美肌へと導く角層ケアの可能性は、無限大


花王 スキンケア研究員
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パナソニック スキンケア研究員
<後編>
プロフィール
蘇木佳彦(そのき よしひこ)さん
花王 スキンケア研究所で、スキンケアの基盤技術開発からソフィーナなどの商品開発まで手がける。角層細胞内にあるタンパク質・ケラチン線維を分散させることによる保水技術を開発。自身の仕事を〝外観美と小さな幸せの提供〟と捉え、外観美によって内面に自信や強さが備わった姿を美しいと感じている。

春日井秀紀(かすがい ひでき)
パナソニック フェイスボディケア技術開発課で、新規技術開発の責任者としてメンバーと共に推進している。主に通電技術と光技術を用いて、さまざまな美容悩みに対応する技術を開発している。美しくありたいという思いと、それに対する努力のバランスがとれた姿を美しいと感じている。

【取材した人】
大塚真里(おおつか まり)さん
エディター。出版社で女性誌の編集を務めた後、独立。雑誌や書籍の編集・執筆、広告を中心に活動。美容はスキンケア・メイク・ボディ・フレグランスとオールマイティに。インタビューや料理ページも手がける。
ピーリングは肌に良い? 悪い?
大塚:
角層に美容成分を浸透させる技術について、一般的には「古い角質を取り去って浸透を促す」という手法もよく知られていると思います。いわゆるピーリング。
春日井:
角層の層数は一般的に10〜20ほどで、個人差があります。この層に美容成分を浸透させるわけなのですが、層が薄ければいいというものではありません。いきすぎたピーリングでむやみに剥がしてしまうと、バリア機能の低下につながります。ただ、角層のターンオーバーが乱れて層が整列していない場合は、ゴワつきなどにつながるので、適度にオフしてしっかり保湿し、きれいに整列した角層を育むといいですね。


蘇木:
角層細胞は死んだ細胞であるため中央の「核」がないのが本来の姿なのですが、ピーリングをしすぎたり、頻繁に洗顔したりしてターンオーバーが乱れると、角化が不十分で核を残した「有核細胞」ができてしまいます。
春日井:
意外と男性に多い現象です。男性の中には毎日のように髭を剃る方も多いと思いますが、そのとき、肌表面の角層も少し剥いでしまいます。さらに、洗顔も乱雑だったり、夏場は1日に何度も洗顔したりする方もいるので、角層の状態が悪くなりやすいのです。
蘇木:
私も製品のテストで1日に何度も洗顔と保湿ケアを行うと、肌がテカテカしてくることもあります。適度に落としてしっかり保湿する、これが最も大事ですね。
美顔器と化粧品、広がる角層へのアプローチ
大塚:
ほかに研究されている角層へのアプローチがあればお教えください。
春日井:
パナソニックではムダ毛ケアの美容機器を研究しています。毛根のメラニン色素に光を照射して脱毛効果を得る「キセノンフラッシュ」という技術を参考にし、赤色LEDと組み合わせ、メラニンの蓄積した角層にアプローチする技術を開発しました。肌に照射すると、メラニンを含む古い角質が剥がれやすくなるというものです。
蘇木:
日焼けや紫外線による角質くすみが気になるときにうれしいですね。色に反応する光によってメラニンが蓄積した角層にアプローチするという点が、美容機器ならではの魅力だなと感じます。


春日井:
LEDは、波長や出力、照射時間のコントロールで様々な可能性が広がる分野です。このLEDを使って、角層ケアの最適解が導き出せないかという研究も行っています。
蘇木:
花王では、塗膜(注:化粧品を塗ったときにできる膜)技術の開発にも力を入れています。例えば、単に肌に水分を留める閉塞膜としてだけではなく、適度な透湿性を持つ機能膜を使うことで、明るい肌へと導くことが出来ます。また、肌上でも柔軟で均一な物性を持つ塗膜を用いることで、自然で美しい外観を演出します。塗膜で美しい角層を演出し、日々使い続けることで角層そのものの状態が良くなる。即時と継続、両方の効果を実現することに、化粧品の役割があると感じています。
両社の共通点は、高い安全性と効果の両立
大塚:
美肌への夢が広がるたくさんのお話をありがとうございました。それでは最後に、両社にそれぞれ期待されることを教えてください。
春日井:
角層にとどまらず肌の基礎研究を発信されている花王のプレスリリースは、いつも拝見しています。私たちは機器のメーカーなので、機器の視点で肌を捉えていますが、スキンケア視点での研究成果は非常に参考になり、刺激を受けています。
蘇木:
ありがとうございます。
春日井:
美容成分の浸透においては、蘇木さんがおっしゃっていた細胞間脂質になじむ油分を配合したり、美容成分を含む油分を微細化する技術などで、化粧品自体の浸透力が上がってきていると感じます。それに対して、美顔器でさらに美容効果をサポートすることができないか、など考えていますね。
蘇木:
とてもおもしろいですね。美容機器を生活のルーティンに組み込むのは、美容好きな人にとってはすごく楽しいものですが、そうでないとややハードルが高いと感じるかもしれません。でも、常にお客様視点でものづくりをしているパナソニックなら、生活に自然と溶け込むような美容機器を作っていただけるのではと。期待しています。


春日井:
高い安全性と、効果の両立。両社の求める製品基準は、とても近しいところにあると思います。高いハードルを乗り越える私たちの製品がコラボレーションできる日が来るといいですね。


蘇木:
はい、楽しみにしています。