絶対切っちゃダメ? 意外と知らない24時間換気システムあれこれ

24時間換気システムの必要性や事情についての監修:田中 直輝(たなか なおき)
ライター:UP LIFE編集部
2023年7月20日
空気

春先になると、花粉やPM2.5、黄砂など、外気の汚れが気になるもの。でも、季節を問わず意外と汚れているのは室内の空気です。だからこそ24時間換気システムが設置されているわけですが、正しく使っていないご家庭も多い様子。そこで、住宅業界で長く活躍する専門家の田中さんに、24時間換気システムの必要性や昨今の事情を教えてもらいました。

どんなもの? どう使えばいい? 24時間換気システムの基礎知識

どんなもの? どう使えばいい? 24時間換気システムの基礎知識

24時間換気システムは、住宅内の空気環境を維持する設備。そう知ってはいるけれど、具体的に何をしてくれるものなのでしょうか? 住宅の専門家の田中さんに聞いてみました。

そもそも24時間換気システムって?

「24時間換気システムとは、機械を用いて居住空間の空気を室外の空気と入れ替え、新鮮でキレイな状態にする設備のことです。もともと気密性の低かった日本の住宅は、時代をへて、化学物質を含むものを使うようになるなど変化が起こり、また、暑さや寒さ対策のため高気密化していきました。その中で、換気性能が十分でないことが問題化。化学物質とダニやホコリの影響から、めまいやのどの痛み、湿疹などのシックハウス症候群という体調不良が懸念されるようになり、24時間換気システムを取り入れることになったのです。仕組みとしては、取り付けた給気口から外の新鮮な空気を取り込み、排気口から排出するというもの。居住空間の空気を1時間に半分以上、入れ替えることが基準とされています」

種類は3つ。住宅によく使われるのは…?

田中さんによると、24時間換気システムは給排気の仕方によって「第一種換気」「第二種換気」「第三種換気」と3つのタイプがあるのだそうです。

第1種換気、第2種換気、第3種換気

「第一種換気は機械で給気し、機械で排気するシステムです。例えば、第一種熱交換形換気システムでは外気を室内の温度になるべく近付けて取り込めるのが利点。冬の気候が厳しい北海道など、寒冷地で採用されることが多いようです。装置本体が通常の換気扇よりも高額で設置が大がかりになることと、初期費用が高くなるというデメリットもあります。

第二種換気は給気口だけに換気扇を設置し、排気口には換気扇を設置しない方法で、空気が入ってくる力が強く、出て行く力が弱いのが特徴。室内の気圧が高くなり、ドアや窓を開けても外からの菌や汚染物質が入りにくいという衛生的なメリットもあります。空気の入れ換えや不衛生な物質の侵入防止を重視する工場、研究所などのクリーンルーム、病院の手術室などでよく使用されるシステムです。

第三種換気は、給気口には換気扇を設置せず、排気口にのみ換気扇を設置する方法。一戸建て住宅やマンションに多く採用されており、すべての部屋に給気口が必要となるのが特徴です。メリットは、第一種換気より設置コストや電気代が安いこと。一方で、外気の温度がそのまま室内に入ってきやすく、給気口近くにいると冬は寒く、夏は暑く感じやすいというデメリットがあります。ただ、空気の流れはそれほど強くないため、換気による暑さ寒さを気にしない人がほとんどです」

この中でも住宅に採用されることが多いのは、「一般的には第三種換気」なのだとか。

「第一種に比べて、設置コストが安価で済むからです。ただし、ハウスメーカーごとに、全館空調システムとの絡みや、自然の通風を重視した設計とするなど換気に関する考え方の違いがあるため、ハウスメーカーの中には第一種の方が多いケースも見られます」

24時間365日つけっぱなしにするのが正解?

24時間365日つけっぱなしにするのが正解?

「24時間換気システムは1年中24時間稼働させ、フィルターの掃除・交換を定期的に行うのが正しい使い方です」と、田中さん。

「24時間稼働は、柱や梁など住宅の躯体に使われる木材・鉄骨材の腐食やサビ防止など、住宅の耐久性の維持にも役立つものと考えられます。夜間など窓を締め切って通風が得られないときなどは、稼働させておくべきだと思います。また、湿度が高くカビが発生しやすい梅雨時や、花粉が気になる季節は室外の空気を取り入れない方がいいのではないかと疑問を持たれる方もいるかと思いますが、24時間換気を切ると室内に空気の流れが起きず滞留してしまいます。住宅の耐久性が落ちてしまうので常時稼働させていた方が良いのではないでしょうか。部屋の湿度を下げたい場合は除湿機、花粉を何とかしたいという場合は空気清浄機なども併用しましょう」

一方、外気が乾燥する時期ではどうでしょうか?

「個人差にもよりますが、室内の湿度も下がってしまいがちなため、極端に乾燥に悩まされる場合は、加湿機を設置するなどの調節が必要です」

24時間換気システムの大切さはわかりましたが、そう聞いても、24時間つけっぱなしとなると、電気料金が気になるのですが……?

「住宅設備の省エネ化技術は日進月歩で向上しています。現在の新築住宅に採用されている24時間換気システムは省エネ性、経済性が高いものがほとんど。1ヵ月数百円程度といわれています。電気代を含むエネルギーコストをトータルで考えると、そう気にならないのではないでしょうか」

設置が義務化された発端は、住宅の高気密・高断熱化

設置が義務化された発端は、住宅の高気密・高断熱化

「先ほども少し触れましたが、住宅が高気密・高断熱化したことで、いわゆる“シックハウス症候群”が問題となったことがきっかけとなり、2003年に建築基準法が改正され、すべての住宅に24時間換気システムを導入することが義務化されました。

日本家屋は昔から、窓が多く外気を家の中に取り込みやすい造りになっていました。これは、日本の気候が高温多湿なことに起因します。室内に湿気が籠らないように風通しを良くする必要があったためです。しかし一方で、外気温の影響を受けやすい側面もあるため、より快適性を高めるべく高気密・高断熱化が進んだ背景があります。

シックハウス症候群は、建材や家具などに含まれるホルムアルデヒドを始めとした化学物質のほか、結露によるカビなどが原因とされています。こうした物質が、住宅の高気密化によって逃げ場を失ってしまったため、2003年の建築基準法改正によって、すべての住宅に24時間換気システムなどの換気設備を設置することが義務化されたのです」

空気の質を向上させるべく尽力するハウスメーカー各社

24時間換気システムの義務化から十数年が経ち、空気の質にこだわることは当たり前の時代となっています。そんな中、ハウスメーカーはどのようなアプローチで室内の空気の質を向上させているのでしょうか?

「現在、ハウスメーカーは“ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)”の供給に力を入れています。これは、年間のエネルギー収支をほぼゼロにできる住宅。このZEHの供給は室内環境の向上とセットで提案されており、近年では全館空調との組み合わせが増えています。

全館空調は、高気密・高断熱住宅と組み合わせることで、部屋間や階ごとの温度をほぼ同じに保つことができる設備です。たとえば一般的な住宅では、リビングや寝室の室温が25℃なのに浴室の脱衣場・トイレは0℃に近いなど、家によっては大きな温度差があり、この温度変化の対策として住宅の高気密・高断熱化と全館空調の組み合わせが推奨されているのです」

こうした状況の背景には、「“人生百年時代”を代表とする、日本人の高寿命化と健康年齢の延長がある」と、田中さん。

「人々が長く健康でいるためには、より住みよい空気環境が必要であるという考え方ですね。24時間換気システムは“換気”のみの役割ですが、全館空調にはHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)により空気清浄、温度、湿度もコントロールできるものもありますし、近年はIoT技術の導入による自動化やさまざまな連携も進んでいます。なお、最近の換気の重要性の高まりを鑑みて、24時間換気システムのパワーを高め、商業施設並の空気の入れ換え機能を有するものを開発したハウスメーカーもあります」

空気にこだわった全館空調システム『エアロハス』とは?

空気にこだわった全館空調システム『エアロハス』とは?

先進技術と自然の力を最大限に活用した『エアロハス』は、パナソニックの全館空調システムです。専用エアコン1台と換気システムで家中を快適な温度に保つため、吹き抜けのある大空間、上下階、浴室、トイレなどでも温度差を抑えることが可能。さらに、地熱の活用と各室の温度センサー制御による、高い省エネ性も実現しています。

また、HEPAフィルターを搭載しているのも注目のポイント。こちらは、0.3μmの粒子を99.97%除去できる高性能フィルター※1で、花粉はもちろん、PM2.5やPM0.5にも対応しています。『エアロハス』は、建築基準法の3~9倍※2の換気回数相当の空気の入れ替えをHEPAフィルターによる循環浄化と併せて行うことで、換気によって室内に流入する外気に含まれる花粉やPM2.5などの汚染物質を除去すると共に、室内で発生するハウスダストなども除去し、より安心の空気環境を実現します。さらに、専用エアコン1台で家中をまかなうため、各部屋に壁掛けエアコンや配管がない点も好評。

「展示場で体験したことがありますが、一般的な住宅よりも広いモデルハウスでも、高い省エネ性を維持しながら稼働できるパワーと経済性はすごいですね。リビング、子ども部屋、寝室と、各部屋の空調・空気清浄機を『エアロハス』ならひとつにまとめられる点も素晴らしい。技術力の高さを感じますね」

 

※1 粒径0.3μmの粒子を99.97%除去するHEPAフィルター搭載の全館空調システムとして、工業化住宅業界初(2017年3月当社調べ)
※2 運転状況により変動します。

空気の汚れが気になる季節は、24時間換気と空気清浄機の活用を

花粉の飛散はもちろん、PM2.5の濃度が高まって黄砂も飛来するなど、春先は空気の質にいつも以上に注意したいもの。室内に関して言えば、24時間換気システムを正しく使って空気を入れ換えることや、空気清浄機で空気をキレイにするといった対策が効果的です。特に例年、花粉に悩まされているなら、空気清浄機はぜひとも導入したいところ。

パナソニックの加湿空気清浄機『F-VXV90』

新開発の“3Dフロー花粉撃退気流”を採用した『F-VXV90​』は、パナソニック加湿空気清浄機のフラッグシップモデル。高濃度の「ナノイー X」を採用することで、花粉やハウスダスト、PM2.5、アレル物質、ニオイなどを抑制します。

「花粉やPM2.5などの有害物質は服などに付着して家の中に侵入するので、これらを取り除く上でも魅力的なモデルだと思います。タバコなどのニオイ対策としても役立つのでは? デザインも美しく、インテリアの雰囲気に合わせやすいと思います。スマホのアプリで操作できるのも手軽。将来的にはジャンルやメーカーを超えて、すべての家電がスマホで操作できるとうれしいですね。

特に高齢者や小さな子どもにとっては、心身の健康のためにも空気が良い環境で過ごしたいですよね。また、それ以外の人にとっても、清潔な空気環境で過ごすことで快眠できるなど、より健康的に過ごせると思われます。いずれにせよ、健康な暮らしには安全・快適な住空間が大きく寄与しますので、もっと住まいの環境について関心を持っていただきたいですね」

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24時間換気システムの必要性や事情についての監修

監修:田中 直輝

田中 直輝(たなか なおき)

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てはもちろん、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。総合情報サイト『All About』ハウスメーカー選びガイド。

2023年7月20日 空気

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