台風被害にも気を付けたい、エアコンのトラブル&対応策
台風時のエアコンのトラブル対応と注意点についての監修:田中 真紀子(たなか まきこ)
ライター:UP LIFE編集部
2020年10月13日
空気
残暑はもちろん、長雨時の湿度対策など、秋を迎えても活躍してくれるエアコン。ついつい頼ってしまいがちですが、この季節、気を付けたいのが台風によるトラブルです。暴風雨でも室外機は大丈夫? 万が一の停電時はどうすればいい? そんな疑問を解消できる対応策や使用時の注意点を、家電に精通する田中真紀子さんに聞きました。
台風によるエアコントラブルはよくある? そもそも使っていても大丈夫?
たびたび台風に見舞われる、秋の日本列島。近年は勢力の強いものが上陸するケースも増えつつあり、大きな被害をもたらしています。田中さんによれば「この時期は、エアコントラブルにも注意が必要」なのだとか。
「ある家電修理サービス業の方によると、台風シーズンはエアコンのトラブルによる出動回数も増えているそうです。暴風雨にさらされれば、室外機は大きなダメージを負うこともあるもの。たとえば、強風によってファンが割れた、といったトラブルも報告されています」
こうしたことを考慮しても、「台風の接近時には、エアコンの使用をできるだけ避けた方がいい」と田中さん。
「なぜなら、エアコン運転中で回転しているファンに強い風が当たれば高い負荷がかかり、より破損しやすくなるからです。もちろん、使用していなくても破損することはありますが、使わない方が安心できるはず。ただし、気温が高ければ熱中症のリスクもあるので、状況を見ながら判断してください」
強風がもたらすエアコントラブルは、室外機のファン破損以外にもさまざま。
「たとえば室外機の位置をずらしたり、ひどいときには転倒させたりといったこともあります。また、横殴りの雨で室外機に水が浸入するほか、豪雨で水没してしまうことも。このほか、異音が聞こえる、ドレンホースが詰まるといったことも見受けられるので、エアコンの様子がいつもとは違うようなら注意したいですね。また、エアコンは室外機と室内機で構成されている家電 。室外機にトラブルが発生しているのに使用を続けると、室内機にまで影響を及ぼすことがあるので使わないようにしてください」
強風による室外機の位置ずれや転倒は、どう対処したらいい?
続いては、台風による具体的なエアコントラブルと対処法について、もう少し詳しく見ていきましょう。まずは室外機の位置ずれと転倒から。
「近年は想定外の規模の台風が発生しており、室外機の位置ずれや転倒は珍しいことではなくなってきています。位置がずれただけでも、室内機とつながる配管が割れたり外れたりすることがあるので、一見して異常が見られなくてもそのまま使うのは避けましょう」
もちろん、自分で位置を戻そうとするのもNGだとか。
「下手に動かそうとしたことで配管に負荷がかかり、破損してしまうと中を通る冷媒ガスが漏れてしまう可能性があります。冷媒ガスはマイナス温度になっている場合があり、触れると凍傷になることも。また、漏電などのリスクがあるほか、室外機自体も重量があって危ないので、自分で動かそうとせずにメーカーや修理業者に相談してください。同じように転倒時も、自分で起こしたりせずにプロを頼りましょう」
では、室外機の位置ずれや転倒を防ぐ方法はあるのでしょうか?
「設置する土台をコンクリート製など重量のあるものにする、防振マットや転倒防止用の金具を使用するといったことが挙げられます。エアコンを新規で設置する場合は取り付け業者と相談し、できるだけ風の影響を受けにくい場所に室外機を置くようにしてください」
豪雨による浸水・水没から室内機を守るためにできること
「室外機は水の侵入を防ぐ構造となっていますが、横殴りの強い雨ともなれば浸水の恐れがあります」と、田中さん。また、河川の堤防が決壊するなどで洪水が発生すれば、室外機が水没してしまうこともあるでしょう。ご自宅の洪水リスクについては今一度、ハザードマップなどで確認しておきましょう。
「室外機内部への浸水は、漏電につながります。台風時などにエアコンを使っていて、ブレーカーが落ちた場合は漏電のサイン。こうした異常が見られたにも関わらずそのまま使用を続けると、室内機まで故障させることになりかねません。また、水没した場合は、水だけでなく泥のように微細な異物も内部に入り込み、サビが発生しやすくなるなどで劣化を早めることも。どちらにしても安全に動作しない可能性が高いので、必ずメーカーや修理業者に相談してください」
そんな浸水や漏電に備えるなら?
「浸水に対しては市販の室外機用カバーを使うことで、ある程度防ぐことができます。当然ながら、カバーを掛けたときはエアコンの使用を避けましょう。また、土のうで室外機を囲んでおくと、水没のリスクを抑えることができますよ」
カラカラ、ポコポコ…。エアコンから異音がするときは?
一見、異常がないのにエアコンから異音が聞こえる……なんてことも、台風の際には起こりがち。これもやはり、どこかが故障しているのでしょうか?
「室外機から“カラカラ”“カタカタ”といった音がする場合は、強風でファンが割れていたり、ゆがんでいたりする可能性があります。このほか、内部にゴミが入り込んでいる場合もありますが、いずれにせよプロに相談しましょう」
一方、台風が原因の室内機からの異音でありがちなのが、“ポコポコ”という音。
「室外へ排水するドレンホースに風圧で入り込んだ空気が、室内機のドレンパンを通過するときに“ポコポコ”という音が聞こえることがあります。この場合は、外気の進入を防ぐバルブを取り付けると解消可能。また、ドレンホースが詰まっていて排水がスムーズにできていない場合にも発生します。故障ではありませんが、ドレンホースの詰まりは水漏れなどを引き起こすため、定期的に掃除するようにしましょう」
台風が原因で停電に! エアコンに悪影響はあるの?
強風や土砂崩れなどで電力設備が損傷すると、停電が発生します。もしエアコンの動作中に停電が起きた場合、エアコンには良くない影響があるのでしょうか?
「動作中に電気が供給されなくなっても、大きな問題はありません。ただし、機種によっては電力復旧時に運転が再開に伴って過電状態となり、負荷がかかることで故障してしまう場合があります。停電が発生したら電源プラグを抜いておくと安心。エアコン専用のブレーカーがある場合は、こちらも切っておきましょう」
そうやって停電を何とかやり過ごしたら、復旧時に動作確認をしておくと安心だとか。
「電源のオンオフなどの基本操作をひと通り行い、問題がないかチェックを。また、機種によってはタイマーやWi-Fiといった設定がリセットされるので、合わせて確認するようにしましょう」
では、停電が長引いたときに、家庭用の発電機でエアコンを作動させても良いでしょうか?
「基本的にはNGです。エアコンは消費電力が大きく電圧も高いため、かなり大容量の発電機が必要になるもの。たとえ電圧200Vのエアコンに対応した発電機であっても、故障の原因となることがあるので、オススメできません」
エアコンを選ぶときは、室外機の性能にも注目を!
台風による室外機のトラブルを多々ご紹介しましたが、決して室外機がもろいわけではありません。メーカーは過酷な環境を想定した品質試験を行っているため、むしろかなり堅牢なものと言えるでしょう。
たとえばパナソニックの場合、大雨警報レベルの豪雨の約40倍もの水量を注水するテストや、台風並みの強風時を再現したテストなどを行い、その環境でも正常に運転し続けることが確認されています。
※室外機の吸い込み温度です。
「室内機と室外機、どちらが欠けてもエアコンは働くことができません。特に室外機はエアコンの心臓部と言えるので、どんな環境でも動作することを目指したものだと心強いですね。エアコンを選ぶときはつい室内機に目が行きがちですが、実は室外機もめざましく進化しているもの。快適なだけではなく安心もついてくるので、室外機の性能もぜひチェックしてください」
台風時のエアコンのトラブル対応と注意点についての監修
田中 真紀子(たなか まきこ)
白物家電をはじめ生活雑貨、家事、住まいなど、暮らしにまつわるモノ・コトの取材・執筆を行うフリーライター。美容家電も得意分野で、働く女性として、一児の母として、忙しくてもきれいになれる美容家電を見つけ、各媒体でも紹介している。総合情報サイト『All About』白物・美容家電ガイド。
2020年10月13日 空気
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