ZEHとはどんな住宅? 注目が高まる理由と、
いま知っておきたい補助金&家電の話

ZEH住宅に関する監修:Yuu(本名:尾間 紫)
ライター:UP LIFE編集部
2025年12月18日
空気

快適な住まいについて考えるなら、いま知っておきたいのが「ZEH(ゼッチ)」です。これからの新築住宅では主流になるとも言われるZEHとは、どのような家なのでしょうか? 一級建築士のYuuさんこと尾間 紫さんに、ZEHの概要からメリットとデメリット、さらには補助金制度、家電選びのポイントまで解説してもらいました。

ZEH(ゼッチ)とは? 意味と仕組みを簡単に解説

写真:一戸建て家屋の外観

ZEH=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの基本定義

「ZEHとは、“net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)”の略語。具体的には、空調、給湯、照明、換気に使うエネルギー量=一次エネルギー消費量と、太陽光発電などによってつくり出したエネルギー量の差し引きが、実質ゼロになることを目指す住宅を指します」

言うなれば、エネルギー収支がゼロになる家。これには、「高断熱+高効率設備による省エネ+太陽光発電などによる創エネという3つの要素が必要」なのだそう。

イラスト:ZEHの基本定義 空調、給湯、照明、換気に使うエネルギー量=一次エネルギー消費量と、太陽光発電などによってつくり出したエネルギー量の差し引きが、実質ゼロになる

「注目したいのは、ゼロになるのは住宅設備の稼働エネルギーとの収支であって、光熱費ではないということ。あくまでも空調、給湯、照明、換気にかかるエネルギー量が対象で、たとえば冷蔵庫やテレビ、ドライヤーといった家電製品はZEHの評価対象外となります」

省エネ性能や地域事情などで変わるZEHの種類

「ZEHと一口に言っても、地域や立地条件、コスト、補助金の区分といった都合から、種類はさまざま。2025年6月の時点では、エネルギー収支がゼロとなるZEHを基本として、ZEHにほぼ近い性能のNearly ZEH(ニアリー・ゼッチ)、都市部や多雪地域を対象に創エネ設備を不要としたZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド)のほか、先進設備をプラスしたZEH+(ゼッチ・プラス)やNearly ZEH+(ニアリー・ゼッチ・プラス)の5種類があります」

環境政策、光熱費、快適性……。ZEHが注目される理由

写真:飲み物を飲んで休憩している女性のイメージ

近年、注目を集めているというZEH。Yuuさんによると、これにはいくつかの理由があるそうです。

「2050年カーボンニュートラルを目指す国の後押しが大きいです。断熱性能が高く、エネルギー収支ゼロのZEHは、この目標を達成するのにとても有効な手段なんです。実際、ZEHを含めた省エネ性の高い住宅に対する補助金制度も充実していますし、この規模の大きさも注目を集める一因となっています。

また、昨今の電気代高騰も理由のひとつ。光熱費が削減できるZEHは、家計にやさしい住まいとも言えます。さらに、ZEHの優れた断熱性能は快適さにはもちろんのこと、健康面にも大きな影響を及ぼします。住まいの温度と健康の関係は、とても密接。寒い家はヒートショックだけでなく、さまざまな病気につながるというデータも数多く出ています」

ZEHのメリット・デメリットと、導入前に知っておきたいこと

写真:家の模型

ZEHのメリット

「ここまででも触れてきたように、ZEHには光熱費の削減、室温が安定していて快適、健康リスクの軽減、地球環境への貢献といったメリットがあります。あとは、災害時の安心感。これは太陽光発電と蓄電池がある場合ですが、もし、停電しても冷蔵庫やエアコンが使えたり、スマホの充電ができたりします。

また、将来の資産価値という点でも、ZEHにはメリットがあります。これまで、古い家は価値が下がって安くなるという流れでしたが、それだと高性能化の意欲につながりにくい。そこで今、政府が進めつつあるのが、高性能化住宅には中古住宅市場でも高い価格をつけようという仕組みづくりです。今すぐそうなるというわけではありませんが、今後は法整備が加速していくと思います」

ZEHのデメリット

「デメリットとして、まずは初期費用が高いことが挙げられます。ZEHには高性能の断熱材や窓、省エネ設備などが必要ですし、さらには太陽光発電システムや蓄電池まで入れたりすれば、やはり一般の住宅に比べて高くなる傾向にありますね。

また、設計時には一定の制約が生じてきます。たとえば、高い断熱性能を確保するための窓の大きさや位置、あるいは、太陽光発電パネルを効率良く設置するための屋根の形状といったものですね。ただ、これからはZEHが当たり前の時代になっていくので、デメリットと言うほどのことではないかもしれません。

そして住み始めてから必要となるのが、定期的なメンテナンス。これは、太陽光発電システムや給湯器といった創エネ・省エネ設備の性能を維持するためには不可欠なので、費用を準備しておく必要があります」

ZEHに向いている人、向いていない人とは?

「ZEHはエコでお得というだけでなく、暮らしの質を大きく向上させる住まい。光熱費を抑えつつ、家の中を快適にしたい人や、長く安心して住める家が欲しい人に向いていると思います。たとえば、子育て中の人や老後の安心感を重視している人、在宅ワークで家にいる時間が長い人などですね。

また、太陽光発電と蓄電池を導入すれば停電時でも安心して過ごせるZEHは、災害時でも柔軟に対応できるレジリエンス住宅でもあるので、災害に備えたい人にも向いています。あとはカーボンニュートラルやSDGsなどに関心がある、環境意識が高い人にも良いでしょう。

一方で、短期的に住み替える予定がある人には、ZEHは向いていません。住宅の本当のメリットは、やはり10年、20年と住み続けたときに実感できると思うので、数年で手放す前提なら導入費用に見合わない場合もあるでしょう。また、一般的な住宅に比べてZEHは建築費がかかるため、とにかく初期費用を抑えたい人にも不向き。ただ、補助金やローン控除を活用すれば負担はかなり軽減できるので、そこはしっかりと計算して考えたほうがいいですね。

このほか、日当たりが悪かったり狭小地だったりと、太陽光発電に不向きな立地もあります。ただ、この場合は先ほどお話しした創エネ設備のないZEH Orientedが対応する可能性もあるので、上手に選んでいきたいですね」

ZEHの設備と仕組み、高断熱・省エネ・創エネのポイント

写真:家の屋根にソーラーパネルを取り付けるイメージ

「高断熱、省エネ、創エネはZEHの3本柱」と、Yuuさん。これらをバランス良く組み合わせることで、ネット・ゼロ・エネルギーの達成が可能になるそうです。では、これらを実現するには、何が必要なのでしょうか? Yuuさんに教えてもらいました。

外気温の影響を受けにくい、高い「断熱性能」(外皮性能)

「高断熱住宅とは、保温力のある家のことです。言うなれば魔法瓶のようなもの。住宅も外気温の影響を受けにくいよう、壁や屋根、床、窓から熱が逃げにくい、もしくは入りにくい仕様としています。

この保温性能を表す物差しとなるのが、外皮平均熱貫流率。家の中の熱がどれくらい逃げるのかを数値化したもので、UA値として示されます。UA値が小さいほど熱は逃げにくく、たとえばZEHは0.4〜0.6以下。より断熱性能が求められる寒冷地の場合は0.4以下になるなど、地域によっても変わってきます」

この高断熱を実現するには、壁や屋根、床などに高性能な断熱材を入れ、窓は高断熱窓にすることが必要。さらに、湿気だけをうまく逃がすように、防湿シートも使われるのだそう。

「もちろん、施工精度の高さも重要です。いくら高性能な断熱材を使っても、隙間だらけでは熱の出入りを抑えることはできませんから。つまり、気密性も高める必要があるということですが、同時に換気もきちんとしないと、家の中の空気が汚れてしまいます。こうしたさまざまなポイントを押さえるためには、技術力の確かな施工会社さんを選びたいもの。また、ZEH補助金を申請するには、ZEHビルダー/プランナー登録者が必要となるため、登録されている会社かどうかも確認するようにしましょう」

「省エネ」を実現する高効率な設備機器(エアコン、給湯器、照明など)

写真:エアコンのスイッチを入れる女性のイメージ

ZEHとして認証されるには、空調、給湯、照明、換気の消費エネルギー量を削減する必要があります。それぞれ、どのような点をチェックすれば良いのでしょうか?

「空調では、高効率のエアコンを使うことが重要。最新の省エネ基準を満たしたエアコンは、非常に少ない電力で効率的に冷暖房を行うように設計されています。さらに、AIの搭載で人の活動量などに合わせた運転をしてくれるのも特徴です。

給湯では、エコキュートのように少ないエネルギーで効率良くお湯を沸かす、高効率給湯器を。また、キッチンや洗面、お風呂の水栓を節水タイプに変えれば、給湯エネルギーのさらなる削減につながります。そして、家の中の照明はすべてLEDにすることで省エネに。

換気については、全熱交換型換気システムが有効。空気の入れ替えをする際に熱を回収することで、快適な温度のまま換気し、冷暖房の負荷を軽減できます」

ZEHでエネルギー収支をゼロにするのは、あくまで計算上のこと。そのため、上記の住宅設備はすべてZEHに必須というわけではありませんが、いずれもゼロを目指すうえで重要な存在なのだそう。さらに、「省エネでは、消費エネルギーを削減するだけでなく、設備機器をいかに効率良く使うかも重要」と、Yuuさん。そのために活用できるのが、HEMS(ヘムス)です。

「Home Energy Management System(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を略したHEMSは当初、電力の見える化という役割を果たしていました。今はさらに進化しており、太陽光で発電した電気をいつ、どこでどう使うかまでコントロールできる頭脳のようなものとなっています。

機種によっては、太陽光でつくった電気をできるだけ自宅で消費するように制御したり、蓄電池や電気自動車と連携させて、停電時にスムーズに電気を使えるように管理したりするタイプも。見える化によってムダが見えてくると、“洗濯はこの時間にしたほうがいい”などの気付きも得られます」

「創エネ」の仕組み(太陽光発電+蓄電池)

「住宅で使うエネルギーをまかなうことを考えると、創エネの代表格はやはり太陽光発電システムです。こちらは、屋根に設置された太陽光パネルを用い、太陽の光エネルギーを電気に変換するシステム。発電される電気は直流のため、パワーコンディショナーで交流に変換して家庭内で使います。

また、ZEHに必須ではないことからあまり注目されていませんが、蓄電池も重要な設備。なぜなら、太陽光発電でつくった電気の自家消費率が高まるからです。売電価格が下落し、電力会社の電気代が高騰している現在は、つくった電気を売るよりも自宅で使うほうがお得。災害時には非常用電源として使えるのも、蓄電池の大きなメリットだと思います」

イラスト:ZEHの設備 断熱性能(壁や屋根、床などの断熱材、高断熱窓)、省エネ設備・機器(高効率エアコン、高効率給湯器、LED照明、換気設備)、創エネ設備(太陽光発電)

いくらかかる? 回収できる? ZEHの費用と補助金

写真:電卓

一般住宅との違いは? ZEHの価格相場

「建物のZEH化にかかる金額は、100万円から300万円くらいが目安。また、太陽光発電の設置には80万円以上かかり、一般的な発電量である3〜5kWのシステムだと100万円から200万円くらいですね。さらに、蓄電池を設置するなら100万円から150万円、HEMSは5万円から10万円くらい。これらをトータルすると、一般的な住宅に285万円から660万円が上乗せされることになります。ただ、ZEHは補助金制度があり、また光熱費も削減できるため、中長期視点で見ると投資としては決して悪くないと思いますね」

ZEHに使える補助金制度(国・自治体など)

「ZEHの補助金には、国から給付されるものと自治体から給付されるものの2種類があります。2025年6月現在、国の制度は『ZEH支援事業』『子育てグリーン住宅支援事業』のふたつ。前者はZEHの区分によって補助金の額は変わり、前者は1戸あたり55万円から90万円が交付されます。

一方、後者は子育て世帯と若者世帯が対象で、ZEH水準住宅の補助額は1戸あたり40万円。さらに、“GX指向型住宅”と呼ばれるZEH基準を大きく上回る省エネ性能をもった住宅なら、1戸あたり最大160万円もの額になります。GXは求められる性能がとても高いのですが、この補助金のためにGXを検討する人も少なからずいますね。

もうひとつ、自治体が設ける補助金制度については、対象や金額は自治体ごとに変わってきます。制度自体がない場合もあるので、詳しくはお住まいの自治体にたずねてみてください」

なお、こうした補助金制度は、複数を併用できない場合もあるのだとか。

「たとえば、国の制度である『ZEH支援事業』と『子育てグリーン住宅支援事業』は、どちらかしか申請できません。ただし、自治体の制度とは併用できるケースもあるので、可能かどうかは必ず確認しましょう。また、補助金制度は予算の上限に達した時点で終了となる可能性があるほか、年度ごとに内容が更新されたりもするので、常に最新情報をチェックしてください」

費用対効果は? 何年で元が取れる?

「ZEHの初期費用を回収するには、10年から15年くらいが目安と言われています。また、家族の人数や暮らし方にもよりますが、光熱費の削減効果は年間10万円から20万円程度。これが年間10万円だったとして、10年で100万円が節約できるうえに、賢く使いこなせば多少の売電収入も見込めます。基本的には家族4人で在宅時間が長い家庭ほど、回収スピードが早い傾向にあるのだとか。

一方で、定期的にメンテナンス費用がかかることは念頭に置く必要があります。もし、ZEHを検討するなら、家族の人数やライフスタイルに基づいて回収年数をシミュレーションしておくといいですね。工務店やハウスメーカーには専門家がいるので、ぜひ相談してみてください」

ZEHにおける家電の重要性と選び方のポイント

写真:室内に設置されたエアコン

ZEHの実現には高効率な家電や設備が不可欠

ZEHでは日々使用する家電の省エネ性能にも注目することが必要。特に、エアコンや給湯器、照明などの住宅設備にかかる電力は一次エネルギー消費量に含まれており、ZEH基準の達成に大きく貢献するため、しっかりと見極める必要があります。

省エネ性能を見抜く! 家電ラベルやHEMS連携

家電の省エネ性能は、商品やカタログなどに統一省エネラベルとして表示されています。季節家電であるエアコンの場合は、通年エネルギー消費効率(APF)が大きいほど高効率となるので、カタログなどで確認しましょう。また、Yuuさんが言うように、HEMSは対応する家電の電力使用状況を確認したり、最適化させたりすることも可能。HEMS対応であることを家電選びの基準のひとつに加えておくと良さそうです。

まとめ|ZEHを正しく知って、これからの住まいと家電を選ぼう

「ZEHは単に、省エネ性能が高い住宅ではありません。光熱費の高騰、災害リスクなど、不安が多い今の時代、安心して快適に暮らせる住まいの形だと思っています。一般的な住宅よりも初期費用はかかりますが、補助金制度や電気代を考えれば導入のハードルも下がるはず。

住宅の高性能化が進む中で、ZEHは今後の標準となるでしょう。そこでどう暮らすか、どんな道具を使うか、どう制御するかをしっかりと考慮することが大事。住宅の高性能化、省エネ家電、住まい手の省エネ意識という3つの要素は、これからの暮らしに不可欠な三本柱になるのではないでしょうか」

ZEH住宅に関する監修

Yuu(本名:尾間 紫)

Yuu(本名:尾間 紫)

多くの現場経験や相談実績を持ち、リフォーム全般に精通する一級建築士。住宅リフォームコンサルタント・住宅リフォームガイド。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱しており、講演・監修・執筆などを通じて本当に満足するリフォームのノウハウを伝えている。総合情報サイト『All About』リフォームガイド。

2025年12月18日 空気

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