分がブラッシュアップされたのでしょうか?

栃尾:画質を構成する主な要素として「高い解像力」「立体感、奥行き感を感じられるような描写」「豊かな色調表現力」などがあります。
高い解像力に関しては、新エンジンで新インテリジェントディテール処理を搭載しており、例えば斜めの線であったり、エッジ部分の描写のスムーズさなどを改善しています。また被写体の輪郭部分に縁取りのような細かい線が出てくるオーバーシュート現象を抑えることで、より繊細な表現を実現しています。
立体感については、高感度でも立体感のある描写力を得るため、新エンジンによって、ノイズの粒状性の質感を向上させ、粒状ノイズをある程度残しつつノイズリダクションをかけることで立体感や質感を描写することにこだわっています。
色調表現力については、ポートレート撮影での健康的な肌の発色や青や赤の鮮やかなトーンの再現性、細かい木の葉の中の黄色い葉の模様などの微細な色情報をしっかりと描き出すよう設計しています。また、カラーシェーディング補正の機能を新たに搭載しています。Lマウントのレンズであれば、画角周辺部の色かぶりをカメラ内部の制御で補正していますが、Lマウント以外の他社製レンズやオールドレンズを装着した場合でも、本機能により色かぶりが軽減されますので、お使いいただけるレンズのバリエーションが広がると思います。

─ 新たにリアルタイムLUTが搭載されましたが、どのような機能なのか教えてください。

栃尾:今回S5Ⅱで追加したリアルタイムLUTですが、これはRAW現像ツールなどで作成した色調整をカメラのライブビュー画面やJPEG画像、動画に当てて撮影することができる機能です。LUMIXでは以前から動画のLog撮影などでライブビューの画面にLUTを当てた状態で、出来上がりをイメージしながら撮影する機能がありましたが、S5Ⅱでは新エンジンを搭載することで、ライブビューだけでなくJPEG画像や動画ファイルにお好みのLUTを当てて実際の成果物として保存できるようになりました。これにより、例えば、クリエイターのLUTを購入したり、ダウンロードしてカメラに取り込んで撮影するだけで、憧れのクリエイターの世界観のような作品に仕上げることができます。

─ 新しいイメージセンサーは、S5のイメージセンサーに像面位相差AFを搭載したものですか?

栃尾:イメージセンサー単体としては位相差の画素を搭載した以外、基本的な特性などは同じになりますが、イメージセンサー周辺のハード構成を見直し、アナログの電子回路や電源周りの構成を最適化することで、高感度でも画面内の安定性や均一性の向上といったブラッシュアップをしています。

─ 3Dノイズリダクションが進化しているとのことですが?

栃尾:3Dノイズリダクションは動画で使用しているノイズリダクションなのですが、動いているところと動いてないところを判別してノイズリダクションを調整しています。動いているところにノイズリダクションを掛けると残像のようになることがありますが、今回の新エンジンでは、この部分の判別の精度を向上し、より効果的にノイズリダクションを掛けられるようになっています。

画質とAFを高次元で両立させ、究極のスタンダートモデルを追求。

─ LUMIX初の像面位相差AF搭載となりますが、これまでコントラストAFを採用してきた理由は?

中村:LUMIXはとしては、画質を重要視しておりまして、これまでの機種においても画質について高い評価をいただいていると認識しております。
像面位相差AFと採用すると、どうしても画素欠損が発生してしまいます。我々としては画質にこだわっているので、最高画質が実現できる中で、AFをどこまで強化できるのかという観点で今まで開発をしてきました。このようなことから、コントラストAFとDFD(空間認識AF)を磨いてきたというのがこれまでの経緯です。

中村 光崇(開発リーダー)
中村 光崇(開発リーダー)

─ S5Ⅱが初の像面位相差AF搭載となった経緯は?

中村:コントラストAF+DFD(空間認識AF)を採用してきましたが、市場からのAF性能改善に関するご要望は真摯に受け止めておりまして、そうした声を鑑みながら、AFとしてどのような方式がベストなのかを常に検討してきました。それに加えて、今回は新エンジンの画像処理により画素欠損を補正し、私たちが求める画質レベルまで到達できる目途が立ちましたので、像面位相差AFの採用に至りました。

─ UHSⅡのダブルスロットになりましたが、これも要望が多かった部分でしょうか?

中村:S5もダブルスロットですが、UHS IとUHSⅡのダブルスロットということで同じ見た目ながら性能が違うというのが分かりにくいとの声があり、今回両スロットともUHSⅡのダブルスロットとしました。CFexpressに対応する選択肢もありましたが、SDカードと比較するとカードが高額なこと、またサイズ的にも大きくなってしまうことや発熱が大きいという問題もあります。S5Ⅱにおいては全動画記録モードがSDカードの書き込み速度で対応できること、カードの入手性やセットサイズなど、総合的に判断してSDを採用しています。
より高ビットレートの動画記録モードを搭載したS5ⅡXでは、一部SDカード記録できないモードもありますが、USB経由での外付けSSD記録にて対応しています。

─ バッファメモリが増えたとのことで、連写撮影枚数なども変わりましたか?

中村:S5Ⅱでは新エンジン、メモリー構成を含めたシステムを大きく刷新し、メモリー容量はS5比で約4倍になったことに加え、エンジン側の処理も改善しており、連写枚数も大幅に増えています。具体的には、S5のRAW+JPEGが24枚以上でしたが、S5Ⅱは同じ条件で200枚以上と8倍程度になっていますので、ストレスを感じず気持ち良く撮影していただけると思います。また像面位相差AFを搭載し、追従性能も従来機からすると向上しています。電子シャッターによる約30コマ/秒の高速連写やローリングシャッター歪みの軽減などの性能も大きく向上し、アグレッシブな動体撮影も可能になりました。

─ ファインダーについてお聞きしたいと思います。

中村:ファインダーは、S5では236万ドットOLEDパネルで倍率は約0.74倍だったのですが、S5Ⅱでは368万ドットOLEDパネルを採用し、光学系も新開発しています。これにより倍率も0.78倍に上がって、より大きく見やすくなっていることと、光学性能にもこだわり、ちょっと目を振ったときの目ブレや周辺の歪みといった点も高いレベルに仕上がっています。
ちなみにファインダーと背面モニターを切り替えるアイセンサーも下から上に変更していますが、雨や雪が降ってきた時にアイセンサー部に溜まって誤作動を起こすことがあるというユーザーの声に応えたものです。

─ 動画記録についてはどのような点が強化されていますか?

中村:LUMIXは動画性能には強いこだわりを持って開発をしており、多くの機種でユーザーの方から高い評価をいただいております。
S5Ⅱは、スタンダードという枠を外れることのないサイズ感と価格帯をしっかり固めた上で性能を高めています。動画記録モードとしては、前モデルS5からの進化として、6K30pや4K60p 4:2:2 10bit記録等に対応しています。また、記録時間についても、小型の放熱FAN搭載により、サイズ感を損なうことなく、6K24pや4K60pを含む大半の記録モードで記録時間無制限を実現しています。
ハイエンドクラスと遜色ない性能と、AFなどは逆に上回っている性能を持っていますので、多くの方にお使いいただきたいと思います。

─ 4:2:2 10bitの映像に加えて、オーディオは24bit対応とのことですが。

中村:動画は映像もそうですが、音声も非常に重要な要素という認識から、従来から力を入れて取り組んできております。S5Ⅱは幅広いユーザーの方に使っていただきたいモデルとして開発していますが、内蔵マイクの音質は、比較的安価な外部マイクと同等のS/N比を実現していることから、カメラのみの気軽な撮影でも良好な音質が得られます。
一方で、映像や音声によりこだわりたい方に向けては、編集した際の映像や音声に破綻がないよう、情報量の多い4:2:2 10bitや24bitのオーディオを採用しています。

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