ビタミンDシリーズ 第1回「日本人の9割が不足!?『ビタミンD』超入門」
監修:桒原 晶子(くわばら あきこ)
ライター:UP LIFE編集部
2022年8月25日
健康
免疫や骨の形成、肌や妊娠期にも重要だといわれる「ビタミンD」。
健康の土台を支えるビタミンDの役割について、大阪公立大学の桒原 晶子教授にお聞きしました!
日本人のほぼ9割が不足!?見過ごされてきた「ビタミンD」
人の健康に幅広い影響を及ぼすビタミンD。昨今注目の栄養素として、気になる方も多いはず。
そんなビタミンDですが、日本人のほとんどが欠乏しているそう。
「研究によると、日本人の約9割がビタミンD不足、または欠乏です」と桒原先生は話します。
以下の表は、ビタミンDの欠乏リスクを簡易的にチェックできるもの。さっそく確認してみましょう!
簡単チェック!ビタミンDの欠乏度は?
【ビタミンD欠乏リスク・簡易チェックリスト】
- 女性である
- 40歳未満である
- 紫外線が少ない時期である
- 運動はあまりしない
- この1年で日焼けをしていない
- 日光浴を週に一度か、それ以下しか行わない
- ビタミンDが多い魚※1を食べるのは、週に1回以下である
※1 さけ、いわし、さんま、かれい、うなぎなど
(引用改変:Kuwabara A, et al. J Bone Miner Metab 2019 37:854-863, 2019)
上記に当てはまる項目が多いほど、ビタミンDが不足しているかもしれません。
リストを見れば一目瞭然ですが、女性でしかも若年層というだけでリスクが高いことがわかります。
桒原先生によると、若い女性は日光にあたる機会※2が少なく、日焼け止めクリームを多用することも関係しているそう。男女差については、女性のほうが男性に比べ脂肪が多いという体組成のちがいが女性のビタミンD不足につながっているようです。
それでは、ビタミンDが欠乏すると身体にどのような影響があるのでしょうか?
※2 ビタミンDは日光浴によって、体内で生成することができる。
老若男女に影響!不足すると起こりやすい症状とは?ビタミンDと健康の関係
ビタミンDが欠乏するとさまざまな病気につながる可能性があります。
「ビタミンDで一番有名なのは、骨への影響。ビタミンDは、腸管からカルシウムやリンの吸収を促進し、血液中のカルシウム濃度を適切に保つ役割があるんですが、実はこれは生命を維持する上でとても大切なんです」と桒原先生。
ビタミンDが極度に足りない状態が続くと、カルシウムやリンによる骨の石灰化が進まず、骨の変形を伴う「くる病」につながることも。
また、ビタミンDの欠乏とまでいかなくとも、骨粗鬆症のリスクが上がります。
守備範囲が広い!全身の健康に影響をおよぼすビタミンD
そのほかにも、さまざまな生活習慣病や感染症、さらには筋肉にも作用するためフレイルとも関係が深く、ビタミンDは健康の土台となる栄養素といっても過言ではありません。
ビタミンDはインスリンの分泌を促すので、生活習慣病のなかでは、糖尿病予防に効果があるといわれています。さらに血圧を下げ、コレステロールや中性脂肪を抑えることから、動脈硬化の予防にも一役買っているそう。
「日々の健康や将来の重大な病気を防ぐために、ビタミンDは大きな役目を担っているのです」と桒原先生。
ビタミンDはどうしたら摂れる?食事と日光浴の正しいアプローチ
ビタミンDを摂取したほうが良いとわかったところで、実際にどうすれば必要な量が摂取できるのでしょうか?
「ビタミンDは食事と日光浴から摂ることができます。より確実にビタミンDを増やすには、居住地や季節、服装などで効果が変わる日光浴よりも、食事でとるほうがよいですね」と桒原先生。
ポイント1:どう摂る?食事×ビタミンD
ビタミンDを多く含む食材には、魚やキノコ類があります。
たとえば、白鮭やいわし(缶詰や蒲焼きでもOK)、真ガレイ。いずれも一切れや一缶で1日に必要な量が摂取できます。中でも白鮭はビタミンDの含有量が高くおすすめ、夏場はうなぎの蒲焼も良いチョイスです。
また、魚類に比べてビタミン量は少ないですが、キノコ類でも天日干しにしたきくらげや椎茸、舞茸は、副菜でいただく程度の量(加熱後で小鉢一杯程度)でも1日の必要量の1/4程度が摂取できます。
「ビタミンDを多く含む食材はいろいろありますが、日常的に手にいれやすい食材を知っておくのがよいでしょう。これは裏技みたいなものですが、椎茸などの生のキノコ類も調理前に1時間でも天日干しすると、ビタミンD量が増えます!」と桒原先生。
ポイント2:どう浴びる?日光浴×ビタミンD
日光浴の場合は、冬場の寒冷地のように極端に紫外線が弱い場合をのぞいて、日なたなら15分、日陰なら30分程度がおすすめ。難しい場合は手の甲を15分ほど日の光に向けるだけでもOK。
「日光浴は、環境と人の条件によって効果に差があります。日焼けや皮膚ガンが心配な場合は、日焼け止めクリームの使用を。顔は照射面積がそもそも小さいので、あらかじめクリームを塗っても大丈夫です。逆に手足は塗らず、日光にさらすことができる服装を!」
ちなみに、屋内の窓際で浴びるような日光は、ほとんど意味がないそう。現代のガラスの多くは紫外線カットフィルムが貼られており、屋内では9割近くの日光がカットされます。ビタミンDを日の光で摂る場合は、外出を前提とするのがポイントです。
サプリメントもうまく活用しよう!ただし過剰摂取には注意!
桒原先生は、絶対日焼けをしたくないという人や、魚が苦手な人、妊娠中や高齢者の方などは、サプリメントも選択肢に入れてよいといいます。
「ビタミンDは、たとえば月1回、高用量のサプリメントを摂ったとしても効果は期待できません。また、過剰に摂取すれば高カルシウム血症などを引き起こすことも。毎日地道に摂るのがおすすめですが、大変な方はサプリメントもおすすめです」
また、高カルシウム血症や骨粗鬆症の治療をしている方、カルシウム製剤を使っている方は、サプリメントを使用する前に主治医に相談してほしいと桒原先生は話します。
「ビタミンDは目に見えず、また、欠乏しても明確な症状が見られない栄養素です。だからこそ、知らぬ間にじわじわと病気のリスクがあがってしまうことも。栄養補充は、一度にたくさん摂るのではなく、毎日適量を継続的に摂ることが大切です。
ビタミンDを上手に摂って、健やかな毎日を!」
監修
桒原 晶子(くわばら あきこ)
大阪公立大学大学院生活科学研究科教授。大学院修了後、大阪樟蔭女子大学、旧大阪府立大学などで教鞭をとる。主な研究テーマは脂溶性ビタミン。日本人におけるビタミンの臨床研究データの必要性を感じ、ヒトを対象とした脂溶性ビタミンと疾患、疾患予防のための適正量を探るべく研究に邁進する。現在は、次世代の健康にビタミンDが関係することに着目して、若年女性のビタミンD欠乏の原因を探る研究を進めている。2009年日本骨粗鬆症学会研究奨励賞、2017年日本栄養・食糧学会奨励賞、2022年日本ビタミン学会奨励賞受賞。
2022年8月25日 健康
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