耳のトラブルシリーズ 第1回「気づいた頃には、もう遅い?!最近増えている『イヤホン難聴』を知る」

監修:大河原 大次(おおかわら だいじ)
ライター:UP LIFE編集部
2022年1月11日
健康

マスク生活や、仕切り越しの会話が聞こえづらい?

コロナ禍では、“あるある”のこの状況。

ですが、本当にマスクや仕切りのせいで聞こえづらいのでしょうか?

気をつけたいのは、難聴などの「耳のトラブル」。

難聴というと高齢で起こるイメージがあるかもしれません。
また、突発性難聴などは有名人が患ったことでご存知の方も多いでしょう。

しかし難聴の中には、日頃の習慣によって20代~30代で発症するものもあるそう。

特にスマートフォンでイヤホンを使い、大音量で音楽を聴くなどの現代的な習慣の末に患う難聴は、気づいた頃には病状がすすんでしまっている場合も。

耳のトラブルシリーズの第1回目では、日本橋大河原クリニック院長の大河原 大次先生に通称「イヤホン難聴」についてお聞きしました!

最近よく聞く「イヤホン難聴」ってなに?

写真:女性が聞こえずらそうに耳に手をあてているイメージ

2019年に発行された世界保健機関(WHO)のプレスリリースには、スマートフォンやオーディオ機器を使い大音量で音楽を聴く時間が増えた若者に、難聴のリスクが伴うことが記載されました。

スマートフォンとイヤホンやヘッドホンで音楽を聴く。
このありふれた光景が、どうして耳の疾患につながるのでしょうか?

「イヤホン難聴」は早期に治療しないと回復しにくい

大河原先生によると、イヤホンや、スマートフォンなどのオーディオ機器の普及によって、場所や昼夜問わず音楽を聴く習慣が若年層まで広がったことが難聴リスクの増加に関係するといいます。

「イヤホン難聴といえる比較的若い世代が患う難聴は、近年、たしかに増えています。

若い頃から、長時間にわたって音楽を聴く環境がイヤホンやスマートフォンなどにより可能になった、ある種の現代病といえるかもしれません。

このイヤホン難聴のやっかいなところは、自覚症状を感じにくいことと、そして早期に治療しないと回復しにくいこと。

気づいた頃には病状が進んでいることもあるので、意外と怖い病気かもしれません」と大河原先生は話します。

放っておくと回復しにくい「イヤホン難聴」のリスク

イヤホン難聴は、いわゆる慢性の症状で音を聞くためのセンサーが、度重なる大音量の刺激によって少しずつ障害を受けた結果だそう。

「内耳にあるかたつむりのような形をした蝸牛(かぎゅう)という器官は、耳に入った音を脳に伝える役割があります。

難聴は、この蝸牛が損傷し、周囲の神経から脳に音を正しく伝えられなくなった状況といえます」と大河原先生。

初期症状は、耳鳴りや、耳がつまったような感じがすることが多いといいます。

イヤホン難聴は最初の1週間が勝負!

また、いきなり耳が聞こえなくなるということがないために、気のせいだと思ったり、しばらく様子を見る場合が多くすぐに診察を受ける人が少ないのもネック。

音の聴き方、習慣によって発症するため、年齢や性別などの属性がわかりにくいのも病気を意識しにくい要因かもしれません。

大切なのは、“症状が出てから一週間以内に受診”ということ!

「難聴回復のゴールデンタイムといわれる期間があります。それは症状が出てからの一週間。

飲み薬によって的確に治療することで、多くの場合、症状は治ります。

ですが、その期間を超えてしまうと、神経の変性が起きてしまい、その後、一生症状とつきあっていかなければなりません」。

イヤホン難聴は現代病のひとつ

写真:女性が耳元に手をあてているイメージ

それでは、難聴の症状を感じたらどうすればよいのでしょうか?

まずは一にも二にも、耳鼻咽喉科にかかること!

症状が軽く、気のせいかも?と思っても、違和感があるのなら、一度検査に来て欲しいと大河原先生は言います。

「検査の結果、難聴ではなかったとしても病院としては患者さんの不安を取りのぞけるので検査来院はまったく問題ありません。

イヤホン難聴は比較的判断しやすい病気でもあるので、検査結果に時間を要する場合も少ないかと思います」。

聴覚検査などを経て、イヤホン難聴と診断されれば、投薬で治療をおこなうそう。

難聴予防にはイヤホンを長時間使わず、休憩を入れて!

さらに予防策としては、耳が痛く感じるような音量で長時間音楽などを聴くのを避けること。

「痛みは人間の身体が持つアラームといえます。

身体にとって危険度が高い音量を身体が教えてくれるわけですから、無理をして聴き続けることのないようにしましょう。

また、ふつうの音量でも1時間ほど聞いたら、一度休憩してください。
10分ほど耳を休めるのが理想です」と大河原先生。

そのほか、ライブやクラブなどでは、耳栓を持っていき、ゆるく耳に入れるのもよいそう。

スピーカーの横の席など、音が直撃する環境から耳をやんわり守ることで、音楽を安全に楽しむことができるはず。

「耳の症状は見た目にも出ないですし、激烈な症状でもない限り、軽視されやすいもの。

ですが、一度神経を傷めると、修復ができない場合もあり、厄介です。

また、感覚器の精度はQOLにも大きな影響を及ぼします。
ですので、小さな変化にも敏感になってほしい。

音楽をいつまでも楽しむために、今日からできることをはじめていきましょう!」と大河原先生。

次回は耳のトラブルシリーズの2回目。

お馴染みのメニエール病を取り上げます。

耳の病気としてよく聞かれるこの病気にはどのような対処法があるのでしょうか?

ぜひ、ご覧ください!

監修

写真:大河原大次(おおかわらだいじ)さん

大河原 大次(おおかわら だいじ)

日本橋大河原クリニック院長。神尾記念病院元副院長。帝京大学医学部卒業後、日本医科大学耳鼻咽喉科に入局、その後、伊勢崎市民病院医局長などを経て、耳鼻咽喉科の専門病院である神尾記念病院に勤務。日本橋のクリニックは地域に開かれていながら、ゆったりと静かに受診できる大人の空間。神尾記念病院で培った技術を患者さんの状態に合わせて提供している。患者さんの日常をヒヤリングし、可能な限り環境に合わせた治療を提案するスタンスにも定評がある。

2022年1月11日 健康

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