ラップ1枚ほどの薄さ。肌の美を守る「角層」の大切さ

ラップ1枚ほどの薄さ。肌の美を守る「角層」の大切さ。花王スキンケア研究員×パナソニック スキンケア研究員 ラップ1枚ほどの薄さ。肌の美を守る「角層」の大切さ。花王スキンケア研究員×パナソニック スキンケア研究員

花王 スキンケア研究員
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パナソニック スキンケア研究員
<前編>

プロフィール

蘇木佳彦(そのき よしひこ)さん

花王 スキンケア研究所で、スキンケアの基盤技術開発からソフィーナなどの商品開発まで手がける。角層細胞内にあるタンパク質・ケラチン線維を分散させることによる保水技術を開発。自身の仕事を〝外観美と小さな幸せの提供〟と捉え、外観美によって内面に自信や強さが備わった姿を美しいと感じている。

蘇木佳彦さん

春日井秀紀(かすがい ひでき)

パナソニック フェイスボディケア技術開発課で、新規技術開発の責任者としてメンバーと共に推進している。主に通電技術と光技術を用いて、さまざまな美容悩みに対応する技術を開発している。美しくありたいという思いと、それに対する努力のバランスがとれた姿を美しいと感じている。

春日井秀紀さん

【取材した人】

大塚真里(おおつか まり)さん

エディター。出版社で女性誌の編集を務めた後、独立。雑誌や書籍の編集・執筆、広告を中心に活動。美容はスキンケア・メイク・ボディ・フレグランスとオールマイティに。インタビューや料理ページも手がける。

角層にこだわるという共通点

大塚:
本記事はPanasonic Beauty Laboratoryのスペシャル版として、パナソニック社外の研究員の方にお越しいただきました。花王の蘇木佳彦さんです。パナソニックからは春日井秀紀さん、どうぞよろしくお願いいたします。

蘇木:
今日はいろいろお話を伺いたいのですが、まずはこの対談が企画されたきっかけを教えてください。

春日井:
パナソニックでは肌の美しさにおける角層の役割に着目し、角層にアプローチする美顔器を複数開発しています。同じように角層の重要性を世に発信し、長年にわたり研究を重ねておられる花王の研究員さんと、このような機会をもてたらと思っていました。

蘇木:
なるほど、角層つながりですね。角層にアプローチする美顔器というと、どんなものがあるのですか?

対談の様子 蘇木佳彦さん 対談の様子 蘇木佳彦さん

春日井:
一般的にはスチーマーが知られていますが、美容成分の角層への浸透を促すものや、くすみの原因となる古い角質を剥がしやすくするものなどがあります。

蘇木:
化粧品にも同じ機能を備えたものがありますが、機器によるアプローチは大変興味深いです。

角層が美肌のカギである理由とは?

大塚:
肌は表面の「表皮」と、その奥の「真皮」に分かれており、両社が大切にしている角層とは、表皮の中でも肌の最表面にあたる部分ですね。一般的に食品ラップ1枚程度の薄さであるとされますが、この部分が美肌においてなぜ重要なのでしょうか。

画像;角層のイメージ 画像提供:花王ビューティリサーチ&クリエーションセンター 画像;角層のイメージ 画像提供:花王ビューティリサーチ&クリエーションセンター

蘇木:
まず、角層は肌の最外層にあって、人の目に映る外観そのものですから、すこやかで美しい角層が、きれいな肌という印象に直結します。そしてサイエンスの観点では、肌の保湿やバリア機能といったさまざまな機能を角層が担っています。

春日井:
そうですね。角層には外敵から守るバリア機能や、有益な美容成分の吸収機能などがありますね。

対談の様子 春日井秀紀さん 対談の様子 春日井秀紀さん

蘇木:
おっしゃる通りです。さらに、肌の内部の状態にも関連しています。例えば、角層のバリア機能が低下すると、肌に炎症が起きるなど内側にも悪影響を与えます。

春日井:
外見的にも機能的にも、肌の最後の砦というような存在ですね。

角層に美容成分を浸透させる技術

大塚:
すこやかで美しい角層は、どうしたら作れるのでしょうか?

蘇木:
最も重要なのがバリア機能です。角層は「角層細胞」と、その隙間をセメントのように埋める「細胞間脂質」で構成されています。さらに細胞間脂質を詳しく見ると、セラミドなどが規則正しく並び、水分をサンドイッチ状に抱え込んでいます。このセラミドを整列させることが、すこやかな角層作りには欠かせません。

画像;角層のイメージ 画像提供:花王ビューティリサーチ&クリエーションセンター 画像;角層のイメージ 画像提供:花王ビューティリサーチ&クリエーションセンター

大塚:
セラミドをスキンケアで与えるだけではダメなのですか?

蘇木:
ただセラミドの量が多いだけではなく、整列させ、構造を密にすることが大切です。花王ではそのための研究をさまざまに行っております。新しい技術や発見はニュースリリースで発信しています。また、その技術を花王スキンケア商品へ活用しています。

対談の様子 蘇木佳彦さん 対談の様子 蘇木佳彦さん

春日井:
細胞間脂質を密にして角層のバリア機能を保つことは最重要ですが、一方で、美肌のためには角層に有益な美容成分を取り込むことも大切です。

大塚:
異物を侵入させない高いバリア機能を保ちながら、美容成分だけを角層まで浸透させる…それは両立するのでしょうか?

春日井:
大きな分子の美容成分は、手塗りでは角層まで浸透させるのが難しいですね。私たちは美顔器の力で角層を一時的に緩めて、美容成分を浸透させる技術を開発しました。

蘇木:
どのようなメカニズムでしょうか?

春日井:
まず、角層に高電位パルスを作用させて、整列した角層のラメラ構造に一時的に美容成分の通り道を作ります。これにより、ヒアルロン酸やコラーゲンなど分子の大きい保湿成分が角層まで浸透しやすくなります。通り道は数分たてば元通りになるので、バリア機能に影響を与えることはありません。通り道を作った後に、イオンの力で浸透ケアを行います。美容成分はもともとプラスやマイナスの極性をもっています。たとえばビタミンCはマイナスの極性をもっているので、微弱なマイナスの電流を流すことで反発して角層に引き込まれていきます。

対談の様子 春日井秀紀さん 対談の様子 春日井秀紀さん

大塚:
そのような美顔器の技術と花王のスキンケア製品を組み合わせたら、すごくよさそうです。

蘇木:
一時的な緩みで角層への浸透を促すというのは非常に魅力的だなと思いました! 化粧品においては、細胞間脂質となじみの良い油分を配合したり、花王においては、セラミド機能成分を角層に効率的に届けるために、ラメラ構造を保ちながら微細乳化分散する技術を開発しています。

――対談は<後編>へと続きます。ぜひご覧ください。