耳のトラブルシリーズ 第2回「めまいと耳の違和感からはじまる『メニエール病』とは?その真実に迫る」

監修:高橋 正紘(たかはし まさひろ)
ライター:UP LIFE編集部
2022年2月1日 健康

昨今、有名人の中でも経験談が語られ、話題になることが多い「メニエール病」。その実態から発症や再発、進行予防の方法を徹底解剖!わかるようでわからなかったメニエール病の真実をお届けします。

診断が難しい!?実はまれな「メニエール病」

激しく回転するようなめまいを覚える症状に、耳鳴りや聞こえづらさ、つまった感じなど、耳の違和感が重なるメニエール病。

メニエール病というと、“めまいの病気”という印象が大半かもしれません。まちがいではありませんが、初期症状や原因は「耳」に大きく関係しています。そして、かかるとなんとなくやっかいな病気の印象もありますよね。

そんな、わかるようでわからなかったメニエール病の真実について、横浜中央クリニック併設「めまいメニエール病センター」センター長・高橋 正紘先生にお聞きしました。

「メニエール病は診断が難しく、実は誤診だったということが多いのです」と高橋先生は話します。

高橋先生によると、メニエール病のごく初期にはめまいが無く、耳の症状だけのこともあるといいます。

メニエール病の初期症状を見てみましょう。

注目!メニエール病の初期症状

  • ある日突然、起こる耳鳴り(ボーッという低音、キーンという高音などによりさまざま)
  • 耳がつまったような違和感や水が入ったような圧迫感があり、それらが片方の耳に起こる場合が多い
  • 低音の聞き取りづらさ
  • 数時間続くはげしい回転性のめまい

不思議なことに、これらの初期症状の多くは、1~2週間で一旦、自然に治るといいます。

ですが、治ったかと思うと不定期に再発を繰り返すようになり、めまいは起こりにくくなりますが、数ヶ月から1~2年で聴力が落ちてゆき、次第に症状が固定していくそう。

また、症状の種類やその度合いにもばらつきがあるため1度の診察では確定できず、さらに、めまいや難聴で似た症状を示す疾患があるので誤診につながる場合もあるそうです。

「メニエール病」にかかりやすいのは、どんな人?

では、メニエール病にかかりやすい人とは、どのような人なのでしょうか?

高橋先生に聞くと、メニエール病はストレスが大きな原因を占めるそう。

「メニエール病は、ストレス病といっても過言ではありません。185人のメニエール病患者さんと年齢および性が合致する地域住民の方を比較した研究では、メニエール病の方々には“仕事熱心で自分をおさえる傾向”や“気晴らしが苦手でイライラしやすい傾向”があることがわかりました」。

以下は、メニエール病にかかりやすい方の性格的特徴です。当てはまるものがないか、チェックしてみましょう!

性格チェック!メニエール病にかかりやすい人とは?

  1. 負けず嫌いで怒りっぽく、イライラしやすい
  2. 物事に熱中しやすく、徹底的にこなさないと気がすまない
  3. 何もしないとかえって落ちつかない
  4. 嫌なことでも我慢する
  5. 周囲の期待に沿うように努める

いかがでしょうか?
多くの項目が当てはまる場合は、性格的にメニエール病の発症リスクがあるといえるそう。

上記のリストから見えてくる性格は、几帳面でまじめ、遊び下手であり、我慢強くて人の期待にこたえようと努力するタイプといえます。職場では、評判の良い人物として通っていることが多いはず。

環境要因によってもメニエール病になるリスクが高まる

性格だけでなく環境要因も重要で、多忙で不規則な生活を送っていたり、育児や介護、家庭内不和など、生活の中で奉仕や我慢を強いられている方は、リスクが高まるそうです。

さらに、メニエール病患者さんは内向的な性格で外にストレスを発散するのが苦手な場合が多く、“ストレスを受けると自分の身体を傷つけて、心のバランスをとろうとする側面”があるといいます。

「ストレスの標的が消化器であれば過敏性腸症候群などを引き起こし、循環器であれば不整脈や狭心症、脳であれば鬱や適応障害を引き起こします。皮膚に向かうと脱毛疾患になりますね。

メニエール病は、内耳がストレスの標的となった結果です」。

内リンパ水腫を繰り返し症状が固定化する

「仕組みは未解明ですが、ストレスによって内耳の恒常性が失われると耳に水が溜まり、内リンパ水腫となります。

一度この状態になると、次にストレスを受けた際も同じ回路が刺激されて内リンパ水腫を繰り返しながら進行し、最終的に溜まった水による圧迫の影響で、耳閉感や難聴が固定していくのです」と高橋先生。

「メニエール病」の最大の敵・ストレスに向き合う

メニエール病は、どの年齢や性別にもみられますが、特に30~50代の女性の発症が多いそう(男性の1.4倍)。

ちょうどこの時期は、仕事や育児、介護などに追われる人生の中で最も忙しい時期。

対策としては、何が有効でしょうか?

「投薬での治療は、効果が期待できない場合も多いのが事実です。

ですから、生活の中で工夫をしていくのがよいでしょう。たとえば、睡眠の質を上げたり、仕事や家事を上手に手抜きをすることでしょうか。

具体的には、効果の立証されている有酸素運動をおすすめします。睡眠の質を上げるためにも、身体を疲れさせるのは有効です」と高橋先生。

有酸素運動で「睡眠の質」「代謝」をよくしよう

できれば、毎日1時間以上、ウォーキングなどで脈が110~120前後になるまで身体を動かすのがおすすめ。

機器を装着しなくても、心臓がトトトトッと早く鼓動するぐらいを目安にすればOK。休まず1時間以上動くのが理想です。

有酸素運動のための時間の確保は大変ですが、続けることで運動をしてないときにも心臓の拍出量が増え、血流が増します。

その結果、臓器の代謝が活発になり、落ちている身体の恒常性が回復していくのだそう。

有酸素運動で「めまい」「耳のつまり」などの症状が軽減されることも

有酸素運動は、メニエール病の再発や進行の予防だけでなく、早期の患者さんでは症状がかなり良くなる場合も。

急速にめまいが消失し、難聴が進行した例でも耳のつまり感が解消、耳鳴も軽減・消失することが多いようです。

ちなみに有酸素運動は、速歩やランニング、水泳でもよいですし、エアロバイクやランニングマシンを利用したり、エアロビクスに参加するのもよし。自分にとって挑戦しやすいものがおすすめです。

なお、有酸素運動の際は水分補給を徹底し、無理のない範囲で行いましょう。水分は吸収されやすいスポーツドリンクもおすすめ。夏場など天候条件が厳しい環境下では、屋内でできる有酸素運動に切り替えましょう。ご自身の体調にあわせて無理のない範囲で行いましょう。

「ストレス源の軽減や解消はもちろんですが、ご自身の症状や生活環境を親身に聞いてくれるドクターを探すことも大切です。

通院しても良くならない場合は、1か所のクリニックや病院だけでなく経験豊富な専門医のセカンドオピニオンをおすすめします。
あなた自身に寄り添ってくれる良いお医者さんを探していきましょう!」。

監修:高橋 正紘(たかはし まさひろ)

横浜中央クリニック「めまいメニエール病センター」センター長。元東海大学医学部教授。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学付属病院耳鼻咽喉科に入局。ベイラー医科大学(米・ヒューストン)を経て、東京女子医科大学、慶應義塾大学医学部、山口大学医学部、東海大学医学部で教鞭をとる。厚労省難治性疾患克服研究事業・前庭機能異常調査研究班主任などで研究に従事すると同時に、横浜市にメニエール病を中心とした診療を行う「めまいメニエール病センター」を開設。全国から訪れる患者の診療にあたっている。著書に「薬も手術もいらない めまい・メニエール病治療」(角川SSC新書)がある。

2022年2月1日 健康

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