ライカレンズ × 写真家 連載企画 Vol.5

200mm(400mm相当)/プログラムAE(F5、1/2,500秒、±0EV)/ ISO 1600/ WB:オート
子育て中の雷鳥は餌を求めてひたすら移動を繰り返す。岩や草がほとんどで色彩に欠ける場面が多い中、赤の差し色が入った瞬間に撮影。AF駆動が素早く心強い

高橋 広平

1977年、北海道生まれ。第4回田淵行男賞・岳人賞受賞。雷鳥写真家。現在、年12カ月フルシーズンで雷鳥を調査・撮影している唯一の写真家。富士フォトサロン東京をはじめ展示・講演多数。SSP日本自然科学写真協会会員

【源流/長野県中部山岳国立公園】
雷鳥と初めて出合った場所で、世界有数の山岳景観と希少野生動植物を 誇る地域だ。写真のみならず文章でもその魅力を伝えたいと考え、自作 の万年筆を走らせて発表を続けている場所だ

高山を懸命に生きる雷鳥その愛おしさを伝えたい

彼らに一目惚れした理由をよく聞かれる。その問いには「簡単に理由を付けられないくらい好きなので答えようがない」と返す。2006年に登山を始めて、翌年に雷鳥に出合ったことをきっかけに独学で写真を始めた。それを機に人生がすさまじく流れはじめ、気が付けば雷鳥の撮影と作品の発表を中心とした生活になっていた。今回訪れた北アルプス南部は、私が初めて雷鳥に出合った地だ。撮影テーマが「雷鳥とその生態系」とより発展した現在も、高山蝶を含む動植物が多く生息しているこの地にはしばしば足を運んでいる。

200mm(400mm相当)/プログラムAE(F8、1/400秒、±0EV)/ISO 1600/ WB:オート
子守り中の母鳥とヒナたち。セオリー通りに彼女たちの目にピントを合わせると、奥行きを感じる程よい被写界深度の中に、雷鳥の羽毛の質感が豊かに浮かび上がり愛おしさを感じる1枚となった

国の特別天然記念物で絶滅危惧種の「ニホンライチョウ」だが、地球上の他の雷鳥と比較して唯一「人を見ても逃げない」という特徴を持つ。これは日本の山岳文化において「神の鳥」という扱いを受けていたことに起因し、古くから人が彼らに対して危害を加えていなかったからだと考えられている。しかし、彼らにもパーソナルエリアが存在し、むやみに近づいて良いわけではない。ある程度の距離を保つことが望ましいし、何より彼らを嫌がらせたくない。

今回使用したLEICA DG ELMARIT 200mm / F2.8 / POWER O.I.S.は、通常400mm相当、2倍のテレコンバーターを使うと800mm相当を誇る超望遠単焦点レンズ。有識者から“ライチョウスナイパー”の異名を拝命した者としては、ちょうど良い業物だ。この手のレンズは一般的に大きく扱いづらいが、マイクロフォーサーズかつミラーレス機に最適化された本レンズは小型・軽量で、身軽に行動したい山岳での撮影を非常に快適なものにしてくれた。

200mm(400mm相当)/プログラムAE(F5、1/2,500秒、±0EV)/ISO 1600/ WB:オート
小高い所から様子を見渡す母鳥。望遠での撮影だが周りの景観も写し込むべく入念にポジションを決める。本体も含め非常に小型軽量のため、構図の調整も自由自在だ

単焦点レンズは画質と引き換えにさまざまな制約を受けるが、本レンズは最短撮影距離が短いため自由に構図を決めやすく、適切な距離感で雷鳥と向き合える。LUMIX G9 PROと組み合わせれば、高速AFと6.5段の手ブレ補正で飛翔する高山蝶までこの1本で迫れる。

400mm(800mm相当)/プログラムAE(F8、1/8,000秒、±0EV)/ISO 1600/ WB:オート/ DMW-TC20使用
高山蝶オオイチモンジ、吸蜜の図。蜜と言えども彼らは主に汗や糞尿を好むので悪しからず。2倍テレコンバーターにも対応し、神経質な被写体に800mm相当で迫れる

使用機材

DC-G9

脅威的なA F速度と手ブレ補正能力。どうしても外せない場面で活躍する6Kプリ連写。超望遠レンズ使用時に助かるピンポイントAFへの切り替えやすさなど一刻を争うシーンで心強い

LEICA DG ELMARIT 200mm / F2.8 / POWER O.I.S.

単焦点ならではの切れ味とボケ、さらにF2.8の明るさとマイクロフォーサーズに基づく小ささと軽さが手持ち撮影の快適さを支えてくれる。付属の1.4倍テレコンバーターにより、被写体に不自由なく接することも可能だ。最短撮影距離も短く、望遠マクロ撮影においても強みを発揮する。

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