ライカレンズ × 写真家 連載企画 Vol.3
12mm(24mm相当)/絞り優先AE(F5.6、 1/125秒、-0.3EV)/ ISO 200/ WB:晴天
沖縄県で一番の落差を誇るピナイサーラの滝。今から15年前、初の西表島訪問で最初の撮影地に選んだ場所だ。岩壁や木々が周辺部までしっかりと描写され広角端における画質の高さが分かる
デジタルカメラマガジンで掲載された誌面を再構成しています
深澤 武
1974年、埼玉県生まれ。東京理科大学工学部電気工学科卒。ドラマ「ちゅらさん」がきっかけで八重山を訪れ、以来10数年間通い続ける。「黒潮に育まれた生命」をテーマに風景や生き物たちを追い続けている
【沖縄県/八重山諸島】
自然風景から生態系へと被写体の幅が大きく広がるきっかけとなった場所が八重山諸島だ。3年前には写真集を出版し、地元の新聞社にも取材された。八重山諸島の主島・石垣島から各離島への船が出ており、お気に入りの島へと向かうことができる
亜熱帯の風景に息づく生き物生態系を丸ごと捉えていく
2002年に写真展「北アルプス白馬・大地の鼓動」を開催した後、新たなテーマを探しているときに八重山を訪れた。NHKドラマ「ちゅらさん」のオープニングを見て、青い海とそこに浮かぶ島々に魅了されたのがきっかけだ。初めはサンゴの海やマングローブ、亜熱帯の森など、内地では見られない風景に出合えるだけで新鮮に感じた。次第にホタルやアカショウビン、サキシマキノボリトカゲなど、そこに息づく生き物ちにも興味が湧くようになり、観察すればするほど見えてくる奥深さを八重山の島々が持っていることに気付かされた。「風景」から一歩踏み込み「生態」を写真で捉えていくきっかけになったのが八重山の地だ。
13mm(26mm相当)/絞り優先AE(F5.6、 1/500秒、±0EV)/ ISO 200/ WB:晴天
変化に富んだ海色をしたゲンゾウの浜。白い雲が浮かぶ夏空が広がり、夏の日差しが海を照らす。レンズの高コントラストな描写特性により、鮮やかな海色をくっきりと描き出すことができた
60mm(120mm相当)/絞り優先AE(F4、1/800秒、±0EV)/ ISO 200/ WB:晴天
岩場を駆け回るカニをモチーフにローポジションから夕日をバックに撮影。フレアやゴーストは発生せず、逆光耐性の高さが伺える。防塵・防滴なので地面に近接する撮影でも心強い
昨年の夏以来、約1年ぶりに西表島を訪れた。過去をなぞるのではなく新しい発見や視点を見つけて撮影したいと思っていた。あらためて感じたのは西表島の生き物の濃さ。道路を車で走っていても、ちょっと森に入るだけでも生き物の気配がする。
24~120mm相当の焦点距離を持つこのレンズは、まさに生態系を捉えていくのにぴったりだった。広角端で引き気味のポジションなら彼らの生活環境を隅々まで描写できるし、望遠端でぐっと近寄ればその姿をアップにして精緻に写し出すことができる。最短撮影距離も20~24cmと短いため、ワイドからマクロ的な視点まで一気に切り替え可能だ。とっさの出合いでもLUMIX G9 PROとの組み合わせならDual I.S.2の効果で望遠端まで手ブレ補正が効き、手持ちで素早く被写体に迫れる。
60mm(120mm相当)/絞り優先AE(F4、1/120秒、±0EV)/ ISO 1600/ WB:晴天
高い近接性能を生かし、レンズが触れるくらいにサキシマキノボリトカゲに近づく。微細なうろこ模様のシャープさと背景の豊かなボケが美しい。1本でマクロ域までこなせる万能レンズだ。
最終日の朝、フィリピン近海にできた熱帯低気圧の影響か、ゾクゾクするような朝焼けに出合えた。何の修正を加えなくてもメリハリのある鮮やかな朝焼けを捉えられるところに、LEICAレンズとしての底力を感じる。目で見たありのままの感動を伝えるのに誇張のない焦点距離とクリアな描写が欠かせない。自然の演出に身を任せ、創造者への畏敬の念を持ってシャッターを切る。ネイチャーフォトの醍醐味をあらためて実感させてくれるレンズだった。
17mm(34mm相当)/絞り優先AE(F5.6、1/3秒、±0EV)/ISO 200/ WB:晴天
日の出2時間前は雷が鳴っていたが、日の出30分前には晴れ間も見えてきて、劇的な朝焼けに出合えた。抜けの良いクリアなレンズ描写が生きて、鮮やかな朝焼けを捉えられた
使用機材
DC-G9
カニやトカゲといった小さな生き物、サガリバナの落花など、地面近くの被写体を狙うのに小型・軽量のカメラとレンズ、可動式モニターの組み合わせが使いやすい。近距離でも迷うことなくAFが効いて素早く撮影できる。
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.
広角の24mm相当から中望遠域の120mm相当まで使用頻度の高い焦点域をカバーしている。ゴーストにも強く、南国の強い日差しを生かした光条表現も美しい。最短撮影距離が広角端で20cm、望遠端で24cmと短く、レンズ先端すぐそこまで被写体に迫り、小さな花や生き物をアップで撮影できる。