春の睡眠トラブルを防ぐ3つのポイント「光を浴びる」「足首を温める」「足マッサージ」とは?

監修:菅原 洋平(すがわら ようへい)
ライター:UP LIFE編集部
2024年3月1日
健康

春先に感じる眠気や寝つきの悪さ。春は環境変化が大きく、疲れを感じる人も多い時期でもあります。今回は、心身をリセットして春の朝をすっきり起きるための方法を、作業療法士の菅原洋平先生に聞きました!

なんだか眠い、だるい、疲れる。春の体調は「睡眠」に左右される!?

写真:女性が横になって睡眠をとっている様子

春先、気だるさや眠気を感じると、環境変化によるストレスだと思う人も多いはず。睡眠のメカニズムに詳しい作業療法士の菅原先生に聞くと、春の睡眠トラブルは人の生体リズムの変化が関係しているといいます。

「春は生体リズムの変化時期。気圧が低下し高温になる春夏に向けて、身体は負担を減らすために副交感神経の活動を高めます。そのスイッチとなるのが甲状腺刺激ホルモンのTSHβ。俗に春ホルモンと呼ばれるものですが、これらは春前の2月頃、日の出の時間が早まることで脳に信号が送られ分泌されます。春ホルモンの影響を受けて、身体は春夏の気候に合った状態に変化していきます」

春ホルモンと睡眠トラブルの関係

日の出時間の変化で分泌される春ホルモンは、気温上昇に向けて身体を準備していきますが、2月頃はまだ寒い時期。目覚めてからすぐに窓際に行ったり、外に出るといったことも少ないのでは。

「日の出のリズムに合わせて光を浴びていないと、生体リズム変更の信号が発信されません。当然春ホルモンの働きも遅れ、気温上昇にむけた身体の準備がされないまま、春を迎えてしまいます。すると身体は急激な変化にさらされることに。春夏の低気圧/高温に合わせて急激に副交感神経の活動が高まるので、ぼんやりとしたり強い眠気に襲われたり。日中に眠くなってしまい夜に眠れないなどといった睡眠のトラブルが出てくるのです」と菅原先生。

ミスマッチを起こしやすい!?春の身体と生活環境

もちろん、春の生活環境の変化による影響も睡眠には関係するそう。

「進学や就職などで大きな変化を迎える春は、そもそもストレスが溜まりやすい時期。生活の変化に適応するためにはテンションを上げてのぞまないといけません。生体リズムが副交感神経の影響で低活動に入っているときに、交感神経を上げている状態なので、身体としてもミスマッチが起こりやすい。また日中に無理やり上げた交感神経がなかなか鎮まらず、結果寝つきの悪さにつながることも」

では眠りの質を良くして疲れを取り、めまぐるしい環境変化に適応するためには、何が必要なのでしょうか?

睡眠の質を確認!簡単・睡眠チェックシート

写真:パソコン作業をしている女性が、あくびをしている様子

睡眠の改善には、まずは睡眠の質をチェックすることが先決。
以下のチェックシートで、自分の睡眠の状態を確認してみましょう。

睡眠の専門家・菅原先生監修!「簡単・睡眠チェックシート」

  1. 就寝前にあくびが出るほどの眠気がない
  2. 起床から4時間ほど経つと眠くなってくる
  3. 休日と平日の起床時間が3時間以上ずれている

上記3点に1つでも当てはまる場合は、睡眠の質が下がっている可能性があります。春以降、さらに睡眠の質が低下しないよう、注意が必要かもしれません。

そもそもどうしたら人は眠くなるの?

菅原先生によると、人が適切に入眠するためには、4つの条件が必要だといいます。

必須!眠るための4条件

① 朝の光を浴びてから16時間経っている
② 睡眠物質が脳内に溜まっている
③ 深部体温(内臓の温度)が、下がっている
④ 副交感神経が優位になっている

人が寝付くためには、まず、朝の光を浴びてから16時間以上経っていること。また、脳内に神経活動を鎮静させる睡眠物質が溜まっていることも必要です。睡眠物質は30分以上昼寝をすると分解されてしまいます。十分に溜まった状態で就寝時間をむかえなければ、眠気はおとずれません。

よく聞く「深部体温の低下」、「交感神経から副交感神経へのスイッチ」も必要!

「人の深部体温は、起きてから11時間後に最高値になりその後下がっていきます。この急激な体温の低下が入眠に必要ですし、入眠時には、活動中心の交感神経から身体を休める副交感神経にスイッチしている必要があります」

睡眠を改善し、良い眠りを迎えるためにできることはあるのでしょうか?

眠るための4条件をクリア!睡眠の質を上げる「光浴び」「足首温め」「足マッサージ」

写真:レッグウォーマーを履いている様子

前述の眠るための4条件を前提にスムーズに入眠するためには、3つのステップが役立ちます。1つ目は起床時に光を浴びること、2つめは寝る前に行う足首の温め、最後が足のマッサージです。

入眠ステップ1:起きたら光を浴びる

朝起きたらすぐに窓辺に行き、光を浴びましょう。10分ほど浴びるだけで春ホルモンの分泌が高まります。外に出られる場合は1分も浴びれば完了です。

入眠ステップ2:深部体温を下げるために、足首を温める

ベッドに入る1時間前には入浴などで身体を温め、足首が冷えないようにレッグウォーマーなどをしましょう。1時間ほどしたら、そのままベッドに入ります。

「寝るためには深部体温が下がる必要がありますが、深部体温は一時的に体温が上がらないと下げることができません。足首には脛骨動脈という太い血管が通っていますので、そこを温めれば血液が温まり体温も上昇します。足首には筋繊維がないので、お風呂に入った後に一度でも冷えてしまうと自発的に発熱できません。だからレッグウォーマーなどで外から温め、その熱をキープする必要があるのです。注意が必要なのは、この時靴下を履かないこと。高まった深部体温は徐々に下げる必要があるため、足先はオープンにして放熱できるように。また、足首の温めから1時間前後にはベッドに入ると、深部体温の変化のリズムとマッチします」

※放熱とは…体内の熱を外に逃すこと

入眠ステップ3:副交感神経を優位にする、足のマッサージ

  1. 足指に手指を絡め、前後に倒したり、指の間を広げる
  2. 膝裏に両手親指を置いて円をつくるようにふくらはぎの先端を覆う。5秒かけながらゆっくりと圧をかけ、手指を下ろしていく
ふくらはぎのマッサージをしているイラスト

「副交感神経を活発にするために、足のマッサージも有効です。特にC繊維という神経繊維を刺激することで副交感神経が優位になることがわかっています。ポイントはゆっくりと圧を加えること。C繊維は身体のどこにでも存在しますが、ゆっくりとした刺激に反応して脳にリラックスする信号を伝達するので、ゴシゴシとしたマッサージではなく、ゆっくりと5秒数えながら圧を加えていくことを意識するとよいでしょう」

足のマッサージでむくみを解消すれば、睡眠の質も夏場の冷えも良くなる!

血液をはじめとした体液の移動が滞ると睡眠の質も悪くなるそう。日中足元に溜まった水分は、横になることで頭部まで満遍なく移動していきます。むくみが強く移動する水分が多ければ、頭部に水分が移動したときに気道が狭くなり、いびきや無呼吸につながることも。常に体内の水分を循環させ停滞しないようにしておくといびきなども改善し、睡眠の質が上がっていきます。また、全身の血流がよくなれば脳も目覚めやすくなりますし、足のマッサージは冷え対策にもなります。

「足の温めとマッサージは、入浴ルーティンに加えるなどセットしてしまうのが継続のコツ。毎日でなくても週4取り組めば、自然と継続しやすくなります」

睡眠は生活を楽しむためのもの!

菅原先生は、睡眠は目的ではなく日常を楽しむための手段だと言います。

「睡眠そのものを目的としてしまうと、どんなに簡単なセルフケアでも義務感が出てきてしまって、快適ではなくなってしまいます。人は、科学的に合っていることでも負担になれば行えません。毎日のケアを生活のルーティンに充て、寝る時間が楽しみになるように。無理ない範囲でケアを取り入れてもらえればと思います!」

監修

写真:菅原 洋平(すがわら ようへい)さん

菅原 洋平(すがわら ようへい)

作業療法士、ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。国際医療福祉大学卒業後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事、現在はベスリクリニック(東京都千代田区)の睡眠外来にて薬に頼らない眠りをサポートするかたわら、整体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を行なっている。著書に「あなたの人生を変える睡眠の法則」(自由国民社)、「すぐやる!行動力を高める科学的な方法」(文響社)など、いずれも12万部以上を超えるベストセラーに。そのほかテレビ、雑誌などの出演も多数。

2024年3月1日 健康

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