辛いものを欲するには、ワケがある⁉血行促進とストレス解消で肩こりの原因を改善

監修:尾都野 信子 (おずの のぶこ)
ライター:UP LIFE編集部
2023年10月3日 健康

腰痛と並び、身体の悩みの筆頭に上がる「肩こり」。原因には肩関節の血行不良があるといいます。今回は血行に良い影響を与える辛味料理と肩こりの関係を、医学博士の尾都野 信子先生にお聞きしました!

肩こりの原因は「血流」にある

写真:女性が肩こりを気にしているイメージ

古来から多くの人々が悩まされてきた肩こり。昨今の国民生活基礎調査においても、有訴者率は腰痛に次ぐ第二位で、医療技術が発展した現代でも多くの人々が経験する痛みでもあります。肩こりの原因を尾都野先生に聞くと、ずばり「血行不良」という言葉が返ってきました。

「肩関節周りの筋肉がこわばることで血流が滞り、筋肉に必要な酸素の運搬がうまくいかなかったり、老廃物が除去できず蓄積することで、肩の痛みやだるさといった『肩こり』が発生します」と尾都野先生。

血流は、筋肉の収縮と弛緩によって維持されています。筋肉が緊張すれば血管が圧迫されて血流が滞り、緩めば血流が改善しますが、長時間のデスクワークなどで姿勢が固定されると自ずと筋肉が緊張し、血行不良につながっていきます。

元々の姿勢や体幹の弱さが肩こりの原因となることも…

その他には、姿勢の悪さや体幹の弱さも肩こりの一因になるそう。

「背骨はゆるやかなS字カーブを描き、その上に頭が乗っている状態です。この背骨のカーブが乱れると、肩関節にかかる負担も増えていきます。人の頭部は6〜7kg、両腕も体重の10%程度の重さがありますから、これらを支える肩周りの筋肉はそもそも負担が大きいのです。体幹が整っていて、背骨に歪みがなければその重量も均等に分散できるのですが、姿勢が悪かったり体幹が弱い場合は、重みを支え切ることができないことも」と尾都野先生。

こりの原因にアプローチする!?肩こりと辛みの素「カプサイシン」の関係

写真:唐辛子のイメージ

それでは、肩こりの原因となる血流にアプローチするためにはどうしたらよいのでしょうか?

「大前提として、身体を温めることが大切です。湯船につかって温まったり、タンパク質を積極的に摂取する方法もありますね。たとえば辛い食べ物で、身体をあたためる方法もありますよ」。

尾都野先生によると、生姜やスパイス類のような辛味のある食材には身体をあたためる効果があるそう。

「とうがらしの辛味成分であるカプサイシンは、食べるとアドレナリンの分泌が増えます。その結果、骨格筋に栄養を与える比較的太い血管の血流が改善するといわれています。逆に抹消血管はアドレナリンが出ることで閉まる可能性あるので、全身の血流が改善するとは言い切れないのですが、肩まわりの血管には良い作用があるかもしれません」。

辛味が血流を改善する!?

辛いものが無性に食べたくなったことはありますか?
この“無性に食べたくなる"という現象に理由はあるのでしょうか?

尾都野先生によると、ストレスの原因となる外部からの刺激(ストレッサー)に対する生理的な反応の可能性があるそう。

「ストレッサーを感じたときに、それに適応しようとする身体の反応を“ストレス反応"といいます。科学的に証明されているわけではありませんが、普段よりも辛いものが欲しいと感じるときは、ストレス反応として身体が辛いものを欲しているのかもしれません。実際に、カプサイシンなどの強い刺激を摂取することでアドレナリンが分泌されます。身体がストレッサーに打ち勝つための反応ですが、結果的に身体はあたたまりますし、一時的に血行も促進されます。

さらにアドレナリン分泌による高揚感のあとには、気分がスッキリした感じを受ける方も。そういった意味では、辛いものは血行促進だけでなく、気分転換につながるという人もいるでしょう」。

美味しく食べて、肩こりを改善しよう!

写真:女性が伸びをしているイメージ

辛い料理で血行促進することは、辛いものが好きな方であれば、比較的生活の中に取り入れやすいはず。
アドレナリンが分泌することによるスッキリ感も、ストレス性の肩こりの方をはじめ、おすすめできそうです。

「おいしくチャレンジできるのも魅力ですよね。でも辛いものを一度にたくさん食べたり、辛いものばかりを継続的に食べるのは禁物です。特にカプサイシンは胃腸への負担が大きいもの。ふだんから胃腸が弱かったり、下痢や便秘のある方は食べ過ぎはいけません。また、カプサイシンによるアドレナリン分泌により血圧が上がる場合もあるので、高血圧の方は要注意です。個々の体質に合わせた食べ方を心がけましょう」。

肩こり改善には、肩甲骨を動かすことや骨盤底筋群トレーニングもおすすめ!

また、肩関節の筋肉を刺激することも大切です。

「肩甲骨を動かす、まわす、また腕を上げ下げする。単純な動きですがやはり肩こりには効果がありますね。さらに、姿勢が悪く前屈みになると腹筋が弱くなります。すると頭や腕を支える肩まわりの負担が増すので、腹筋や背筋といったインナーマッスルを鍛えることも症状の改善につながります」。

取り組みやすいのは骨盤底筋群トレーニング。椅子に座った姿勢で尿道や膣付近の筋肉を意識し、グッと力を入れるのを数回繰り返すことで、背骨の根本にある骨盤底筋群が整い、必然的にその上の背骨の位置も修正されます。

「肩こりの原因となる肩関節の筋肉は、体幹や肩甲骨、頭部を結ぶので、しっかりゆるめて血行促進をすることが大切です。おいしくケアできる食事をはじめ、取り入れやすいトレーニングや生活習慣の見直しなど、自分に合った方法を見つけてほしいですね。ぜひ、挑戦してみてください!」。

監修

写真:尾都野 信子(おずの のぶこ)さん

尾都野 信子(おずの のぶこ)

医学博士。医療法人淳信会理事、株式会社グリーンハート代表。藤田医科大学(旧;藤田保健衛生大学)医学部を卒業後、同大学附属病院にて臨床研修、リウマチ・膠原病内科へ入局し学位取得。自身の体調不良をきっかけに、食事や生活習慣を改善。その経験をもとに、オリゴスキャンをはじめとした検査機器を用いて「目に見える体内栄養素バランスの改善」をコンセプトに診療を行っている。米コロラド州NTI(Nutrition Therapy Institute)認定栄養コンサルタントとしても活躍。ヘルスケア関連の商品やサービスにはエビデンスが大切!という信念のもと、大学や研究室と連携してヘルスケア企業のエビデンス構築のサポートや商品開発にも力を入れている。代表を務める(株)グリーンハートの商品、サプリメント『つきみちる®』は積み重ねたエビデンスが評価され、未病総合研究所のアワードにてグランプリを獲得、未病ケア商品として認定された。

2023年10月3日 健康

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