翌日のパフォーマンスがみるみるアップ!睡眠の質を高める、寝る前ケア

監修:西多 昌規(にしだ まさき)
ライター:UP LIFE編集部
2025年1月6日
健康

1日の疲れをとるには、睡眠が大切・・・。この睡眠の質の良し悪しで、日々のパフォーマンスも変化します。今回は、心身を整え、自分本来の力を発揮するための睡眠について、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の西多昌規先生に聞きました!

深掘り!改めて知りたい、睡眠の役割

写真:女性が寝ている様子

朝なのにダルい、しっかり寝ているつもりでも疲れが取れない。睡眠の質で1日のあり方が変わると感じている人は多いはず。睡眠のプロフェッショナル・西多先生は、寝ている間の身体はただ休んでいるだけではないと話します。

寝ている間に働く、私たちの身体

「長きに渡り、睡眠=休息だと考えられてきましたが、実は睡眠中には身体のさまざまな臓器が働いています。中には起きているときにはみられないアクティブな現象も。
代表的なものに、成長ホルモンの分泌が挙げられます。成長ホルモンは起きている間には分泌されず、睡眠後しばらくして分泌されるもの。成長ホルモンには筋肉や免疫機能、肌の回復を高める効果があります」

ストレスホルモンと睡眠の関係

また、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールは、睡眠に影響を及ぼします。

「コルチゾールは起床前から増え始め、日中の活動下におけるストレスでも分泌されます。本来、コルチゾールはストレスから身を守るために分泌されますが、分泌されすぎると今度はストレスにうまく対処ができなくなります。コルチゾールが多い状態が続くと寝つきが悪くなり、睡眠の質が低下します」

睡眠不足はうつの原因?

さらには免疫や疲労回復、そしてメンタルとの関係も。

「心と睡眠の関係も無視できません。睡眠の質が悪い状態が続けば、脳の辺縁系が過剰に活動し、不安や恐怖に敏感になります。また、前頭葉の働きが落ちて考え方に偏りが現れることも。その結果、うつ傾向になる場合もあります」と西多先生。もちろん、すべてのうつの原因が睡眠にあるわけではありませんが、1つの要因にはなるようです。

疲労回復にとどまらない!睡眠の質は見た目や人間関係にも影響する!?

写真:女性が鏡を見て肌を気にしている様子

西多先生は、睡眠が足りないと見た目にも影響すると話します。

寝ないと見た目も変わる

「睡眠不足は、肌の状態にも影響を及ぼします。フランスのパリ大学が行った研究※1では、睡眠不足下では皮膚からの水分の蒸発量が増え、肌に残る水分が減ることがわかりました。また、目の周りの血行不良によってクマができることもあります」

印象が悪い、近寄りがたい。睡眠不足は人の印象も左右する

「睡眠不足で顔や外見がどのように見られるかを調査した研究※2では、受け取り側の印象である“魅力的に感じる”や“健康的に見える”といった項目が低評価でした。睡眠不足による皮膚の変化、そして表情の変化は、人から敬遠される原因になるかもしれません」

睡眠不足を解消して、睡眠の質を高めるためには?

それでは睡眠不足を解消し、睡眠の質を保つためにできることはあるのでしょうか?

1stステップ:就寝2時間前に体温を上げる

「就寝の2時間ほど前に体温を上げること、これが大切です。人は、上がった体温が下がりはじめた頃に眠くなります。この“眠くなる条件”を適切なタイミングでセットしましょう。眠る少し前に入浴や血行促進につながるマッサージを行い、身体を温めておくことで、自然に入眠しやすくなります」

入浴はベッドに入る2時間ほど前に行うのがおすすめ。40度以上の熱いお風呂ではなく、38度ぐらいのぬるま湯にゆっくり入ることで、身体がよく温まります。

特に冬場は、手足の冷えでなかなか眠りにつけないという人もいるかもしれません。
「手足の冷えは末梢の血行不良が原因です。冷えたままでは眠りにつきにくいですし、一度入浴などでしっかり温め、自然に体温が下がる状況をつくるとスムーズに寝付けます」

2ndステップ:マッサージやストレッチ

さらに寝る前のマッサージやストレッチは、睡眠の質を上げるのに役立ちます。

「寝不足や睡眠の質が低い場合は、高血圧になることが多いです。血圧が高いと血管も硬くガチガチになりますし、その結果、血流も悪くなり筋肉も硬くなります。筋肉が硬ければ、肩こりや腰痛が出やすくなる場合もあります。ですので、マッサージやストレッチで血流を良くしておくことで、冷えだけでなく筋肉のこわばりや痛みを和らげ、良い睡眠のスタートにつなげることもできます」

この時のマッサージは無理をせず、心地よいと思える範囲でおこないましょう。手足の末梢部のうち、例えば手は(指も同じ)手の甲側ではなく手のひら側により多くの筋肉があります。足もすねや足の甲側よりも、ふくらはぎや足裏により多くの筋肉があり循環が悪化しやすい部位になります。ですので、睡眠前にこれらの部分をマッサージすることは効果的かもしれません。

心地よくマッサージすることで、リラックス効果も!

自分で行うのが大変な場合は、いさぎよく道具に頼るのも大切だと西多先生は言います。
「マッサージを自分で行うのは、結構大変ですよね。揉んでいるとその手も疲れてしまいますし。できる人はよいのですが大変であれば無理をせず、マッサージツールに頼ってよいと思います。今は道具の性能も高いですから」

寝る前のケアで、自分本来のパフォーマンスを発揮できる身体へ

写真:女性が窓際で伸びをしている様子

心身の健康を構成する1つの要素として重要な、睡眠。
入眠だけでなく、睡眠中の眠りの質を高めるためにできることはあるのでしょうか?

“短時間で効率よく寝る”は現実的ではない

「眠りの質を高める方法はないか?とよく聞かれます。特に多いのが、“短い時間”というキーワード。でも睡眠には、ある程度の時間が必要です。もちろん、体質や遺伝的要因によって短い睡眠時間でも質の高さを維持できる人はいると思いますが、一般的には時間が必要ですね」

気をつけたい、女性の短時間睡眠

また、男性より女性の方が眠りの質が落ちがちで、睡眠時間が男性と比較して短くなってしまっているといいます。
「家事だけでなく育児や、さらに仕事も抱えていれば自分の時間の確保そのものが難しいのかもしれません。忙しい日常の中でパフォーマンスを維持するためにも、完璧主義ではなく良い意味での“手抜き”をして、睡眠時間を確保してほしいですね」

スッキリ感が睡眠の質を測るバロメータ

さらに「睡眠の質」は、睡眠時間の長短で簡単に測ることは難しいそう。
「個人によって睡眠時間や効率の良い睡眠のあり方も異なります。1つの目安は、起きたときのスッキリ感。目覚めがスッキリしない日があれば、その日1日のパフォーマンスにも影響するかもしれません。シンプルですが、充分に眠れる時間を確保し、身体を温めることを大切にしてみてください。きっと、自分の力を発揮できる身体づくりができるはずです」

監修

写真:西多 昌規さん

西多 昌規(にしだ まさき)

精神科医、早稲田大学スポーツ科学学術院教授、早稲田大学睡眠研究所所長。東京医科歯科大学(現東京科学大学)を卒業後、国立精神・神経医療研究センター病院などで研鑽を積み、ハーバード大学客員研究員、スタンフォード大学客員講師などを歴任し現在に至る。専門は睡眠医学、精神医学、身体運動とメンタルヘルス、アスリートのメンタルケアなど。著書に「眠っている間に体の中で何が起こっているのか」(草思社)や、「休む技術」(大和書房)など多数。

  1. 出典:Léger D, Gauriau C, Etzi C, Ralambondrainy S, Heusèle C, Schnebert S, et al. “You look sleepy…” The impact of sleep restriction on skin parameters and facial appearance of 24 women. Sleep Medicine. 2022;89:97-103.
  2. 出典:Sundelin T, Lekander M, Sorjonen K, Axelsson J. Negative effects of restricted sleep on facial appearance and social appeal. R Soc Open Sci. 2017;4(5):160918.

2025年1月6日 健康

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