疲れた時は、筋肉を動かそう 疲労回復の新常識「アクティブレスト」

監修:板井 俊憲(いたい しゅんすけ)
ライター:UP LIFE編集部
2023年12月25日
健康

疲労による身体の重だるさや身体の痛み…。疲れると、とにかく休みたい!と思ってしまうもの。しかしそういう時こそ動くことで、疲労回復の度合いは変わるといいます。今回はパーソナルトレーナーの板井 俊憲先生に、最新の疲労回復方法をお聞きしました。

“疲れたら寝る”は間違い?疲れのメカニズムを利用して疲労回復する方法

写真:パソコン作業をしている女性が、右手を左肩に当てて、首をかしげている様子

疲れで身体のあちこちが痛い、寝たのに疲れが取れない、疲れが取れても忙しくなるとすぐにバテてしまう。年齢とともにしつこい疲れと対峙するシーンは増えていきます。そして、身体を休めれば疲れは取れるのかといえば、そういうわけでもありません。

板井先生は、そもそも動物の生態は、筋肉を使って活動するのだと話します。

「生き物は動いている状態、つまり筋肉を使っている状態の方が自然なんです。デスクワークなどで長時間同じ姿勢でいると、血流が悪化し、疲労物質の代謝もうまくいきません」

休んでいるのに、疲れが取れない理由

肩こりや腰痛のように疲労によって身体に痛みを感じる場合は、血流やリンパの流れに滞りがあるかもしれません。

「血液は酸素や栄養素を各細胞に運び、代わりに筋肉などに蓄積した疲労物質や二酸化炭素を回収します。心臓から押し出された血液は勢いよく身体に巡りますが、戻るのは大変。筋肉の近くにある静脈が、筋肉の運動を利用して血液を押し戻します。実はリンパも同じで、疲労物質を回収したリンパが流れるためには、筋肉の動きが必要なんです」と板井先生。

筋肉に適度な動きや運動がないと、栄養分は身体に巡ることができても、疲労物質はそのまま残ってしまうのだそう。

もはや古い!?“疲れたら寝る”の方程式

疲れを解消するためには、ほどよく“動く”ことが大切だと板井先生はいいます。

「動かないことで疲労物質はどんどん溜まっていきます。肉体労働が多かったひと昔前は、仕事中に身体を動かしていたので、帰ってきた後にすぐに寝ても問題はありませんでしたが、デスクワークが多くなった現代では逆効果です。筋肉がずっと動かされないわけですから疲労物質も流れていかないのです」

また座った姿勢で長く過ごすと、脚の動脈を圧迫して血流を悪くするだけでなく、体力低下も招くそう。

「動かない生活は、疲労しやすい身体をつくってしまいます。まさに、疲れの悪循環ですね。現代人には、筋肉を動かす休息方法がおすすめです」

疲労回復の新しい方法!誰でも、簡単に、5分でできる!「アクティブレスト」

写真:腕のストレッチをしている女性の様子

では、現代人のワークスタイルに合った疲れのケア、休息の方法とはどのようなものでしょうか?

「今までの疲れケアは、横になって寝るといった文字通りの休息でした。現代の生活におすすめしたいのは、“アクティブレスト”と呼ばれるもの。積極的休養という呼び方もありますが、これはそのまま休むのではなく、適度に筋肉を揺り動かしてから休むという方法です。今回ご紹介するのは、筋トレやマラソンのような激しい運動ではなく、ストレッチに近いもの。誰でも簡単にできるのが魅力です!」と板井先生。

それでは、具体的な方法を見ていきましょう。

まずはマッサージから!必見、アクティブレストの方法

まずはアクティブレストのプロローグとして、マッサージから。

  1. 平面な場所に座り、片足を立て、逆足のふくらはぎを押して圧迫する
  2. 足首に近いところから徐々にふくらはぎの上の方まで圧迫を続け、また戻るのを繰り返す
  3. 気持ち良いと感じる圧迫感、回数で続け、もう片方の脚も同様に行う
片足を立て、逆足のふくらはぎを押して圧迫しているイラスト

ポイントは、アクティブレストがはじまる前に行うこと。ふくらはぎを圧迫することで筋肉がほぐれやすくなるので、スムーズにアクティブレストに移行できます。脚を使った動作なので手も疲れませんし、マッサージ機器などで代替してもOK。よりふくらはぎに刺激が欲しい場合は、かかとでふくらはぎを押しましょう。

アクティブレスト1_股関節前面のストレッチ

  1. 膝つきの姿勢から右膝を立て、左足のつま先を立てる。両足の膝が直角の角度になるようセットする
  2. 1の姿勢のまま、身体を前後にゆする。手でおしりを支えるなどして、左股関節が伸びているのを感じながら、20秒ほどゆすり、逆側も同様に行う
①膝つきの姿勢から右膝を立て、左足のつま先を立てるイラスト → ②1の姿勢のまま、身体を前後にゆするイラスト

アクティブレスト2_脚裏全体のストレッチ

  1. 膝つきの姿勢から右膝を立て、ゆっくりとおしりを後方に引きながら右膝を伸ばす
  2. 右足の後ろ側が伸びているのを感じながら、右足のつま先を立てたりふせたりを繰り返し、身体全体も前後にゆする。これを20秒ほど行い、逆側も同様にする
①右膝つきの姿勢イラスト → ②右膝を伸ばすイラスト

アクティブレストの1と2は、下半身を中心にしたストレッチです。ポイントは息を止めずに行うこと。また、ゆすりを加えることで筋肉が伸縮し、機能を回復していきます。

「人間の筋肉はゴムのようなもの。ゴムはふだんから伸ばしたりゆるめたりしておかないと、千切れてしまいます。筋肉も同様で、普段から動きを加え続けておかないと負荷が加わったときに痛めてしまう。アクティブレストは、そんな筋肉のコンディションを整えることができます」

アクティブレスト3_上半身のストレッチ

  1. 腕立ての姿勢から右足を前に踏み出し右手の外側に置く
  2. 1の状態から右肘を曲げ、そのまま床につけるように身体を沈めていく
  3. 2の動きから今度は右手を天井に上げ胸を広げていく。2と3の動きを一秒ごとに繰り返し、10回ほど行ったら逆側も同じようにする
①右足を前に踏み出し右手の外側に置く。右肘を曲げ、そのまま床につけるように身体を沈めていくイラスト → ②右手を天井に上げ胸を広げていくイラスト

「上半身のストレッチのポイントは、リズミカルに繰り返すこと。少し続けると動きに慣れてくるはずです。腕と胸が開くので、肩こりや猫背の解消にも効果があります」

アクティブレスト4_ダウンドッグ

  1. 腕立てふせの姿勢からおしりを持ち上げ、三角形の姿勢をつくる。両手は万歳の状態で伸ばし切り3秒キープする
  2. お尻を落とし、太ももの前側を床につけ身体をそらした状態で3秒キープする。1と2を5セットほど繰り返す
  3. 最後に再度、おしりを持ち上げ三角をつくり、かかとの上げ下げを左右交互に行う
①おしりを持ち上げ、三角形の姿勢イラスト → ②お尻を落とし、太ももの前側を床につけ身体をそらした状態イラスト → ③おしりを持ち上げ三角をつくり、かかとの上げ下げを行うイラスト

「身体の前後を伸ばすストレッチです。キープをしている間も息を止めずに、リラックスして行いましょう」と板井先生。

これらのメニューは、全部行ったとしても5分ほどで終わるプログラム。休憩や就寝など休む前に行うことで疲労回復の効果が高まります。また、運動習慣がある人は運動後のクールダウンに取り入れてもOK。筋肉の疲れを癒してくれるはず。逆におでかけの前などに行うと疲れにくくなるので、ぜひ取り入れてみてください。

疲れをコントロールすることで、日々の行動力や人生が変わる!

写真:外にいる女性の様子

アクティブレストをはじめる時は、意気込みすぎず、試しにやってみようというぐらいの気持ちではじめるのがよいかもしれません。意気込むとどうしても運動強度が高くなり、継続せずに挫折してしまうことが多いといいます。

「やはり運動は、継続が大切です。アクティブレストは、運動というより疲労回復に主眼においたものですので、がんばりすぎないことが大切。お手本通りにいかなくても、身体を動かしてスッキリした!と思って欲しいですね」と板井先生。

アクティブレストで、理想の人生の第一歩を!

アクティブレストを取り入れることで、疲労回復だけでなく日々の行動が変わっていくと板井先生は話します。

「心身の疲れは、たとえ本人が意識していなくても、行動の制限につながっていきます。小さなストレスでも気持ちや行動が縮こまったりするのはもったいないですよね。
健康な身体は幸せな人生の土台です。もちろん健康だけで誰もが幸せになるわけではありませんが、健康がなければ行動も狭くなってしまいます。仕事や余暇の時間を含め、人生を豊かなものにするための基盤作りにアクティブレストを取り入れてもらえるとうれしいですね!」

監修

板井 俊憲(いたい しゅんすけ)

パーソナルトレーナー、株式会社わらわら最高技術責任者(CTO)。スポーツ系専門学校卒業後、株式会社わらわらに入社、在職中に全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会公認パーソナルフィットネストレーナーを取得。現在までに約2,000人の運動をサポートしてきた。2016年、障害者スポーツを入り口に、アスリートのコンディショニングサポートを開始。2019年日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー取得後、現在もアスリートが参加する国際大会や選手権への帯同を行っている。また、各種フィットネスクラブのスタッフ研修、パーソナルトレーナーおよびインストラクターの養成においても活躍中。

2023年12月25日 健康

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