楽しく、無理なく、続けられる! 知っておきたい、最新セルフケア事情
監修:小原 道子(おばら みちこ)
ライター:UP LIFE編集部
2024年9月11日
健康
UP LIFEの健康記事で一貫してお伝えしてきた「セルフケア」の重要性。セルフケアとは、心身の健康を保つために自分で行うケアのことですが、近年、そのセルフケアにも変化の兆しがあるようです。今回は薬剤師として大手ドラッグストアでの勤務経験もある小原道子先生に、最新のセルフケアトレンドの傾向と改めて考えたいその重要性について、お話をお聞きしました!
新型コロナウィルスがきっかけに?変化するセルフケア意識
日々のコンディションを整えるには、「毎日のセルフケアが大切」。UP LIFEの健康記事でも繰り返しお伝えしてきたことですが、改めてセルフケアとは、なぜ必要なのでしょうか?
ドラッグストア業界を見ると、新型コロナウィルスの流行で私たちの健康に対する意識も変わってきているといいます。
コロナ禍で高まったおうち需要
「新型コロナウィルスが流行した当初、感染すると病院に入り、家族との面会が禁止されました。実はあの頃、一気に在宅医療が注目され、訪問診療が増えたのです。また高齢者に関わらず、若い世代でも感染を避けるためにリモートワークの導入など生活様式が一変し、急速に“おうち需要”が高まりました。
それまでは、病気になるとまずは“病院に行く”というのが一般的でしたが、そこにワンクッション置くようになったのだと思います。その役割を担ったのがドラッグストアですね。そこからドラッグストアの役割も変化したように思います」と小原先生。
高まる健康への意識
以前は、指名買いの方が多くを占めていたとか。
「そうですね。ドラッグストアにはチラシを見ながら買うものを決めてやってくるお客さまが多かったです。でもドラッグストアに展開している商品は幅広い。医薬品はもちろん、食品や飲料もそろっていますし、店を訪れれば最先端のヘルスケア商品や情報が得られます。それまで知らなかった健康を保つための便利なアイテムを組み合わせるなど、トータルで揃えるお客さまも増えてきたといえるでしょう」
病気になる前に、自分の身体のことを相談する場所
さらにドラッグストアは、病院よりも気軽に健康の相談ができるインフラになっていると感じると、小原先生は話します。
「そもそも昔の薬局は、病院へ行くほどではないけれど出ている症状を相談できたり、病気予防の知恵を広める場でもありました。コロナ禍で一人一人の健康意識が高まったこともあり、病気の予防や体調キープのためのケアも自分自身で行うこと(=セルフケア)が重視されるようになったのだと思います」
これから来るのは!?セルフケアトレンド最前線
コロナ禍を経た現在、セルフケアのトレンドはどのように変化したのでしょうか?
「今後さらに伸びるセルフケア需要。特に最近は、睡眠、休養、口腔ケア、筋トレが注目されています」
よく眠れることよりも、「目覚めのよさ」が大事
以前は睡眠グッズというと、「睡眠の質の向上」など睡眠に直接関連する言葉が主なものでしたが、最近のものは「目覚めのいい朝」がキーワードになっています。これは、朝起きたときの気持ちよさを訴求することで、その日のパフォーマンスを最大限に発揮することができるということを提供価値にしている点で新しさがあります。睡眠という行為を次のアクションへの充電だと考える現代人のニーズに、よりマッチしたセルフケアトレンドのわかりやすい事例だと思います。
ただ「休む」のではなく、積極的な休養へ
コロナ禍でのリモートワークの広がりは、休養の重要性を再認識させるきっかけにもなりました。長時間のデスクワークなどで体を動かす時間が極端に少なくなった結果、あえて軽く体を動かすことで血流を改善させ、疲労物質を効率的に排出させるアクティブレストという休養方法が注目されるように。このような方法を、睡眠などの休養と比較して、積極的な休養といいます。そういった流れのなかで、首・肩コリもひどくなる前にマッサージツールなどでこまめにケアするなど、“疲れを溜めにくくするケア”を行う人も増えています。
選択肢が増えたオーラルケアやサプリメント
オーラルケア商品も注目です。口腔機能を改善するマウスウォッシュも人気ですし、ガムやキャンディにはアロマ成分の複合体が配合されたものもあります。気分転換やリラックスにつながる商品群ですね。また、サプリメントも従来のタブレット型だけでなく、おやつ代わりに美味しく食べやすいグミ状のものも。
筋トレに必須のアイテム
コロナ前から注目されていた筋トレは引き続き人気で、これらをサポートする商品もバリエーションが増えています。特にプロテインは、不満の多かった味わいが改良されたものが増えました。大豆プロテインに大麦若葉を組み合わせた抹茶風味の製品や、ビターカカオ味のものなど、従来は叶いにくかった美味しさが追求されたものが支持されています。
“ながら”がキーワード?!
これまで見てきたようなトレンドに加えて、もうひとつ重要なキーワードがあります。それは”ながらケア”。家事などの合間時間に行うものや、デスクワーク中に身につけて効果を発揮するものなど、わざわざ感のないセルフケアが忙しい現代人のニーズに合っています。
これらの傾向からは、まだ元気なうちから長い人生を健康的に過ごせるようにといった人々の願いを感じ取ることができます。
改めて考えたい、一人一人ためのセルフケア例
セルフケアトレンドに沿ったおすすめの具体的なケアには、以下のようなものもあります。
「例えば、オーラルケア。中でも洗口液は、1回ずつパックになったものも増えてきました。持ち運びも簡単ですし、口をゆすぐと口臭の原因でもあるタンパク質を固めて洗い流すタイプのものなど、気分によって用途を選べるのも魅力です。歯磨き粉もバリエーションが増えたので、目的やその日の気分に合わせて楽しみましょう」
また、すっかり定着した手洗いのシーンも自分の好みを反映しやすくなりました。
「手洗いの石鹸にこだわる人も増えてきました。泡のもちもち感を楽しんだり、香りにこだわったりする人も多いですね。パッケージもおしゃれで特別感があるものが人気です。コロナ禍では必須のものだった手洗いに“楽しむ”要素が加わったのだと思います」
さらに、“香り”も注目の要素だそう。
「五感を満足させるものにも注目です。特に香りは認知症の種類によっては、記憶障害よりも嗅覚障害の方が早く発症するという報告も※。香りを含む五感を満たすセルフケアは、今後も人気が続きそうです」
※「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会. 認知症疾患診療ガイドライン2017. 医学書院, 2017, p.239
今やさまざまな分野、業界が注目するセルフケアというキーワードですが、継続がハードルになることもあります。
セルフケアを続けやすくする工夫
小原先生によると、セルフケアに関心が集まったことで、継続のしやすさを念頭においた商品設計がなされるようになったといいます。それは、口に入れるものであれば味わいの工夫や完全食※などの機能と美味しさの両立、身体のケアであれば“心地よさ”と”ながら”の実現など、セルフケアを努力して継続するというスタンスから「ついやりたくなってしまう・続けてしまう」といった手軽さ重視のものが増えていることからもうかがえます。
※完全食…健康維持に必要な栄養素が1食に充分に含まれた食品のこと
自分にとって心地よい状態をつくる
「セルフケアとは何か?と聞かれれば、“自分の身体と心に耳を傾けて、心地よい状態をつくること”だと私は答えます。セルフケアをがんばりすぎて疲れてしまうのももったいないですし、かつてのような追い込み重視だったトレーニング方法や社会の風潮さえも変わってきました。自分がやりたいと思うケアや、自身ができることにフォーカスして、心地よく楽しくケアをする。みなさんが、そういった心と身体の自由を得るというのがセルフケアの醍醐味だと思います。同時にセルフケアは”健康であることを誰かと共有すること”でもあると思います。明るい人、笑顔の素敵な人の周りは、その場の雰囲気が和みますよね。自身のケアにより得られた健康が、幸せな時間を作り、周囲も照らすことで、セルフケアそのものが広がっていくのだと思うのです」
監修
小原 道子(おばら みちこ)
薬剤師、薬学博士、公益財団法人日本ヘルスケア協会理事。東北薬科大学(現東北医科薬科大学)を卒業後、岐阜薬科大学にて博士号を取得。薬剤師免許取得後、仙台赤十字病院薬剤部、在宅訪問薬剤師などでキャリアを積む。2009年ウエルシア関東株式会社(現ウエルシア薬局)に入社。在宅医療や地域包括支援センターの立ち上げを行う。執行役員、在宅推進部長などを経て、現在は帝京平成大学薬学部教授として教鞭を取るかたわら、ラジオNIKKEIにて「ビタミン・ラジオ」パーソナリティでも活躍中。著書に「地域包括ケアタネの蒔き方・育て方」(評言社MIL新書)がある。
2024年9月11日 健康
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