熱中症の4割が室内で起きている!?リモート生活の熱中症対策
監修:久手堅 司(くでけん つかさ)
ライター:UP LIFE編集部
2021年7月1日
健康
汗ばむ陽気になると、少しずつリスクが高まって行く「熱中症」。
屋外での活動や、強い日差しの下にさらされる機会がなくても、注意は必要です。
在宅勤務やマスク生活が続く、夏の過ごし方を、「せたがや内科・神経内科クリニック」院長の久手堅 司先生にお聞きしました。
熱中症の4割が室内で起きている!
熱中症の従来のイメージは、カンカン照りの日差しの中で起こるものでした。
しかし消防庁によると、熱中症の約4割が室内で起こるといいます。
なぜ、エアコンがあって、厳しい日光を避けられる室内で熱中症が発生するのでしょうか?
体温を調整する自律神経の働き
そもそも人体は、暑さや寒さなどの外気と体温を、自律神経の働きによって調整しています。
熱中症のように身体の中に過剰に熱がたまると、皮膚近くの毛細血管に温まった血液が集まり、身体の外側に熱を放し、体温を下げようとします。
また、皮膚からの放熱で体温が下がらない場合は、汗腺が刺激され、汗による気化熱によって身体を冷やします。
これらはどれも自律神経の働きによるものですが、自律神経が乱れていたり、栄養や睡眠の不足により本来の体温調整機能が働きづらくなると熱中症を引き起こすことがあります。
室内での熱中症は、体温調整機能が衰えつつある高齢者の方に多いそうですが、在宅勤務などで長期間室内での生活が続く若い世代への影響もゼロではありません。
室内で起こる熱中症!“夏の在宅勤務”の落とし穴とは?
新しい生活様式がすっかり根付いた今日この頃。
在宅勤務にも、そして季節の変わり目が感じにくい生活にも慣れてきたのではないでしょうか。
しかし、在宅生活による生活の乱れが「熱中症になりやすい条件」を生みだしてしまうこともあるようです。
たとえば、外を出歩く機会が減ったことにより上昇する気温に身体がついていかずうまく汗をかけなかったり、慢性的な運動や睡眠の不足など生活の乱れで自律神経のバランスが崩れると、熱中症の危険性は上がります。
特に、長びく在宅生活の中では、どうしても運動不足になるもの。
通勤が思ったよりも運動になっていたと気づく人もいるでしょう。
運動不足やアルコールの摂取が脱水症状の原因に!?
運動不足によって、水分を保持する役目もある筋肉が減るとおのずと脱水しやすい身体になります。
また、うだる暑さでついつい冷えたアルコールを飲みすぎてしまうこともあるでしょう。
アルコールには利尿作用があり、過剰に飲むと脱水症状を引き起こす場合があります。
また、アルコールによって過剰に体温が上がることも。
最近では、“家飲み”が楽しみの1つになっている方もいるかと思いますが、飲む量はほどほどに。
そしてアルコールを飲む際には、飲んだ量と同じ量のお水も飲むようにしましょう。
おすすめは、アルコールとチェイサーを交互に飲むチビチビ飲みです。
脱水を防げるだけでなく、水分でおなかもふくれるので、暴飲暴食も防げますよ。
水分補給を忘れずに!マスク生活の熱中症リスク
次に忘れてならないのが、すっかり私たちの生活に定着したマスクの存在です。
マスクと熱中症の関係については未知数な部分もありますが、影響がゼロとは言い切れません。
室内、屋外は関係なく、マスクで口もとを塞ぐことにより必然的に身体の熱を逃がしにくくなりますし、口周りの湿度が上がることで、口内の乾きに気づきにくくなります。
さらには、マスクをしていることで水分補給を後回しにしてしまうということもあるかもしれません。
夏場はマスクを外して、こまめに水分補給や休憩を!
夏場はマスクの仕方に工夫が必要です。
屋外で人と2m以上の距離がとれる環境の場合は、思い切ってマスクを外しましょう。
また、マスクをつけたまま過酷な運動や作業をすることは避け、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分補給を。
室内、屋外で暑さによる疲れを感じたら、人との距離を確認し、マスクを外して休憩することも必要です。
外出時は、身体の負担にならないよう、暑さの厳しい時間帯を避け、涼しい服装を心がけましょう。
熱中症かも?と思ったら…
それでは、実際に熱中症の症状を感じたらどうすればよいのでしょうか?
どんなに予防策を徹底していても環境と体調によっては誰でも熱中症になるおそれはあります。
以下のような症状を感じたら、すぐに対処をはじめましょう。
熱中症チェックリスト
- 手足がしびれる
- めまい、立ちくらみがある
- 筋肉のこむら返りがある
- 倦怠感
- 吐き気
- 頭痛
- 身体が熱い
- けいれん
- 意識障害
上記のチェックリストは、下にいくほど熱中症の重症度が高くなります。
めまいや倦怠感を感じたり、体調がいつもと比べて違うと思った時点で、涼しい場所で休憩・水分補給を行いましょう。
大量に汗をかいている場合は、スポーツドリンクや経口補水液、食塩水を飲むのがおすすめです。
万が一のために経口補水液を家にストックしておくのもよいでしょう。
熱中症でつらい思いをしないように。
予防を心がけ、快適な夏を過ごせるようしたいですね!
監修
久手堅 司(くでけん つかさ)
せたがや内科・神経内科クリニック院長。東邦大学医学部卒業後、同大学付属病院などに勤務。天候の変化によって生じる気象病に着目し、クリニックでは「気象病・天気病外来」を設置、さまざまな患者の悩みに対応している。そのほか情報番組や雑誌などで、気象病をはじめとしたコンテンツの監修なども担当。著書に「最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方」(クロスメディア・パブリッシング)、また、監修書に「面白いほどわかる自律神経の新常識」(宝島社)がある。
2021年7月1日 健康
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