“洗濯は未来への選択”パナソニックと花王アタック、ロックバンド[Alexandros]が共鳴し選択した「新しいパーパスブランディング」

ライター:UP LIFE編集部
2022年2月14日
家事・くらし

毎日の家事のひとつである「洗濯」を楽しく悦びあるものに感じてほしいと、2021年10月19日「洗濯を楽しむ日」にスタートした「#センタク」プロジェクト。電機メーカーのパナソニック、洗濯用洗剤の花王アタックとともに、プロジェクトの一員として名を連ねているのが人気ロックバンド[Alexandros]。この異業種の2社とロックバンドが、どんな想い・考えで共鳴し、プロジェクトが進められたのか。その起点となったのが「パーパス(存在意義・使命)」というキーワード。そこで、この「パーパス」をテーマに、いま必要とされるセンタク(洗濯/選択)とは何か、さらに今後の展望について、パナソニック、花王アタック、そして[Alexandros]川上 洋平氏、プロジェクトのコアメンバーで語り合った。

きっかけはコロナ禍前の「洗濯ワークショップ」

写真左:木村 知世[パナソニック] 写真中:川上 洋平[Alexandros]Vo.&Gt. 写真右:榊原 淳太[花王]

※本記事はパナソニックから、花王の榊原 淳太氏、ロックバンド[Alexandros]川上 洋平氏に、「#センタク」プロジェクトのインタビューを依頼し、コメントの内容を編集して掲載しております。

【#センタク プロジェクト 対談メンバー】
写真左:木村 知世[パナソニック]
写真中:川上 洋平[Alexandros]Vo.&Gt.
写真右:榊原 淳太[花王]

榊原/花王:プロジェクトのきっかけは、3年前にパナソニックさんと花王で行った洗濯に関するワークショップです。両社から約40人が集まって洗濯と向き合いました。

川上/[Alexandros]:ワークショップで、どんなことをしたんですか?

榊原:未来の洗濯について、両社でとことん議論しました。たとえば「10年後の洗濯」などを話し合って発表する。3日間それを繰り返しました。大変でしたが、両社ともに「清潔」というコミュニケーションワードを使っていたり、考え方が近いことがわかり、自然と一緒に何かを発信しようと話すようになりました。

木村/パナソニック:ワークショップ以来、花王さんとは定期的にディスカッションをするようになったのですが、そんな折にコロナ禍に。コロナ禍で洗濯事情は一変しました。清潔・除菌に気をつける一方で洗濯の量や回数が増え、また在宅勤務の増加で今まで洗濯する機会の少なかった人が洗濯をするようになり、洗剤の量や入れるタイミングを間違えたり、洗濯表示がわからず水洗いしてしまったり、洗濯していたことを忘れて干すのを忘れたり…。失敗やお困りごとも増えて、それらがストレスになって、洗濯=面倒で苦痛で辛い家事というイメージが定着しているように思いました。

川上:僕も一人の生活者として、コロナ禍で気づかされたことが多くありました。洗濯だけでなく食べることもそうで、ごく普通のことだけど、すごく尊いよなって。たとえば散歩の時に、どの服にしようか考える楽しさとか、パリっとした服を着る悦びとか。その気持ちを大事にしたいと思いましたね。

商品訴求だけでは人の気持ちまで変えられない

写真:木村さんと榊原さんがドラム式洗濯機を挟んで会話しているイメージ

(木村)コロナ禍で一変した洗濯のイメージを、楽しく悦びあるものに変えたかった。(榊原)パーパスは一過性では伝わらない。洗濯や清潔をアップデートし続けていきたい。

木村:当初から「一緒に商品訴求をしよう」という考えはありませんでした。それよりも、洗濯事情が一変している中で、我々に何ができるのか、我々の存在意義、いま行動・発信すべきことを思考しました。また洗濯機の開発責任者からも有意義な話をたくさん聞いていて、それを何かカタチにしたいと思い至ったのです。洗濯は自分のため、家族のため、出会う誰かのためでもあったりします。こういう時期だからこそ、日々追われる家事のひとつになっている洗濯に、楽しみや悦びを感じてほしい。さらに突き詰めていくと、洗濯は明日をつくる行為、つまりは「未来への選択」でもあると思います。そのことをプロジェクトの「パーパス」として、多くの方々に届けていくことが、いまは必要だと思ったんです。プロジェクトをスタートさせた10月19日を、単に洗濯の日ではなく「洗濯を楽しむ日」としたのも、洗濯は面倒で苦痛な家事ではなく、清潔なシャツに袖を通す心地よさや、未来を楽しく気持ちのいいものにしていきたいという開発者の想いからです。

榊原:確かに順目でいったら、2社で共同開発したとか、新商品ができたからリリースしてプロモーションを行ってというのがよくあるケースだと思います。ただ、商品訴求だけでは気持ちを変えることは難しい。商品訴求を2社で大声で言ったところで意味がないと思ったんです。洗濯への不安やストレスを洗い流すことも含めて清潔だと思うんです。みんなが笑顔で健やかにくらせるきれいな生活をつくる、こころ豊かな未来に貢献し、くらしを豊かにしていきたいという想いが両社にはあるので、洗濯そのものに対して共感を生み出せるようなパーパスを発信したいと思いました。

木村:パーパスをより広く伝えていくために必要と考えたのがテーマソングです。コロナ禍で音楽の力はやっぱりすごいと思いましたし、必要だと再認識したのもあって。コンセプトに共鳴し、同じ志を持って、ゼロから楽曲を制作してほしいというオファーに快諾いただいたのが[Alexandros]さんでした。

[Alexandros]が担ったプロジェクトの重要な役割

写真:川上 洋平[Alexandros]Vo.&Gt.

(川上)タイアップというよりも、2社と一緒にバンドを組むような感覚だった。

川上:話を聞いて、率直に面白そうだなと思いました。そもそも僕達がロックバンドとしてやっていることって曲を売っているから商品を売っているように見えるのですが、僕の感覚としては、商品という感じではなくて、自分の中にあるものをアートとして表現して、それを受け取った人が自分のものにしていく感覚。今回のプロジェクトにも同じようなことを感じました。通常タイアップをする時は、商品などコンシュームされるものに乗せる曲として送り出すのですが、今回は初動の時に「どんな商品ですか?」と聞いたら「商品じゃないんですよ」と。先ほどお二人が言われたように、商品の先にある「世の中をどうしていきたいか」や「いま届けていきたいメッセージ」といった理念や思想をシェアしていくためのプロジェクトだったんです。そこにコンポーザーとして力を貸してほしいというオファーでした。だから、タイアップというよりも一緒にバンドを組むような感覚でしたね。

木村:生活者の琴線に触れて、気持ちにしっかり響いていくプロモーションを考えていたので、今回は単純なタイアップにはしたくありませんでした。背景や想いをきちんと受け取ってもらって、自分達なりに咀嚼し、それならばこういう曲をつくりたい、こういうこともできるんじゃないかというアイデアまで言ってもらえるような。コンポーザーとしての一翼も担える、プロジェクトメンバーになっていただけるアーティストと組みたかった。パーパスは中長期で構えないと伝わらない。一過性で終わらないプロジェクトなので、ハードルの高いオーダーだと思いましたが、妥協はしたくありませんでした。

川上:僕達は歌詞やコード感を指定されてつくるのは得意ではなくて。どちらかというと、話を聞いて、受け取って、噛み砕いていく。自分の中から自然に出てきたものは誠実なものだと思うし、嘘がないので。今回そういうオーダーをいただけたのは、ありがたかったですね。

榊原:驚いたのは、企画をお伝えしただけで、ここまで我々の意思を汲み取ってくれるのかと。実現したかったこと以上のことを[Alexandros]さんに実現していただきました。

川上:じつは初めて言うんですけど、僕、会社員をやっていた頃、「洗う」とか「キレイにする」ということに関わる業種の営業をやっていたので、今回のお話は運命だったのかなと思いますけど。だから僕以外に渡したくないですね(笑)。

楽曲デモに添えられた一通の手紙には…

写真:木村さんと川上さんが会話しているイメージ

木村:楽曲制作に関して、ふたつ感動したことがありました。ひとつは、デモを受け取った時にお手紙が添えられていて、曲の意図とともに「聴く人が少しでもポジティブになるように」「様々なシチュエーションで洗濯する人に届けていきたい」といった、真摯で誠実な想いが綴られていて。お手紙が添えられていること自体が初めてだったので、とても感動しました。もうひとつは、CM撮影時に「洗濯は今日までの自分を洗い流して、明日また生まれ変わる尊い行為だと思う」と話されていたのが印象的で。洗濯は「未来への準備」「清潔に洗い上げるだけじゃなくて、気持ちまでも動かせる行為」だと、改めて気づきと発見をもらいました。通常のタイアップではあまり感じることがない、このプロジェクトにとても寄り添ってくれているという感覚がありましたね。

川上:自分は商品を使う側の人間なので、その目線に立って、気づいたことを伝えることはできると思いました。僕が感じ取ったものだったり、もしくは関係ないよねという部分もあるんですけど、それはもしかしたら、聴いてくださる皆さんの生活とかに結びつくようなキーワードになるのではないかなと。そこは聴く人がどう聴くかという「選択」の部分だと思うし、あまり明かさずとも、わかってもらえるのではないかなと思っています。

無意識で書いた歌詞と商品訴求のないCM

写真:川上 洋平[Alexandros]Vo.&Gt.

榊原:「白いシャツ」という歌詞ですが、アタックも30年近く白いシャツをCMの題材にしてきたんですが、意識されましたか?

川上:僕は歌詞を書く時は、無意識な状態を大事にしていて、意識して書かないようにしています。この歌詞も無意識の状態で出てきた言葉で、デモの時のままなんですよ。ちなみに僕は「黄身のないオムライス」が一番気に入っています(笑)。

木村:「白いシャツの中をくぐって」の「くぐって」にワクワクしました。今日どんな一日になるのか、どんな楽しいことが待っているのか。それが[Alexandros]色で表現されていて素敵だなと思いました。

榊原:「ライム色」はCMの背景色と同じですが、これも無意識ですか?

川上:これも無意識です(笑)。「君のライム色を拭って」は「黄身のないオムライス」に対して、ちょっと韻を踏むぐらいの感じの単語がないかなって考えて「ライム色」が一番よかった。「涙を拭う」も候補としてあったんですが、「ライム色を拭う」とした方が、それが何を意味するのか聴き手の人が色々と想像できる。「ライム色」ってすごく絶妙な色だと思うので、君の心を奪うのか、もしくは悲しみを拭い去ってあげるのか、どちらとも捉えられるような。そこはぼやかしの部分でもあるんですけど。パーパスって、出過ぎるとよくないと思うし、特に曲はそうなんですよね。

木村:楽曲とシンクロしたメッセージ性の強い、いいCMに仕上がったと思っています。商品訴求がないCMをつくるのも久しぶりでした。

川上:CMであってCMじゃないというか。映像が流れた時に「あっ」て気づかされる瞬間だったり、話しかけてもらえるような瞬間だったり。その心地よさを感じていただけるんじゃないかなと思います。

◆「#センタク」プロジェクト テーマソング
「日々、織々」
作詞 作曲:川上 洋平
編曲:[Alexandros]&Takashi Saze

ありったけの魔法をもって
語りたがる月を纏って
君のライム色を拭って
朝に流れていこう

ありったけの魔法をもって
白いシャツの中をくぐって
黄身のないオムライス作って
流れて 流れていけ
(サビ部分抜粋)

パーパスを軸に中長期で進化する「#センタク」プロジェクト

写真:木村さん、川上さん、榊原さんがドラム式洗濯機の前で会話しているイメージ

榊原:プロジェクトはまだ始まったばかりです。パーパスというのは、一過性では伝わらないので、中長期に続けていきたいです。その上で、我々はモノをつくり届ける会社なので、いずれはモノの面でも新たなニュースを出していって、両社で洗濯や清潔をアップデートしていけたらと思っています。

木村:当社が普段の広告で訴求している「液体洗剤・柔軟剤自動投入」機能、洗剤投入から乾燥まで全自動でできる洗濯機の「便利・快適」機能、アタックZEROも訴求している「清潔」に洗い上げる当社の「温水スゴ落ち泡洗浄」機能への価値観などは、一度高いレベルを知ると、それ以前に戻すのは難しい。だからこそ、この活動は中長期的に行う必要がありますし、今後はサスティナビリティやエシカルなども取り入れていきたいです。たとえば、服をもっと大切に長く着られるように、洗濯機も日々改良を重ねていますので、そういった要素も加えながら進化していければと思っています。

榊原:将来的には、このプロジェクトに共感してくれる人や、さらにアップデートできるような方々がいれば、我々だけじゃなく、4社、5社と、どんどん広がっていくようなプロジェクトにしたいですよね。

木村:お客様からお便りをいただいたのですが、こういうコロナ禍にパナソニックと花王がタッグを組み始めたことに、すごく意義を感じてくださったようで。[Alexandros]の楽曲を聴ける楽しみもあるので、このプロジェクトは長く続けてほしいと書かれていました。こういったお声をいただくと、このメンバーで立ち上げてよかったと思いますし、進化させながら続けていかないとなって思いました。

川上:とても普遍的なことを改めて気づかせてもらえるプロジェクトだと思います。「洗濯に悦びを」というのが、まさに。「あ、そうだね、悦びを見いだせるよね、洗濯って」と。さっきも言いましたが、洗濯だけじゃなくて、ご飯を食べるとか人と会話をするとか、そういったことも当たり前のことじゃなくて、すごく素敵な、尊いことだよねっていうのを、このプロジェクトは気づかせてくれると思うし、実際に僕もそうだったので。だから、これが、色々なことを気づかせてくれる、ひとつのスタートになったらいいですね。

対談者プロフィール

木村 知世[パナソニック]
コミュニケーション部/入社以来、宣伝部門に所属。美容家電の広告キャンペーンを長年担当後、洗濯機などの白物家電や横断キャンペーンなど、広告コミュニケーションの戦略プランニングとデジタル戦略の両方を兼任。

川上 洋平[Alexandros]
ロックバンド[Alexandros]のVo.&Gt.
2015年にリリースした「ワタリドリ」はYouTubeとストリーミングの総再生回数が3億回を突破。昨年は初のベストアルバムをリリース。2月16日最新CDシングル「Rock The World / 日々、織々」を発売。「日々、織々」は「#センタク」プロジェクトのテーマソング。

榊原 淳太[花王]
ファブリックケア事業部 アタック マーケティング担当/2020年に新商品「アタック3X」の立ち上げを担当後2021年より「アタックZERO」のマーケティングを担当。商品開発、販売戦略、広告戦略、生産管理などに携わる。

[花王 アタックZERO] 左から、アタックZERO 本体 400g、 アタックZERO ワンハンドタイプ 400g、 アタックZERO ドラム式専用本体 400g、 アタックZERO ドラム式専用ワンハンドタイプ 400g [パナソニック洗濯機] ななめドラム洗濯乾燥機 NA-LX129AL

[花王 アタックZERO]
左から、アタックZERO 本体 400g、
アタックZERO ワンハンドタイプ 400g、
アタックZERO ドラム式専用本体 400g、
アタックZERO ドラム式専用ワンハンドタイプ 400g
[パナソニック洗濯機]
ななめドラム洗濯乾燥機 NA-LX129AL
上の画像(黒):ななめドラム洗濯乾燥機 NA-VG2600L

2022年2月14日 家事・くらし

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