本当は何度に設定すべき? 夏場の冷房の推奨温度と適温の目安

夏場の冷房の推奨温度と適温の目安についての監修:田中 真紀子(たなか まきこ)
ライター:UP LIFE編集部
2022年7月19日
空気

「夏の冷房は28度に設定しましょう」と、耳にしたことはありませんか? でも、実際に28度で設定したら、「何だか暑い……」ということもありがちです。本当のところ、何度に設定すればいいの? そんな疑問を、家電エキスパートの田中真紀子さんにぶつけてみました。健康的かつ快適に夏を乗り切るために、ぜひ参考にしてください。

「冷房時は28度が目安」と言われるのはなぜ?

写真:エアコンとリモコン

冷房時の設定温度を考えるなら、まず押さえておきたいのは「28度」と言われる理由です。実はこの「28度」は、環境省が目安として推奨する「冷房時の室温」であり、「冷房の設定温度」とは異なるもの。では、なぜ「28度」が目安なのでしょうか?

「室温28度」はクールビズの服装が前提

田中さんによると、この「28度」の背景には、環境省が推進する“クールビズ”があるのだとか。

「28度は、クールビズの一環で提唱している“快適に過ごせる軽装”時の体感に基づいて設定されたもの。室温26度下でスーツを着用しているときの温熱感と、室温28度下でクールビス推奨の軽装時の温熱感がほぼ同じである、という実験結果に基づき、算出されています」

ならば、エアコンの設定温度を28度にすれば、結局、室温28度になるのでは……? そんな考えが浮かびますが、一概にそうとは言えません。この理由には、エアコンを使用している部屋の環境が関わってくるとのこと。また、室温28度にしても、体感温度によっては快適に過ごせないこともあるそうなので、その辺りも田中さんに詳しく聞いてみましょう。

冷房の設定温度=室温にならない理由と対処法

写真:設定温度の目安

「設定温度を28度にしても、必ずしも室温が28度になるとは限りません」と、田中さん。果たしてその理由とは……?

室内の環境によっては室温が下がりにくいことも

「同じ室内でもエアコン気流の循環が悪ければ温度ムラができますし、断熱性が悪い、吹き抜けがある、西日が差し込むといった建物の構造上、室温が下がりにくい場合もあります。28度はあくまで目安ですが、手元に温度計を置いて実際の温度を確認してみるのもいいでしょう」

室温が思うように下がらないときはどうする?

28度に設定しているのに、暑い……。そんなときは、「設定温度を下げるといい」と、田中さん。さらに、「湿度や気流をコントロールすることでも、涼しく感じられる場合があります」と、体感温度を下げる方法も教えてくれました。詳しくは、次項でご紹介しましょう。

体感温度によっても変わる、室温28度の快適さ

写真:日傘をさす女性

先ほどから話題に上る体感温度ですが、そもそもどういうものなのでしょうか?

「暑がり」「寒がり」の違いも体感温度にあった!

「体感温度とは、実際の温度とは異なり、その人が感じている温度のこと。同じ部屋で冷房をつけていても、1人は暑く感じ、1人は寒く感じるのは、体感温度が異なるからです。その体感温度は、気温だけでなく湿度や気流(風速)、日差しなどの熱放射のほか、活動レベルや着衣によって左右されます」

「代謝量」「着衣量」「気温」「熱放射」「風(気流)」「湿度」の6つの要素は温熱指標とも呼ばれます。では、これら6つの要素は、どのように体感温度を左右するのでしょうか?

「“気温”が高くなると、当然ながら暑くなりますよね。また、“湿度”が高いと汗が蒸発しづらくなるため、体表から熱が逃げにくくなって暑く感じるもの。一方で“風”が体に当たると汗が気化し、体表の熱を奪うので涼しく感じられます。“活動レベル”は、人がどう動いたかを表すもの。筋肉を動かすと熱エネルギーが発生するため、たとえば帰宅した直後などには暑く感じますよね。最後の“着衣”は、着ている衣類の量。着込んでいれば体感温度が高くなり、薄着なら低くなります」

室温28度を快適にする、体感温度の調整方法

「先ほども触れましたが、冷房時に暑いと感じたときは除湿機や扇風機を使って、湿度や気流をコントロールするのがオススメ。一例として、気温28度下で、湿度を40%に下げ、毎秒3mの扇風機に当たった場合の体感温度は、約21℃と言われています。扇風機を使わず、エアコンの風量を上げて風に直接当たるのもひとつの手ですが、体の冷え過ぎに注意しましょう」

冷房と除湿なら、どちらで運転させるのがいい?

写真:温度計

湿度を下げることで涼しく感じられるなら、除湿運転でもいいように思えますよね。そこで浮かぶのが、冷房と除湿をどう使い分けるべきか、という疑問。そもそも、このふたつの運転には、どんな違いがあるのでしょうか?

温度と湿度、どちらを優先して下げるかの違い

「実は冷房運転と除湿運転の仕組みは同じ。空気は、温度が下がると空気中に含むことができる水分量が減り、含みきれなかった水分が結露します。冷房運転時にドレンホースから水が出るのが、その結露水。ただし冷房運転は、設定温度まで冷やすことを目標とし、除湿運転は、設定湿度まで湿度を下げることを目標とする点が異なります。

暑いと感じるときは迷わず冷房運転を使うといいですが、まとわりつくような蒸し暑さを感じた場合や、それほど温度が高くないものの、湿度が気になる梅雨などは除湿運転を使うことで不快感が解消されますよ」

暑い夏でも快眠を得られる温度設定のコツは?

写真:眠る子ども

冷房を使うシーズンになると、設定温度と同じように頭を悩ませるのが、睡眠時の冷房。最近は熱帯夜の増加もあって、眠っている間もずっとつけているという人も多いようですが、「寒くて途中で目が覚めてしまう」といったお話も聞こえてきます。

いつも通りの設定温度なのに、寒くて目が覚める理由は?

「冷気には下に溜まる性質があります。一晩中、冷房運転を続けていると徐々に冷気がベッドや布団付近に溜まってしまうため、寒く感じてしまうのです。また、深部体温の変化も関係あると思います。人は入眠すると深部体温が下がっていき、明け方に向けて最も下がるもの。その後、また徐々に上がっていくため、深部体温が下がると設定した室温では寒く感じてしまうのです」

朝までぐっすり眠るには、寝室の温度・湿度のコントロールが大切

寒くて目が覚めると、再び眠りに落ちにくかったり、朝、気持ちよく目覚めたりできないこともありがち。以前の記事でもご紹介したように、睡眠に適した寝室の室温は、1年を通して16~26℃。夏の場合は26℃程度、湿度は50%前後と言われているので、エアコン使用時の参考にしましょう。

寒くて目が覚めるとき、エアコンはどう活用すればいい?

「ひとつは温度を26度〜28度に設定し、タイマーをかけること。入眠時は深部体温を下げたほうがいいのでエアコンをつけておき、寒く感じる時間帯に切れるようにしておくといいでしょう。タイマーの時間は人によって異なると思いますが、3時間を目安に、睡眠リズムに合わせて設定するのがオススメです。

もうひとつは、除湿運転を使うこと。除湿運転は弱冷房と同じで湿度を下げるため、温度を下げすぎずに蒸し暑さを解消してくれます。“明け方は寒いけれど、エアコンを切ると暑い”という人は、除湿運転または冷房除湿運転を使ってみてください」

夏の夜、なかなか眠れない人のためのエアコン活用術

「暑くて寝付けない!」というのも、夏の睡眠にまつわるお悩みです。そんなとき、エアコンを上手に利用するコツはあるのでしょうか?

「布団に入る30分前に、いったん換気をして室内の熱気と湿気を追い出したうえで、冷房運転しておきます。すると室内だけでなく、壁や床に溜まった熱も冷えるため、適温に冷えた状態で入眠しやすくなるもの。このとき、エアコンの送風口は上に向け、天井に溜まった暖気を攪拌するといいでしょう」

朝昼晩、ずっと快適な夏を過ごすために

写真:揺れるカーテン

ここまででご紹介したように、環境や体感温度によって冷房の適切な温度設定は変わるもの。快適に過ごすには、室温28度を目安にしつつ調整する必要があります。もし、うまくコントロールできないというなら、エアコンの自動運転を利用するのもひとつの方法。近年のエアコンはセンサーの性能なども高いため、上手にコントロールしてくれることでしょう。

快眠を求めるなら、寝室用エアコンという選択も

なかなか寝付けなかったり、寒くて明け方に目が覚めたり……。夏の睡眠不足にお悩みの方は、『エオリア スリープ PXシリーズ』 を検討してみるのはいかがでしょうか? こちらは、寝室用モデルとして開発されたエアコン。

大きな特長は、眠っている人の近くに設置する“ベッドサイドセンサー”の採用です。エアコン室内機に搭載されたセンサーとは別に、ベッドサイドにもセンサーを置くことで、より正確に睡眠時の環境を検知することが可能。そして、このセンサーと連動して温度コントロールをきめ細やかに行うのが“快眠環境運転”。眠りはじめは室温を下げて深部体温の低下を促し、朝が近づくと起床に向けて室温を徐々に上げて深部体温の上昇を促すようにエアコンの運転が自動制御され、暑すぎず寒すぎない快適な睡眠環境を整えられます。

また、睡眠を見える化する「Eolia sleepアプリ」を使ってエアコンの運転をアップデートしていくことが可能。起きた後に暑い・寒いの体感をフィードバックできるため、使うたびにユーザー好みの寝室環境へと近付けます。睡眠時間と寝返りの状態を元に、睡眠を100点満点で評価してくれる「おやすみスコア」の機能があったりと、さまざまなアプローチであなたの快眠をサポートします。

『エオリア スリープ』に対する専門家の評価は…?

この『エオリア スリープ PXシリーズ』を、「画期的」と評する田中さん。

「睡眠中は、深部体温や室温の変化に合わせてエアコンの設定温度を変えることができません。そもそもどんな設定がベストなのか、見つけるのは難しく、現状ではタイマーなどを駆使するしかないんです。その点、センサーやアプリが睡眠の状態を検知しながら、自動で快眠に適した運転をしてくれるのは、画期的。睡眠のメカニズムが解明されたからこそ実現した機能だと思います。

また、そもそもエアコンの温度センサーと人が寝ている場所では温度差がありますが、そのセンサーを枕元に持ってきた、というのも目から鱗のアイデア。人の近くの温湿度を検知することで、設定温度と実際の温度の差異を減らすことができます」

そう語る田中さんから、夏の睡眠不足に悩む方へメッセージをいただいたので、最後にご紹介しましょう。

「睡眠中は設定温度がコントロールできないため、タイマーや除湿運転を上手に使ってみましょう。明け方寒くなる人は、薄い布団を一枚用意しておくのもいいと思います。より快適な睡眠環境を求める人は、『エオリア スリープ』の導入を検討してみては。“睡眠負債”という言葉があるように、慢性的な睡眠不足は心身に支障を来しかねないので、睡眠の質を少しでも上げるための投資と考えてもいいかもしれません」

夏場の冷房の推奨温度と適温の目安についての監修

田中 真紀子(たなか まきこ)

田中 真紀子(たなか まきこ)

白物家電、美容家電の専門家兼ライターとして活躍。日々発売される新製品をチェックし、製品の紹介記事やレビュー記事を雑誌、web、新聞などで紹介している。日常的にも話題の新製品を使っており、ライフスタイルに合わせた選び方や、上手な採り入れ方の提案も得意。テレビ出演も多数。総合情報サイト『All About』白物・美容家電ガイド。

2022年7月19日 空気

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