【対談】今すぐ読みたい、炊飯器のおいしい解説書。

ライター:UP LIFE編集部
2019年11月7日 食・レシピ

樋口 直哉(料理研究家)×塚原 知里(パナソニック ライスレディ)

樋口直哉さんは、科学の視点から料理のおいしさを探求されている料理研究家であり、「新しい料理の教科書」という本の著者でもあります。今回の対談では、炊飯器の中で科学的にどんなことが起きているか、パナソニック「Wおどり炊き」のソフト開発に携わる炊飯科学のプロ“ライスレディ”に質問を投げかけていただきました。ごはんをおいしく楽しむ極意満載です。

お水は、ごはんの調味料。

樋口:「炊飯器の中で何が起きているか?」は外からはわかりません。そんなブラックボックスの中をメーカーの方にお聞きできるのが、とても楽しみです。

塚原:よろしくお願いいたします。

樋口:ごはんの調理で使われるのは、お米と水と火だけです。火については、炊飯科学のプロである塚原さんにお話しいただくとして、私は水の話に触れたいと思います。お米以外の材料はお水だけですから、お水はごはんの唯一の調味料。同じお米なのに、お水という調味料を変えるだけで様々なおいしさが楽しめます。こういう話をすると、「どのお水がいちばんですか?」と質問されますが、正解は1つではない気がします。

塚原:そうですね。どんなお水で炊いても、ごはんのおいしさを引き立てるのは炊飯器の役割です。

樋口:新潟のお米なら新潟の水というように、産地のマリアージュにこだわる人もいます。一般的には、日本のお米は軟水で炊くのがおいしいと言われていますが、同じ軟水でもPHやミネラルバランスが異なります。遠く離れた土地の天然水で炊いてみるのも面白いですし、浄水器の水など、いろいろ試してみてください。

最新技術で、かまど炊きを超えていく。

樋口:先日「Wおどり炊き」でごはんを炊いてみて、とても驚いたのですが、どうやってこのおいしさが生まれたのかをお聞きできればと思います。

塚原:私たちは、かまど炊きを超えるおいしさを目指して、かまど炊きの火加減を徹底的に分析してきました。

樋口:“はじめチョロチョロ”ではじまる、火加減の手順の言葉がありますね。

塚原:その通りです。“はじめチョロチョロ”の工程で、お米の芯まで水を吸わせ、“中パッパ”のところで、強い火力でムラなく沸騰させ、釜の中が沸騰したら吹きこぼれないように中火で今度はお米一粒一粒の中まで均一に火を通すように沸騰を維持させます。

樋口:なるほど“大火力おどり炊き”と“可変圧力おどり炊き”という2つの炊き技を使って、お釜の中の対流を変化させているのは、そういう理由だったのですね。

塚原:さらに15分くらい加熱を続け、釜の中の水分がなくなった段階で火力を止めます。最後に“赤子泣いてもふたとるな”の工程、15分程度蒸らしています。

樋口:私がすごいなと思うのは“お米一粒一粒の中まで均一に火を通す”技術です。私たち料理のプロにとって“一粒一粒、均一”という言葉が響きます。それがおいしいごはんを炊くためにとても重要だからです。

お米を水につけ置きするのは、昔の常識?

樋口:お米を洗ってから水につけておく時間は、夏場なら30分、冬場なら2時間と言われてきました。でも、家事が忙しい中で浸水時間をとれないという方も多いと思います。

塚原:お米を洗ってからすぐに炊いても、おいしいごはんを食べたい。そんな声から生まれたのが「旨み熟成浸水」という機能です。お米の旨み成分であるアミノ酸がつくられる45~55℃の温度帯で浸水させながら前炊きしてあげることで、長時間浸水しておかなくても旨みを十分に引き出すことができる技術を開発しました。

樋口:炊飯器というと、火力の強さや保温性能が注目されることが多いですが、「旨み熟成浸水」によって浸水の必要がないというのは新しい発見です。

塚原:浸水の温度帯は、炊き上がったごはんの甘み(糖分)の量にも関係します。45~55℃まで水温を上げると、お米の酵素がよく働き、でんぷんを分解して、甘みを増やすのです。

樋口:水につけるひと手間をなくすだけでなく、おいしさの工夫にもなっているわけですね。

冷めたごはんに、炊飯器の実力が出る。

樋口:これまでの炊飯器は、炊きたてのごはんがもっともおいしく、その後、味が落ちていくというのが常識だったように思います。私が注目するのは、時間が経って冷めたときのおいしさ、お米の芯まで十分に糊化できているかどうかです。炊きたてでは気づきにくいですが、時間が経過して冷めたときによくわかります。

塚原:さすがですね。「Wおどり炊き」は、圧力をかけ、お米を対流させながら高温で炊き上げます。そのため、でんぷんの中までしっかりと水と熱が入り込み、時間が経って冷めた後も、でんぷんが老化しにくいという特徴があります。

樋口:昔のかまどは、わらや新聞紙をくべてから釜を下ろすまでの時間で、お米を強火で“焼きしめて”いました。この炊飯器では、高温スチームを利用していますね。

塚原:かまどは、おこげができるまで強火で加熱することで、ハリのある食感とおいしさを作り出すのですが、炊飯器でおこげができると食べるところが減ってしまいます。そこで開発されたのが220℃IHスチームです。

樋口:220℃ですか。お米を焼く感覚ですね。スチームというと蒸すイメージがあり、「お米が水っぽくなるのでは」と心配する方もいるかと思いますが、過熱水蒸気で焼く手法は業務用のオーブンなどでは一般的に使われていますね。冷めてもおいしいごはんが炊けるのは、この高温のスチームも貢献しているということでしょうか。

塚原:はい。旨みをコーティングしてハリを出していきます。

対談会場では「おどる」炊飯器と「おどらない」炊飯器による食べ比べを実施

ごはんの食感とお供が生み出す、マリアージュ。

樋口:好きなごはんの食感は、かため、やわらかめなど、人それぞれ違います。でも、面白いことに、ごはんのお供やおかずとの相性を考えて食感を炊き分けてみると、意外な発見があるものです。たとえば、いつもはやわらかめが好きな方でも脂っこい献立のときは少しかための方が合うと感じたり、シンプルな梅干しのおにぎりを作るときはいつもよりやわらかめに炊くほうがおいしいと感じたり、自分が好きな組み合わせを見つけてほしいです。

塚原:食感に合わせて、お水の量を調節するのは、加減が難しいという方も多いと思います。そこで「Wおどり炊き」は、米の量や水の量がいつもと同じでも、ボタン1つでお好みの炊き上がりにできる「食感炊き分け」機能を備えています。

樋口:どうやって炊き分けるのですか?

塚原:圧力の強弱や加圧する時間、スチーム加熱の有無や温度を自動で細かく調整します。水加減を調節するよりも簡単で確実にお好みの食感に炊き上がります。

樋口:いつもと同じお米でも食感を炊き分けることで、何種類もの銘柄を楽しんでいるかのような気分になりますね。
今日は「Wおどり炊き」の中で一体何が起きているのか、おいしいごはんを炊き上げるその仕組みを理解することができました。ありがとうございました。

塚原:ありがとうございました。

画像:火力・加圧時間・スチームに圧力の強さも加わり、炊き分けの幅が広がりました。各コースを3段階で精密にコントロール。13通りの炊き分けが可能に!

対談会場では、食感を炊き分けたごはんとお供の試食も行われました

対談者プロフィール

樋口 直哉
小説家、料理研究家。服部栄養専門学校卒業。料理教室勤務や出張料理人などを経て、「さよならアメリカ」で群像新人賞文学を受賞。同作は芥川賞候補になる。作家として小説を発表する一方、食に関連する様々な仕事に携わる。主な著書として小説「大人ドロップ」、「スープの国のお姫様」、ノンフィクション「おいしいものには理由がある」、料理本「新しい料理の教科書」など。

画像:樋口 直哉さん

塚原 知里
お茶の水女子大学大学院食品栄養科学コース卒業後、パナソニックに入社。炊飯器のプログラミング開発に携わる、炊飯科学のプロ“ライスレディ”の一員。

2019年11月7日 食・レシピ

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