川の字で寝る時間がいま一番の幸せ。
パナソニック保護犬猫譲渡会で出会った、かけがえのない家族
ライター:小見山友子(sippo編集部)、フォトグラファー:山本佳代子
2025年10月8日
ペット
人も犬も猫も「家族」みんなが幸せに暮らせる社会の実現を目指して開催している「パナソニック保護犬猫譲渡会」(協力:朝日新聞社sippo編集部)。これまでにのべ2万2千人以上が来場し、310頭以上(2025年9月8日時点)の譲渡につながっています。
今回は2024年春に開催された譲渡会で、茨城県動物指導センターから引き出された黒い雑種の子犬と出会ったご夫妻の健嗣さんと美華さんに、保護犬を家族に迎えるまでの道のりや、暮らしの中で感じたこと、日々深まる絆についてお聞きしました。
「保護犬を選ばない」という理由がない
――譲渡会へ行こうと思った経緯を教えてください。
美華さん:私たちは以前から、犬と暮らしたいと考えていました。私自身がずっと犬と暮らしていて、結婚前には5頭の犬と過ごしたことがあるんです。だから、いつかまた犬との暮らしを再開したいという思いがずっとありました。
でも以前は仕事が激務で、とても犬を飼えるような生活ではなくて……。けれど転職をして、ようやく生活が落ち着いたタイミングで、「自分の人生を取り戻そう」と思ったんです。そして思い浮かんだのが、犬と暮らすことでした。そんなとき、インスタグラムで「パナソニック保護犬猫譲渡会」の投稿を偶然目にして。「これは行かないと」と思ったんです。
健嗣さん:2023年は予定が合わなかったのですが、2024年の春、ようやくタイミングが合い、足を運ぶことができました。
美華さん:もともと大型犬がいいなと思っていて、「保護犬」という選択肢に迷いはありませんでした。ペットショップやブリーダーさんからも迎えられるけれど、家族を必要としている保護犬たちがたくさんいることはすでに知っていたので、「保護犬を選ばない理由がないよね」という感じでしたね。
健嗣さん:パナソニックが主催する譲渡会は、しっかりした動物愛護団体が参加しているだろうという安心感があり、それが行こうと思った決め手です。実際の会場は想像以上に広々としていて、ボランティアの方と話をしたり、犬たちが自由に過ごしたりしている、とても良い雰囲気でした。
犬らしい雰囲気にひかれて
――家族に迎え入れた「ハル」ちゃんと出会ったときの様子はどうでしたか?
美華さん:譲渡会場に入る前に、チラシを見ながら写真をチェックしていた犬が数頭いたんです。うちに迎えた「ハル」は、茨城県の動物指導センターから引き出された元野犬の雑種で、当時はまだ子犬でした。
健嗣さん:実際に会ってみると写真とは違う印象があるものですね。チラシで見ていたときは、ほかにも柴犬系の子が気になっていたんです。でも、ハルの黒っぽい毛並みや、ボランティアさんのひざに顔をのせている姿が可愛くて、心をつかまれました。
美華さん:微動だにしないその姿があまりにも可愛くて。とても穏やかで自然体だったんです。
健嗣さん:その自然体な雰囲気や雑種犬ならではの個性的な見た目にひかれて、最終的にはハルに決めました。顔を見たときに「あ、この子だな」って感じたところもありましたね。
美華さん:私の友人にハルの写真を見せたら、「顔が夫に似ている!」って言われたんです(笑)。
健嗣さん:じつはボランティアさんにも同じことを言われて。そんな偶然もあって、縁を感じずにはいられませんでした。
「この子はうちの子だ」と確信できた
――ハルちゃんを迎え入れるまでの期間や、暮らし始めるまではいかがでしたか?
美華さん:譲渡会でハルと出会ってから我が家に迎えるまでの道のりは、思っていた以上に大変でしたね。保護団体のアグリドッグレスキューさんの審査はとても厳格で、「お見合い」「飼育環境の確認」、そして「トライアル」といったステップを一つひとつ踏んで進みました。
健嗣さん:たまたま埼玉県の施設でアグリドッグレスキューさんが譲渡会を開催されていたので、まずはそちらに足を運び、「お見合い」をさせてもらいました。その後、別の日にハルを連れて私たちの家に来ていただき、家の中の様子や、犬が安全に暮らせるかどうかなどのチェックをしてもらいました。その時、ハルは家に足を踏み入れてすぐにおしっこをして、ソファに乗ってくつろぎ始めたんです。初めての場所なのに全く警戒する様子がなく、リラックスしていて驚きました。
美華さん:まだトライアル前でしたが、ハルのその姿を見て、「うちの子になるんだ」と確信しましたね。事前に団体の方からゲートの設置場所や高さ、ハーネスの形なども、細かく指示をいただいたので、それに従って準備を整えてからトライアルをスタート。野犬の特性をよく理解しているプロのアドバイスのおかげで、安心してハルをお迎えできました。
健嗣さん:4月の譲渡会に参加してから、6月に正式に譲渡が決定。名前は保護当時の「いちご」から「ハル」にしました。2月の春に生まれたので。うちに来たのが生後4カ月で、当時は10キロないくらいでしたが、今は16キロになりました。
美華さん:ハルを迎えてからも、ハルを育ててくれていたボランティアさんにLINEで相談できる体制があったのは、とても心強かったですね。たとえば、うちに来て10日ほどでごはんを食べなくなったとき、以前はハルのほかにも犬たちがいたという環境を教えてくれて「周りに犬がいないと競争がなく、急いで食べる必要がなくなったことで、食べなくなることがある」とアドバイスをもらいました。それを聞いて、食べなかったらすぐに器を下げて、ごはんの時間にメリハリをつけるようにしました。そしたら少しずつ食べ方は安定していきました。
ハルを理解して一緒に進んでいく
――ハルちゃんと暮らし始めて印象的だったことやハルちゃんの性格について教えてください。
健嗣さん:ハルはとにかく怖がりで、外で見かける制服を着た人やバイク、自転車などが苦手なようです。そのため散歩はあまり好きではなく、歩き出すまでに時間がかかることが多くて、少し苦労しています。
美華さん:そういうときは、ドッグトレーナーさんに教えてもらったことを実践しています。ハルの体をやさしくなでながら声をかけて進んで、角を曲がった先でもまた立ち止まるんですが、また同じように声をかけて……という感じで、一緒に進んでいくんです。そうやって信頼関係を築いてきました。
健嗣さん:でも、車に乗ってドッグランへ行くのは大好きなんです。お散歩という言葉には反応が鈍いのに、「お出かけするよ」と言うと、スッと立ち上がって自らハーネスを着けてもらいに来るんですよ。後部座席に犬用シートを着けて、シートベルトもして乗っています。窓の外を眺めるのがお気に入りみたいですね 。
美華さん:ドッグランのある宿泊先への旅行も増えました。直近は、森の中のお散歩を楽しんできたんですが、街中の散歩は苦手でも、森を歩くお散歩は好きだという、ハルの新たな面を知れました。
美華さん:あと、うちに来た最初の数カ月は、ちょっと大変な出来事もありました。
健嗣さん:外出先からライブカメラでハルを見たら、カメラに背を向けて何かをむしゃむしゃしていて。壁と床の境にある木材(巾木)をかじっていたんです。壁に穴を開けていたなんてこともありましたし、家具の脚やドアのフレームをかじるなど破壊しまくっていました(笑)。当時は、ロープ状のおもちゃを与えてもだめでしたが、だんだんと落ち着いて、今ではすっかり良い子です。
美華さん:破壊行動でも、ハルだと許せてしまうのが不思議ですね。あと、ハルは、歴代の犬たちと比べてもすごく賢くて、こちらの言葉をよく理解しているなと感じます。あまり教え込まなくても「座れ」を覚えたり、「おしまい」と言うと遊びを切り上げたり、おやつを「これ最後ね」と言ってあげると、次はもう出てこないということまで理解しているんです。
――ハルちゃんと暮らすようになって、日々の生活にどんな変化がありましたか?
美華さん:一番変わったのは、近隣の人と話す機会が格段に増えたことですね。朝晩の散歩で近所の人や他のワンちゃんの飼い主さんと、世間話をするようになりました。あとは毎週末、ハルも一緒に飲食店にも行くようになったことですね。
健嗣さん:特に教えていないんですが、ハルはお店に入ると自分からテーブルや椅子の下に入っていくので、落ち着いて過ごせていますね。「ここが安心な場所」とわかっているみたいです。
美華さん:ハルとの暮らしは、日々の生活に癒やしをもたらしてくれますね。スマホにはハルの写真がたくさん入っていて、外出先でも見ては癒やされていて(笑)。朝晩のお散歩は私たち夫婦で一緒に行くので健康的にもなりましたし、仕事でどんなに疲れていても、ハルの顔を見ると自然と笑顔になります。今は、3人で「川の字」になって寝るのが至福の時間です。
保護犬との出会いが教えてくれたこと
――譲渡会や保護犬との出会いを通じて、どんなことを感じましたか?
美華さん:譲渡会は、年齢も犬種もさまざまな犬と出会うきっかけになりますね。それは私たちにとっては「探す楽しみ」でもありましたし、自分たちに合う子と自然に出会える場所だと感じました。
健嗣さん:ご近所にも保護犬を迎えたご家庭や、預かりボランティアをしている方が多くて、保護犬についての理解が進んでいる印象があります。ただ、保護犬を迎えるには、家にいる時間が必要だったり、譲渡までの手続きも多かったりと、最初にハードルだと感じることがあるかもしれません。その点はあらかじめ知っておいてもらえるといいのかなと思います。
美華さん:でも、「この子だ」と思える出会いがあれば、不思議とそのハードルは気にならなくなるものです。だから、まずは気負わずに譲渡会に足を運んでみてほしいですね。きっと、自分に合う子に出会えると思います。
ご夫妻の言葉からは、ハルちゃんとの暮らしが、日常に幸せをもたらしてくれていることが伝わってきました。保護犬や保護猫を迎えるにはいくつかの条件がありますが、それはさまざまな状況から保護された経緯のある犬や猫が再びつらい思いをしないための安全策であり、迎える側にとっても「安心して家族として迎えるための準備」と言えます。そして、迎えた先には、かけがえのない時間が待っています。
パナソニックは、幸せがずっとつづく家族のカタチを応援するため、保護犬・保護猫譲渡会の開催や、犬猫とのくらしに寄り添う製品づくりに取り組んでいます。人も動物も安心して、心地よく暮らせる未来のために、家電や住まいの工夫を通してお役に立てたらうれしいです。これからも、人も犬も猫も「家族」がともに心地よく暮らせる社会の実現を目指してまいります。
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