部屋のカビ対策ガイド! 原因から効果的な予防・除去方法まで


ハウスダスト対策と効果的な掃除方法についての監修:藤原 千秋(ふじわら ちあき)
ライター:UP LIFE編集部
2025年1月28日
空気
家の中でカビが生えるのは、水回りだけではありません。どんな箇所でも、油断しているとあっという間にカビの住み処となってしまうんです。では、厄介なカビを予防するには、どのようにすれば良いのでしょうか? そして、もしカビが生えてしまった場合は? そんなカビにまつわるさまざまな疑問に、掃除の専門家、藤原千秋さんが答えてくれました。
そもそもカビって一体、何者? どうやって増えるの?

室内に生えるカビの予防と対策を考えるなら、まずはカビの正体を知っておきましょう。藤原さんによると、「細菌などと混同されやすいですが、実は全く別物」なのだとか。
同じ微生物に分類されても、細菌とは別物
「カビという名前は俗称のようなもので、正確には“真菌”と呼ばれています。“菌”と付くと細菌も浮かびますが、同じ微生物というだけで別の生き物。地球上に細菌が誕生してから13億年ほど後に生まれた真菌は、より進化した生物で、どちらかと言うと植物に近い性質をもっています」
どう成長して増えていく? カビのライフサイクル
「カビの成長も、植物と似ているもの。まず、成長したカビから胞子が飛び出した後、何かに付着すると発芽して、根や茎のように菌糸を伸ばしていきます。まるでタンポポの種子のようですが、植物と違ってカビは光合成を行いません。菌糸を伸ばしたところにある栄養分や水分を吸い、大きくなっていくのです。種類によって寿命は異なりますが数か月から1年ほど、長いものでは2年以上とも言われています」
寿命があると聞くと安心してしまいそうですが、それは間違い。成長したカビは次々と胞子を出して行くため、対処しなければどんどん増えてしまう可能性があります。一度、見つけたら、しっかりと除去することが大切ですね。
住まいのカビに多いのはどんな種類?
カビは、私たち人間の役に立つものもいる一方、悪い影響をもたらすものも。そのひとつが室内に生えるカビです。一体、どのような種類があるのでしょうか?
「高気密性住宅は、水周りに発生しがちな黒カビが多いです。一方、気密性の低くて湿気がこもりにくい住宅でよく見られるのは、白くてフワフワしたコウジカビや緑色の青カビ。黒カビは窓枠やカーテン、エアコンの内部や送風ルーバーなど、水分の多い箇所に発生しがちです。また、コウジカビは古い畳、青カビは壁や押し入れのほか、タンスの底や本棚の奥などの家具に生えやすいですね」
室内にカビが生える条件

家の中がカビだらけ……なんて、考えたくないですよね、そんな状況を防ぐために、まずはカビが好む生育条件を知ることから始めましょう。
カビが好む温度と湿度を知っておこう
「カビの種類にもよりますが、暑すぎず寒すぎず、私たちにとって快適な温度と、高めの湿度という環境が好まれます。具体的には室温25〜30℃、湿度60〜80%ほど。カビの胞子は目に見えないので気づきにくいですが、屋内外を問わず存在しており、こうした条件がそろえばすぐに増えてしまいます」
こんな家だと、特に発生しやすい傾向が
藤原さんによると、カビが成長しやすい家には特徴があるのだとか。
「たとえば、先ほども触れた高気密性住宅です。熱や冷気を逃しにくい気密性の高さをもつ家は、言わば密閉容器のようなもの。室内の水分も抜けにくいので、湿気がこもってカビが好む環境となりがちです。また、結露が発生しやすい部屋や、加湿器を必要以上に利用している部屋、観葉植物や水槽がある部屋などはカビが生えやすいですね。風通しが悪いこともカビにとっては好条件なので、実家の自室など、普段は使われていない部屋でも注意しましょう」
部屋のカビを防ぐ方法
家のカビを予防する第一歩は「換気」
「まずはとにかく換気! 室内の空気中に浮遊している胞子のほか、ハウスダストも屋外へ排出することができます。24時間換気システムは常に運転させた上で、1日に1〜2回は窓を開けての自然換気を行いましょう。このとき、エアコンや空気清浄機はオンにしたままで問題ありません」
「掃除」をきちんと行うことも、カビの予防に効果的
「空中に浮遊しているカビの胞子は、いずれ床へと落ちてきます。たまったままの状態を避けるためにも、掃除はサボらないようにしましょう。カーテンなど布製品の洗濯、布団干しといったこともまめに行いたいですね。このほか、エアコンや空気清浄機といった家電類のフィルターも、ホコリがたまりやすいので、定期的に手入れしましょう」
カビ予防に欠かせない「湿度コントロール」
「カビのリスクを抑えるには、湿度60%以下を心がけて。そのためにも、各部屋に湿度計を置いておくと良いでしょう。湿度計は時計に搭載されているものや、100円ショップなどで取り扱っているものでも目安としては十分。また、最近のエアコンには、スマホアプリなどで部屋の温度や湿度がわかるものもありますよ。湿度を下げるには、エアコンの除湿運転を利用しましょう。押し入れなどには専用の乾燥剤などもありますが、風を当てて乾燥させる方が効果を期待できます」

気温が低くて乾燥する冬でも、予防は必須!
「夏、カビに気を付ける人は比較的多いですが、実は乾燥しがちな冬でも、暖房を使う室内では注意が必要です。なぜなら、家の中と外、あるいは暖かい部屋と寒い廊下など、気温差のある境界部分は結露=水分が発生しやすいから。また、空気がよどんでいる場所にカビの胞子がくっつけば、カビはどんどん繁殖してしまいます。季節を問わず、空気が動いていればカビは生えにくいので、納戸や普段は使わない客間など、人がいない場所でも、換気をしたり扇風機などで風を起こしたりするようにしましょう」
発生してしまったカビの除去方法

カビが生えていたら、すぐにキレイにしたいと思う人は多いことでしょう。でも、闇雲に取り除こうとすると、かえって逆効果なこともあるのだとか。どうやって取り除けば良いのか、藤原さんに教えてもらいました。
カビを見つけたら、まずは消毒!
「下手に拭き取ろうとすると、カビの胞子を飛び散らせたり広げてしまったりしますし、洗剤を使えばエサを与えることになります。ベストな方法は、消毒用エタノールを雑巾などに染み込ませて拭き取ること。手指消毒用のアルコールジェルが使い切れずに残っている場合は、そちらを使うのもおすすめです。また、熱に強い箇所なら、水拭き後にスチームクリーナーを使ったり、当て布をしてアイロンをかけたりしても良いでしょう。
洗い流せる場所なら、次亜塩素酸ナトリウムを主成分としたカビ取り剤も効果的。ただし、こちらは一度開封するとどんどん劣化が進み、最終的にはカビ取り効果がなくなってしまうので、3か月ほどで使い切るようにしてください。
一方、クエン酸や重曹はナチュラルな掃除道具として人気ですが、カビの除去効果はほとんどありません。なお、カビを拭き取った雑巾などはそのまま処分を。水洗いするとカビの胞子が周囲に飛んでしまうので、そのまま袋に入れて口をしっかり閉じてから捨てるようにしてください」
部屋の中にカビのニオイや色が残っているときは
「ニオイが残っているなら、カビが除去しきれていないということ。実は、思いもよらない箇所にカビが生えている可能性もあります。また、クローゼットや押し入れに防虫剤を入れていると、カビのニオイ自体に気付かなくなるので、一度、チェックしてみてください。色が残っている場合、カビの色素を分解する次亜塩素酸ナトリウムで拭くという方法もありますが、素材が傷んでしまうことも多いので注意が必要。衣類の場合は、クリーニング店に相談してみるのも良いでしょう」
部屋ごと、場所ごとのカビ対策

先ほど、藤原さんもお話ししていたように、家の中でも部屋や場所によってカビの発生しやすさは変わるもの。中でも注意したいところの対策法を、藤原さんに聞いてみましょう。
①浴室のカビ対策
「浴室は、カビの元となる水分と汚れが残りやすい場所。24時間換気システムが付いているなら決してオフにせず、常に換気し続けることで予防しましょう。また、浴室は水が流せるので、掃除しやすい場所とも言えます。生えてしまったカビに対しては、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした市販のカビ取り剤を使いましょう。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは目に入ったりするとかなり危険なので、天井や目の高さより上の部分の壁などには避けて。漂白作用がなく、黒カビなどの色は残ってしまいますが、消毒用エタノールで除去する方法は安全です」
②リビングや寝室のカビ対策
「リビングの場合、カビが発生しやすいのは窓の周りやカーテンなど。また、観葉植物の鉢周辺や、子ども用のイス、ものをこぼしがちな布張りのソファなども汚れやすい場所なので、注意が必要です。一方、寝室の場合、圧倒的にカビが生えやすいのはふとんやベッドのマットレス。これらに黒ずんだ点の汚れがある場合は、たいていカビと言えます。もちろん、リビング同様に窓周辺も要注意ですね。このほか、クローゼットや収納家具は、湿気がたまりやすい下方のスペースにも気を付けたいところ。
なお、居室では次亜塩素酸ナトリウムを使えないので、カビが生えた場合は消毒用エタノールでがふき取ったり、洗えるものは洗濯をしたりするのが基本。ポリエステル素材のものなら洗えば比較的キレイになりますが、ふとんやマットレスのようなものにカビが生えた場合は、できれば買い替えたほうが良いでしょう」
③キッチンのカビ対策
「シンク下の収納や水栓金具の周囲、洗い物かご、食洗機周辺などは湿気や水がたまりやすく、注意したいポイント。冷蔵庫だと、野菜室や自動製氷装置のタンクの中にカビが生えやすくなります。発生した場合は、水で流せる場所なら次亜塩素酸ナトリウムを主成分としたカビ取り剤で、洗えない部分は消毒用エタノールかキッチン向けの除菌剤で掃除しましょう」
④シューズボックスのカビ対策
「暗くて閉めきったシューズボックスは、カビの温床となりがち。特に、靴を買ったときの箱に入れたままの状態はカビの発生率がさらに高くなるので、できれば箱から出して収納してください。そのままの状態でしまいたくない場合は、せめて通気性のいい布製の袋に入れて。シューズボックスには除湿剤を入れておき、履いた靴は完全に乾かしてから収納すると、靴が水分によって劣化する“加水分解”の発生を遅らせることもできます」
空気にまつわる家電の利用も、予防策として効果的
部屋の空気をキレイにしてくれる空気清浄機
室内の空気を吸い込み、汚れをキレイに取り除いて排出する空気清浄機は、ぜひとも導入したい家電。カビのエサとなる空気中のホコリを吸い込んでくれます。なお、選ぶときは、微細な物質もキャッチできる高性能なフィルターを搭載しているかどうかも、しっかりチェックするようにしましょう。
空気清浄機能を搭載したエアコン
最近のエアコンには、空気清浄機能を搭載したモデルも多く揃っています。空気清浄機と同様、高性能フィルターが採用されていれば安心。カビの原因となるフィルターのホコリを自動で掃除してくれる機能や、エアコン内部のカビリスクを抑制する内部クリーン機能を搭載したモデルがオススメです。
カビをはじめとした空気リスクを抑制するナノイーX
空気中のアレル物質などの有害物質に作用する※ナノイーXは、パナソニック独自の技術です。空気清浄機やエアコンといった家電のほか、鉄道や病院などの公共機関などでも採用されており、カビ菌に対しても効果を発揮※します。
家電や専門家の力も借りて、カビのないわが家に!
「カビ対策に役立つ家電は頼りになりますね」と、藤原さん。ただし、それだけで安心してしまってはいけないそうです。
「これらの家電さえ使っていれば大丈夫、というわけではありません。やはりカビを防ぐには、換気や掃除もしっかり行うようにしてください。その上でもし、カビを見つけたら、見て見ぬふりをせずしっかり取り除くことももちろん大切。自分の手に負えないと思ったら、お掃除業者に依頼するのも良いと思います。そうやって室内のカビをリセットしたら、日々、換気と湿度コントロールを心がけて、カビの生えにくい家をつくりましょう」
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ハウスダスト対策と効果的な掃除方法についての監修

藤原 千秋(ふじわら ちあき)
主に住まい・暮らしまわりの記事を専門に執筆して20余年。現在はライティングの傍ら監修、企画、広告、アドバイザリーなどの業務に携わる。プライベートでは三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など著書監修、マスコミ出演多数。総合情報サイト『All About』家事・掃除・子育てガイド。
※アレル物質:約6畳の試験空間での約24時間後の効果、カビ菌:約6畳空間での約8時間後の効果、花粉(スギ):約6畳空間での約3時間後の効果です。数値は実際の使用空間での試験結果ではありません。
2025年1月28日 空気
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