家事観と効率化に関する意識調査
家事観と効率化に関する意識調査を、全国の週1回以上家事をする男女1,200人を対象に実施しました。
その結果、約4人に1人は「家事は苦労してこそ価値がある」と回答し、さらに約2人に1人が、家事を、家電に頼らず自分の手でやるべきと、自らプレッシャーを感じたり、過度に周囲が期待する家事があると実感しており、自分自身や周囲に対して家事を精神力で乗り越えるべきと考えている実態が明らかになりました。タイム・パフォーマンスが重視される現代でも効率化が進まない家事の実態や、家事に関する価値観が変わりづらい日本の家事事情について、生活史研究家の阿古真理さんに話を伺いました。主な調査結果は以下のとおりです。
家事に関する実態把握調査を行いました(当社調べ 2024年10-11月)
定量調査:週に1回以上家事をする15~69歳の全国1200名、定性調査:全国10名


- 現代人の56.3%と半数以上が「家事が嫌い」にも関わらず、それを上回る61.1%が「家事はなるべく家電や新しいサービスに頼らず自分でしたい」と回答。
- 全体の40.3%が家事は手仕事でこなした方が「家族のためだと思う」と回答、20代では42.5%と特に高い。さらに、「家事をこなすことが自分の役割と思う」のは、パートナーと暮らす20代64.4%、30代56.6%、子どもと暮らす20代69.7%、30代57.3%に高い。若いカップルや新米パパママは、「家事は自分の役割」と思いがち。
- 「食後の食器洗い」は効率化したい家事1位かつ、嫌いな家事・パートナーと家事負担の話し合いに挙りやすい家事3位にランクイン。しかしながら、食洗機の導入率は平均26.7%、効率化が望まれるものの導入は先延ばしの傾向。
効率化したい家事1位は「食後の食器洗い」
2月22日は「食器洗い乾燥機の日」
最も効率化したい家事と回答されたのが「食後の食器洗い」でした。食器洗いを効率化する食器洗い乾燥機(以後、食洗機)の国内での普及を目的に、1998年に2月22日が「食器洗い乾燥機の日」として制定(※1)されましたが、現在でも日本における食洗機の普及率は他国と比べて低い状況(※2)にあり、いわゆる家事根性論もこの状況に影響を及ぼしている可能性があるといえるでしょう。

- 1998年に一般社団法人 日本電機工業会により食器洗い乾燥機によって食後のゆとりが増え、夫婦だんらんの時間ができること、また、食器洗いによる手荒れを解消でき、食器も衛生的に保つことができるなど、夫婦でにっこりと微笑むことができるとして「ふ(2)うふ(2)に(2)っこり」(夫婦にっこり)の語呂合わせから、食器洗い乾燥機をPRする記念日と制定されました。
- 出典:EuromonitorInternational from national statistics
家事に関する価値観:家事の苦労には価値がある
週1以上家事をする人でも半数以上が「家事が嫌い」
週1回以上家事をする15歳~69歳の男女1,200人に、家事に関する調査を行いました。まず、家事が好きかどうかを聞くと、44.3%が「どちらかと言えば嫌い」、12.1%が「嫌い」と答え、合わせて56.3%と半数以上が「家事が嫌い」という結果になりました[図1]。

家事が嫌いでも約半数は、なるべく家電や新しいサービスに頼らない
「家事は手仕事でこなした方が家族のためである」と考えている人は約4割
家事に対する価値観について、自分でできる家事は家電や新しいサービスなどに頼らずなるべく自分でしたいか?と聞くと、61.1%が「自分でしたい」(そう思う22.3%+どちらかと言えばそう思う38.8%)と答えています。家事が嫌いと答えた人でも、54.9%と、約半数は家電やサービスに頼ることに消極的で、家事は自分でやりたい派のようです。また、家事は手仕事でこなした方が家族のためだと思うか?と聞くと、40.3%が「家族のため」 (そう思う9.8%+どちらかと言えばそう思う30.5%)と答えており、特に20代では42.5%が手仕事の方が家族のためになると考えています。


約4人に1人は 「家事は苦労してこそ価値がある」と捉えており、 20代という若い世代でも約3割も
さらに、全体の4人に1人が「家事は苦労してこそ価値がある」(26.1%)と答えており、10代では41.0%と全世代の中でも最も高くなっています。若い世代ほどタイパが重視される令和の時代といわれますが、若い世代でも苦労してこそ価値があると考えている人も少なくないようです。

家事における「手仕事・苦労」の意識、約半数が実感
家事は自分の手でやるべき? 約2人に1人が経験ありと答えた家事の思い込み
本調査から、「家事は手仕事でこなした方が家族のためである」「家事は苦労してこそ価値がある」といった価値観を持っている人が一定数いることがわかりました。こうした価値観の根底にある考え方の一つとして、家事を家電に頼らず自分の手でやるべきと、自らプレッシャーを感じたり、過度に周囲が期待する家事観が見られます。このようないわゆる家事根性論で語られることが多いと感じる家事はあると思うかと聞くと、約2人に1人(53.6%)が何かしらの家事において「家事根性論」を感じていることがわかりました。さらに具体的な家事について聞くと最も多かったのは、「食事の用意」(27.8%)となりました。

家電やサービスを活用してこれから効率化したい家事1位は「食後の食器洗い」
続いて、「家電や新しいサービスなどを活用してこれから効率化したい家事」について聞くと、「食後の食器洗い」(15.4%)が最も高く、「リビングの掃除」(14.2%)、「トイレの掃除」(13.0%)の順になりました。これらは、「嫌いな家事」や「パートナーとの間で家事負担や家事のやり方について不満を持ったり、話し合いになったりしやすい家事」(次ページのコラム参照)でも上位にランクインしており、家電やサービスで解決したいと思う人が多いことがうかがえます。

生活史から考える、家事と根性論が強く結びつくワケ
調査の結果から、家事はなるべく自分の手でやりたいという意識が高く、手仕事でこなした方が家族のためであり、苦労してこそ価値があるといった精神論な側面が見えてきました。この要因について、生活史研究家の阿古真理さんに依頼をし、コメントをいただきました。※コメントの内容は編集しています。

阿古真理(あこ・まり)さん
くらし文化研究所主宰 作家・生活史研究家
1968年生まれ。食を中心にした暮らしの歴史およびトレンド、ジェンダーについて執筆活動を行う。主な連載は、『東洋経済オンライン』『現代ビジネス』『プレジデントオンライン』。主な書籍は『家事は大変って気づきましたか?』『日本外食全史』(共に亜紀書房)、『日本の台所とキッチン 一〇〇年物語』(平凡社)、『おいしい食の流行史』(青幻舎)、『料理は女の義務ですか』(新潮社)など。
家事根性論は家庭内だけの問題ではない、性別に縛られない働き方の推進がカギに
50代・60代は母親が専業主婦の家庭で育った人が多く、「家事は女性の仕事」「家事は手をかけるべき」という意識が今も残っている傾向にあります。一方、30代~40代は共働き家庭が増え、家事も育児も仕事も同時にこなさなければならないので、「そこまで頑張れない」という現実的な価値観になっているようです。10代が「家事は苦労してこそ価値がある」と捉えている割合が4割と最も多いのは意外な結果ですが、日常的に家事負担を実感する機会がなく、一時的な体験を通じて家事を捉えているからでしょう。学校での大掃除などで得た達成感が、こうした価値観に繋がっているのかもしれません。
しかし、家事の価値観は時代背景や世代ごとに変わっていくとはいえ、家事根性論が根強く残り続ける要因は、他者からの評価や視線の影響が大きいと思っています。つまり、社会全体での役割分担が根本的に改善されない限り、家事根性論の払拭は難しいでしょう。私はこの状況を改善するためには、性別に関係なく仕事にも家事にも関われる働き方の推進が有効だと考えています。たとえば、性別に縛られることなく、管理職や社長として活躍したり、育児や家事のために長期育休を取り、普段から積極的に家事を行うことが当たり前の社会になれば、家事根性論も徐々に払拭されていくでしょう。
「甘え」イメージの脱却が食洗機普及にも繋がる?
家事根性論は、家事を効率化したくてもできない現状を生み出していると言えます。たとえば、今回の調査では、効率化したい家事1位は「食後の食器洗い」でしたが、日本の食洗機導入率は3割未満(※)にとどまっています。海外と比べて食洗機が普及しないのは、キッチンが狭いことや、賃貸住宅に住んでいる人が多く設置がそもそも困難であるという日本の文化がまず一番にあると思っています。他方、「手をかけること=愛情」という昔からある考えと、他の家電と比べて普及し始める時期が遅く、実際に使ってみた身近な人からの情報共有が少ないこともあって、「食器洗いぐらい自分でできる」「食洗機に頼るなんて甘え」という家事根性論の考え方が払拭されにくく、効率化の妨げとなっている現状があるのではないでしょうか。
※出典:EuromonitorInternational from national statistics
家事をもっと楽に。家族全員が参加しやすい環境作りから始めよう
家庭を持ち始めたばかりの20代~30代など、「自分が頑張らなきゃ」というプレッシャーから無理をしてしまうケースも少なくありません。家事が辛いと感じている方や夫婦間でトラブルになりやすい方は、まず「家族みんなが家事をしやすい環境を整える」ということから始めてみてはいかがでしょうか。たとえば、収納や道具の工夫を通じて家族が自然と参加しやすい仕組みを作ることで、家事根性論から離れ、「家事負担をどう軽減するか」を当事者意識を持って考える人を増やすきっかけになるでしょう。
コラム:パートナー間ですれ違いになりがち 水廻りの家事に注意
調査対象者の中でパートナーと同居している564人に、パートナーとの間で家事負担や家事のやり方について不満を持ったり、話し合いになったりしやすい家事について聞くと、「ゴミ出し」(23.6%)、「浴室の掃除」(16.3%)、「食後の食器洗い」(16.0%)の順となりました。「浴室の掃除」と「食後の食器洗い」は調査対象全体の「嫌いな家事」にも上位ランクインしており、負担感の大きい家事のようです。男女別で見ると、どの家事でも男性より女性の方が「話し合いになりやすい」スコアが高めで、特に「ゴミ出し」は女性からの指摘が多いようです。

