暖房を入れても部屋が寒い原因と、お財布にやさしい防寒対策
暖房の効きが悪くなる原因と対策、防寒対策についての監修:尾間 紫/Yuu
ライター:UP LIFE編集部
2023年3月8日
空気
暖房器具を使っているのに、部屋がなかなか暖まらない……。冬が訪れるたび、そんなお悩みを抱えている方も多いのでは? そこで、暖房の効きが悪くなる原因と対策を、一級建築士でリフォームコンサルタントのYuuさんこと尾間 紫さんに教えてもらいました。節電対策としても役立つので、ぜひご活用ください!
部屋がなかなか暖まらない……原因は家の断熱性能にあった!
家で過ごす時間が増えると、気になるのが室内の快適さ。特に冬は、暖房がなかなか効かないと困ってしまいますよね。実際にYuuさんも、「これまで気付いていなかったけれど、在宅勤務をしていると足が冷えて辛い」「背筋がぞくぞくする」「どこからともなく冷気を感じる」といった声を、よく聞くようになったのだとか。
室内の快適さに大きく影響するものは?
「家の中の寒さの原因は、主に住宅の断熱性能不足にあります。断熱性能とは、簡単に言うとポットの保温性能のようなもので、断熱性能が低い家は外気の影響を受けやすいため、外が寒いと家の中もグッと冷えてしまうことに。しかも、いくら暖房を使っても寒いので、光熱費が高くもなります」
特に築年数が古い家は、断熱性能が低いことが多いそうです。
「古い家の場合、暖房を消すと外の気温と同じくらいまで室温が下がってしまい、朝起きてみたらコップの水に氷が張っていた……なんてケースもあるんですよ。一方、断熱性能の高い家なら、小さなエネルギーで家の中の暖かさを維持しやすいので、快適で省エネ。光熱費も抑えることができます」
時代を反映して見直される住まいの断熱性能
「最近では家を暖かくする重要性が、改めて注目されています」と、Yuuさん。この背景には、前述のとおり在宅時間が長くなったことのほか、「家の中の暖かさと健康に深い関係があるとわかったこと」や、「地球環境の保全や光熱費の高騰から、省エネの重要性が改めて考えられるようになったこと」があるそうです。
「断熱性能が低い家が多い賃貸住宅でも、昨今は断熱性能の高いものを建てようという動きは生まれているんです。冬が暖かい家なら居心地がいいし、光熱費も安くて入居者が付きやすいですから」
暖かい部屋を作りたいなら、窓と床を中心に考える
部屋がいつまでたっても暖まらないと、暖房器具の設定温度を上げたくなるもの。でも、効果的な防寒対策を考えるなら、注目すべきは窓と床なのだそうです。
窓の断熱性能が低いと何が起こる?
Yuuさんによると、家の断熱の弱点は窓にあるのだとか。ある調査によると、1枚ガラスの窓の場合、家から流出する熱の半分以上は開口部から逃げていることがわかっているそうです。
出典:財団法人建築環境・省エネルギー機構「住宅の省エネルギー基準早わかりガイド」
「断熱性能が低い窓ガラスに触れると、冷たくてヒヤッとします。そんな窓に近付くと、とにかく寒い! 冷気の流れを感じることもありますね。以前、大きな窓で眺めの良い素敵なカフェがあったんですが、冬は窓際に座ると寒くていられませんでした。その時期になるとみんな、窓から離れて店の奥に座っているんです。これも窓の断熱性能が低いからですね」
その隙間風、実は窓からやって来た冷気かも!
断熱性が低い窓ガラスが影響を及ぼすのは、窓の周辺だけではありません。Yuuさんによると、床付近まで冷やしてしまう原因となることも多いのだとか。
「室内で暖められた空気は、冷たい窓ガラスに触れて冷やされると、足元に落ちるように流れていきます。冷たい空気は下に、暖かい空気は上に移動することで、対流が起きるんですね。この冷気は床に沿って、室内へと広がっていきます。これが“コールドドラフト現象”と呼ばれるもの。よく、“足元が寒い”“冷たい隙間風を感じる”という声がありますが、これは隙間から入り込んだ冷気ではなく、窓ガラスで冷やされた空気が対流しているケースが多いんです」
このコールドドラフト現象のせいで足元が寒くなったからといって、暖房を強めるのはおすすめできません。
「いくら空気を暖めても、その端から窓ガラスで冷やされますからコールドドラフトは収まりません。結局、足元は寒いまま、顔ばっかりほてって暑いということになりがちなんです。つまり、冬に部屋を暖かくするためには、まずは窓の断熱性能を上げる工夫をすること。そして冷気が足元にたまるのを防ぐため、暖気が部屋中に行き渡るように気流をコントロールすることが大切なのです」
床の断熱性能を高めれば、足元の寒さはさらに軽減
「コールドドラフトだけでなく、床下の断熱不足も足元が冷える一因です。床からも熱は流出するので、断熱材を入れるといったリフォームが効果的。また、床暖房やホットカーペットなど、足元から暖かくする暖房器具を使うのも良いでしょう。ただし、断熱性能が低いままでは、暖めても暖めても熱が流出してしまい、光熱費がかさみます。まずは窓や床下の断熱性能を向上させながら、同時に足元を暖めてあげるように考えることが大事ですね」
窓と床以外のポイントもご紹介! 具体的な防寒対策
部屋が寒い原因を知ったら、実際に防寒対策を施していきましょう。ここでは窓と床を中心とした、具体的な方法をご紹介します。
窓の防寒対策、具体的に何をすればいい?
Yuuさん曰く、「空気はとても優秀な断熱材」。そのため、窓まわりの断熱性能を上げるには、窓の内側に空気層を作ると良いそうです。
「まず、窓にはカーテンを隙間なく掛けること。カーテンと窓の間に空気層ができて、部屋の中を暖かく保ちやすくなります。カーテンは厚手で密に織ったものを選び、“リターン”と呼ばれるサイドを巻き込んだスタイルにするといいですね。コツは空気ができるだけ漏れないようにすること。冷気は下に流れますから、カーテンは床のぎりぎりまで長くしておくのもポイントです。長さを若干調節できるアジャスターフックを利用しても良いでしょう。
このほか、以前もお話したように、ハニカムスクリーンを使ったり、内窓を取り付けたりするのも効果的です。最近は戸建ての窓の交換リフォームでも、外壁の補修なしでできるようになっているので、気になる方は検討してみては?」
手軽なものからリフォームまで、具体的な床の防寒対策
「床にラグやカーペット、コルクマット、ジョイントマットを敷くと足元が暖かく感じられるようになり、寒さが軽減できます。暖かくふわふわとした感触で、温もりを感じさせてくれる点も良いですね。また、ホットカーペットを敷く際は、熱が床下に逃げないように、その下に断熱シートを敷きましょう。電気代の節約にもなるうえに、フローリングを熱から守る効果も期待できます。こたつの場合も同じように、床敷きの下に断熱シートを敷くのがおすすめ。
なお、最近の床暖房リフォームは、意外と手軽な工事で設置できるようになっています。床暖房対応のフローリング材も多いので、好みにあった床材を選べますよ。その際は一緒に床下の断熱工事もしておきましょう」
家全体の断熱性を上げるなら……本格リフォームのポイント
「本格的に断熱リフォームをするなら、窓を中心に、玄関ドアや床下、壁、天井なども対象にしましょう。国や自治体ではさまざまな補助制度を設けているので、検討する際は確認してみてくださいね。ただし、本格的な断熱リフォームには技術が必要となります。断熱は気密、通気、そして換気とセットで考える必要がありますから、断熱工事の経験豊富な事業者に依頼してください」
他にもいろいろ! 寒さを軽減するためにできること
「断熱性能を上げるという点では、壁に対策をするのも良いでしょう。マンションの場合、北向きの部屋はコンクリートの壁から冷えを感じることもあるので、壁にラグを掛けるアイデアも。
このほか、インテリアの工夫でも温かみを感じさせる空間にできます。たとえば、照明の色。色温度が低い黄色やオレンジといった白熱灯の色は、温もりを感じさせてくれます。ちなみに、色温度が高い白や青白い色の照明は、涼しげで夏向き。今どきは色が簡単に切り替えられるLED照明がありますから、季節によって光の色を変えると良いでしょう。インテリアも同じように考えて、クッションやソファカバーなどを暖色系でふわふわとした肌触りのものにすると、温もりを感じる空間づくりができますよ」
さらにYuuさんによると、湿度を上げることも効果的なため、加湿機は必須だとか。これについては、次項で詳しくご紹介しましょう。
できるだけ早く快適にしたい! 効率の良い部屋の暖め方
「効率良く部屋を暖めることができれば、寒い冬を暖かく過ごしながら、地球にもお財布にもやさしい暮らしができるようになります」と、Yuuさん。
寒さの原因を理解して、太陽光も活用しよう
「そのためには、まず寒さの仕組みを知ることです。先ほどもお話しした、窓から流出する熱が多いこと、冷気は足元に流れていって下方に溜まることを理解しておけば、自然と対策が見えてきます。
また、太陽を味方に付けることも大事。日射熱は夏の暑さの主な原因ですが、冬は暖かさの源。太陽が入る時間帯は太陽光をたっぷりと室内に取り込んで、部屋を暖めましょう。たとえば雨戸が付いている家なら、日が差し込んでいる間はカーテンを開けて日射を取り入れ、日が陰ってきたら早めに雨戸を閉めると、暖かさを保ちやすくなります」
部屋の湿度を上げることで体感温度をアップ
「実は室温を上げなくても、湿度が上がると暖かく感じるようになります。湿度は体感温度と大きく関係しており、湿度を上げると暖かさを、下げると涼しさを感じるもの。快適な湿度は50%前後なので、加湿機などを上手に使うと良いでしょう。わが家の場合、冬は洗濯物の部屋干しをしています。ただし注意したいのが過加湿。湿度を上げすぎると結露とカビを促進してしまうので、湿度計を利用するなど、適正な湿度となるように心がけてください」
お部屋を加湿するなら、加湿機能付きの空気清浄機やPanasonicのジアイーノも編集部としてはおすすめです。
エアコンの風向きを調整して温度ムラを解消
「暖かい空気は上に溜まりますから、エアコン暖房の風は下向きが基本です。今どきのエアコンは暖かい空気を上に行かせずに、足元を暖めてくれる機能が付いていたりするんですね。そういった機能を上手に使えば、設定温度を上げ過ぎずに暖かさを感じることができるので、結果、省エネとなり、電気代の節約ができるようになりますよ」
例えばPanasonicのエオリアLXシリーズなら、温風を足元にしっかり送る機能が。しかも暖房しながら加湿もできるので、冬も快適に過ごせそうです。
エアコン+サーキュレーターで効率良く暖める
「以前の記事でもお話ししたように、電気代を節約しつつ部屋を快適に暖めるには、エアコンとサーキュレーターの併用がとても効果的。サーキュレーターはエアコンの斜め対角線上に置き、上向きに風を送ると室内の上にたまった暖気を巡らせることができ、温度ムラを抑えられます」
お財布にも地球にもやさしい防寒対策で、寒い冬を乗り切ろう
「家にいる時間が長くなった今の暮らしでは、住まいの快適度が日々の幸福度を左右するとも言えます。まずは寒さの大きな原因となっている窓をしっかり対策しつつ、エアコンを上手に使ったり、加湿機やサーキュレーターと併用したりして、寒い冬を暖かく過ごしていただきたいですね」
そう語るYuuさんが教えてくれた防寒対策を実践すれば、これまで感じていた部屋の寒さもグッと抑えられるはず。光熱費が上がる一方の昨今、懐の寒さを軽減するためにもぜひ取り入れてください。
この記事で紹介した商品
暖房の効きが悪くなる原因と対策、防寒対策についての監修
尾間 紫/Yuu
多くの現場経験や相談実績を持ち、リフォーム全般に精通する一級建築士。住宅リフォームコンサルタント・住宅リフォームガイド。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱しており、講演・監修・執筆などを通じて本当に満足するリフォームのノウハウを伝えている。総合情報サイト『All About』リフォームガイド。
2023年3月8日 空気
- 記事の内容や商品の情報は掲載当時のものです。掲載時のものから情報が異なることがありますのであらかじめご了承ください。