「防災に関する意識調査2024」から読み解く
意識ギャップに⾒出す防災対策術vol.2
<親世代のための防災編>
災害時の備えについての監修:国際災害レスキューナース・辻 直美(つじ なおみ)
ライター:UP LIFE編集部
2024年9月13日
防災
9月16日は敬老の日。今回の記事では、親を労い、普段の感謝を伝えるこの機会に、「親世代のための防災対策」という観点から防災のあり方や離れて暮らす家族間でのコミュニケーションのあり方について考えてみたいと思います。
年齢が上がるほど⾃然災害への不安が⼤きく
備えが必要だという気持ちも強い
親と離れて暮らしている⽅は、⾃分の親がどれだけ⾃然災害の対策ができているかを把握していますか?この質問に「YES」と答えた⽅は、⽇ごろから親⼦間のコミュニケーションが取れていて、お互いの防災対策⽅法や防災意識がきちんと把握できていると⾔えるでしょう。「NO」と答えた⽅は、今回の記事を参考に、親の災害対策と意識について考え直すきっかけにしていただければと思います。
そもそも、親世代の⾃然災害への意識や対策などは、どのような状況なのでしょうか。今回の調査結果を⾒てみると、⾃然災害が増え続ける昨今、「年齢層が⾼くなるほど⾃然災害への不安は増える」という傾向が出ています。
20代よりも60代のほうが⾃然災害への不安を感じている
辻さんはこのデータを⾒て、「60代は実際に被災経験がある⽅も多く、⽇本で起きた⼤きな被災をリアルタイムでニュースや動画などで⾒てきた世代でもあります。それゆえに、⾃分が被災していなくても、災害が起きればどうなるのか、そこから先どのような状況になり、何に困るのかをなんとなくわかっているのではないでしょうか。だからこそ、不安感が現実感を持って湧き出てくるのだと思われます」と考察しています。
災害の備えに対する50代・60代の「理想と現実」の
ギャップが浮き彫りに
「不安の大きさ」は、「備えの必要性」に直結します。調査結果によると、約9割の50代・60代が「自然災害への備えは必要だと思う」というデータが出ています。
備えに関する「必要性」と「実際の対策」には⼤きなギャップがある
これらのデータと照らし合わせると、「不安を感じる」から「備えの必要性を感じる」は連動しているように⾒受けられます。9割近くの⼈が⾃然災害へ不安を感じている50代・60代ですが、では実際にどれくらい対策できているのでしょうか。調査結果を⾒ると、意外な数字が出てきました。
「⾃然災害への備えが必要だと思っている」と回答した⽅が約9割だったのに対し、実際に「⾃然災害への備えはできている」と回答した⽅は3割以下という結果に。これは、⾃然災害の備えに対する理想と現実に⼤きなギャップが存在しているということになります。
親世代と子世代で備えに関する認識がズレているという事実
親世代となる50代・60代の⾃然災害対策に関する理想と現実に⼤きなギャップが⽣まれている状況で、⼦世代となる20代・30代は親世代の⾃然災害の備え状況に対して、どのように認識しているのでしょうか。データを⾒ていくと、⼦世代と親世代での意識のギャップが浮き彫りになりました。
親の備えに対して「できている」と認識している⼦世代は4〜5割
⾃⾝の備えに対して「できている」と感じている親世代は3割以下
結果として、「⾃分の親が備えができているかどうか」という⼦世代の認識と、「⾃分⾃⾝が備えができているかどうか」という親世代⾃⾝の実情に、ギャップがあることがわかりました。辻さんはこの⼦世代と親世代の認識ギャップを⾒て、「過去の被災状況から、『ものが⾜りなくなる』ということを50代・60代の世代はよく知っています。それゆえ、防災グッズや⾷料・⽔などはたくさん買っておきたいし、新しいものは必ず⾃分の命や家族を救ってくれると信じています。⼤事な家族には⾃分が過去にニュースなどで⾒てきた悲惨な状況にはなって欲しくないと思うのは当然です。⼀⽅で、本当に家族がそのような災害に遭うのかどうかを調べる前に、⼼配ばかりが増しているというケースも多いように感じます。『⾃分のことよりもまずは家族』という⽣活をしてきた世代なので、家族のことばかりで⾃分の備えは後回しになっている傾向も⾒受けられます。また、50代・60代の⽅々は⾃⾝の親がご健在の⽅も多く、⼦供だけではなく⾃分の親のことも考えないといけない世代ということもあり、⾃分の備えが後回しになっているのかもしれません」とその理由を分析します。
離れて暮らす⺟親を持つ50代・60代⼥性は⾃分の備えが後回しになる傾向
つまり、⼦世代が「⾃分の親はある程度の災害対策ができている」と思っていても、実情としては、親世代は「我が⼦や⾃⾝の親の⼼配はするものの、⾃分⾃⾝の備えがそこまでできていない状況」だということです。いざ災害が起こってしまったあとで、「⾃分の親にもっと備えを送っておけばよかった」「災害対策についてもっと話し合っていればよかった」と思ってもすでに⼿遅れです。そうならないためには、どのようなアクションが必要なのでしょうか。
親と離れて暮らしている場合は災害対策に関する
事前コミュニケーションが重要
辻さんは「離れて暮らす家族と話し合うこと、お互いの備えについてコミュニケーションする機会を設けることが最重要」と⾔います。南海トラフ臨時情報が発令され、⽇本全体において⾃然災害への対策意識が強くなっている今だからこそ、事前に確認し合うことが重要です。
⽗親世代の約半数が⾃然災害に関して家族とコミュニケーションできていない
⼀⽅で、⼦世代と親世代で、⾃然災害の対策についてそこまでコミュニケーションが取れていないという現実もデータで明らかになっています。「60代男性の半数以上が離れて暮らす家族と⾃然災害の備えについて話したことない」というデータを⾒て、辻さんは危機感を感じると⾔います。「『あの時、お⽗さんと話しあっていれば』ということにならないように、まずはお互いの⾃然災害の備えに対する考え⽅や認識、備えの内容や備蓄量などについて話し合うことを強くおすすめします」と、いつ訪れるかわからない⾃然災害に対して、家族間での認識合わせの必要性を説きます。
とは⾔え、具体的にどんなことを話し合えばよいかわからない⽅も多いと思います。そんな⽅は、下記のような項⽬について認識をすり合わせるとよいでしょう。「⾮常⾷」「避難所」「ランタンや懐中電灯」「ローリングストック」「家具の転倒防⽌」など、さまざまな観点から話し合えば、そこから備えに対するアイデアや対策などの会話が⾃然と⽣まれ、お互いの考えも明確になり、より具体的な議論ができるはずです。
話しやすいテーマは⾮常⾷の準備、避難場所の確認、家具の転倒防災対策など
まとめ:
敬老の日に、親と災害対策について話し合うことから始めよう
辻さんは「モノを贈ることだけが、親への感謝ではありません。『話し合う防災対策』という無形の贈り物こそが、いま最も必要なことではないでしょうか」と今回の記事を総括します。「お⽗さん、お⺟さん、災害対策はちゃんとできている?」と電話を⼀本いれることが、⼤切な命を救うことにつながるかもしれません。そして、親に⼼配をかけないためにも、⾃分の防災もしておきましょう。
<調査概要>
- 調査内容:防災に関する意識調査2024
- 調査期間:2024年7⽉12⽇(⾦)〜2024年7⽉15⽇(⽉)
- 調査対象者:全国の20〜69歳男⼥ 計2,000⼈(内1,000⼈が5時間以上の停電経験者)
- 調査主体:パナソニック株式会社
- 調査⽅法:インターネット調査
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災害時の備えについての監修
辻 直美(つじ なおみ)
国際災害レスキューナース
⼀般社団法⼈ 育⺟塾 代表理事
阪神・淡路⼤震災を経験し、災害レスキューナースへ転⾝。
看護師歴33年、災害レスキューナースとして29年活動。
国内外30ヶ所以上の被災地派遣で経験を積む⼀⽅で、防災に関する講演やコラム掲載など、活躍は多岐にわたる。
著書『レスキューナースが教えるプチプラ防災』(発売:扶桑社)、『地震・台風時に動けるガイド - 大事な人を護る災害対策』(発売:Gakken)
- 辻の「しんにょう」は「⼆点しんにょう」です。
2024年9月13日 防災
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