春先に起こる足むくみの原因の1つに自律神経の乱れが?専門医が教える「春むくみケア」

監修:長﨑 和仁(ながさき かずひと)
ライター:UP LIFE編集部
2025年2月12日
健康

春の気配を感じて、心は軽やかなのに身体が重い…。そんな経験はありませんか?実は季節の変わり目であるこの時期には、身体がむくむ原因がいくつもありました。中でも今回は春先に起こる足のむくみについて、足の総合病院である下北沢病院副院長の長﨑和仁先生にお聞きしました。

春先は足にとって要注意の季節!?春に足がむくむ原因

写真:女性がふくらはぎを触っている様子

春になるとおとずれる足のだるさ。気づいたらむくみが強くなっていたという人もいるかもしれません。また、むくむと見た目も気になりますよね。春先に足がむくむのはなぜでしょうか?長﨑先生に聞くと、春には足がむくむ原因が複数あるようです。

複数の要因がある春先の足むくみ

「冬から春への移行期は、足にとって特別な季節かもしれません。実は、むくみや重だるさの原因となる様々な条件が揃うのが春先と言っても過言ではないでしょう。気温や気圧の変化、日照時間や生活リズムの変化、花粉症などのアレルギー反応や運動不足などが『春むくみ』に関係しています」と長﨑先生。

ポイントは自律神経

気温や気圧、日照時間と生活リズムなどの変化は、自律神経に影響を及ぼします。そして自律神経は血流に影響します。血流とむくみは密接に関係していて、血流が少なければ筋肉がこわばりふくらはぎのポンプ機能が下がったり、血流が多くても水分量過多でむくみにつながるなど、バランスが必要になります。

気温、気圧×自律神経の関係

気温や気圧と自律神経はどう関係しているのでしょうか?

「春は高気圧と低気圧が頻繁に入れ替わり、気圧の変動が大きい季節。気圧が変化すると内耳や神経系を刺激して、自律神経が乱れる原因となります。特に気圧が低くなると、倦怠感や頭痛、むくみが出やすくなります。
さらに気温に寒暖差があると交感神経と副交感神経のバランスは崩れやすくなります。

それに春先は眠っていた身体が目覚めていくタイミング。交感神経が優位になるので、動脈が収縮し血流は低下します。その影響でふくらはぎに十分な血流が供給されず、筋ポンプ作用の低下を招き、むくみが起こることが考えられます。

また、血管が締まると皮膚の代謝も下がります。すると皮膚に代謝物がたまりやすくなり、結果むくみにつながるということもあります」

日照時間×自律神経の関係

日照時間の変化による影響もあります。冬から春になるにつれ日照時間は長くなり、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンや、幸せホルモンのセロトニンの分泌量が変わっていきます。これらが体内時計に影響し、自律神経に不調をもたらすことがあります。

生活リズムの変化やアレルギーと自律神経の関係

また、春先は進学や就職などで環境にも変化があるとき。生活リズムの変化からストレスがたまり、交感神経が過剰に活性化されるなどして自律神経が乱れることがあります。また、花粉症によるアレルギー反応で、ヒスタミンが放出され血管が拡張、開いた血管からは水分が漏れ出しむくみが引き起こされることも。さらにアレルギー反応による疲労から自律神経が乱れ、むくみの連鎖に。

運動不足も要因になる

冬は運動量が減ります。筋肉の働きが弱まれば静脈やリンパの流れが阻害され、むくみになります。寒さで筋肉もこわばるので、ふくらはぎのポンプ機能が低下してむくみにつながることもあります。

女性は注意!ハイヒールとむくみ

もう1つ、むくみと関係あるのがハイヒールを履く習慣。
「ハイヒールだと足首とアキレス腱の動きが制御されたまま歩くことになります。実は日頃から足首を動かして歩くと、むくみを軽減できるのですが、ハイヒールだとそれができません。フラットシューズのように足全体を着地させ、地面を蹴り上げながら歩くのがベストです」

夏から冬よりも注意したい、冬から春!

なお、春先と比べ、夏から冬のような活動が盛んな季節から落ち着いていく季節は自律神経への影響は少ないよう。
「やはり、活動量の少ない冬から春にかけての時期が一番、自律神経への影響が大きいですね。夏から冬は、セロトニンの低下がありますが、自律神経そのものへの影響は春先の方が顕著です」

意外と知らない!足のむくみの原因・総復習

写真:女性が着圧ソックスを履く様子

さてここで、なぜ足がむくむのか、むくみの改善方法についての復習してみましょう!
以下の質問、みなさんはどのくらい正解できますか?

1.むくみは水分が多くて起こるもの。むくみを感じる時は水分を控えたほうが良い

×
水分を取らないと身体は水をためようとして逆にむくむ。1日1ℓ〜2ℓの水分を摂って、ふくらはぎをしっかり動かし、水分を循環させるのが良い

2.アルコールを飲むと、足がむくむ


アルコールには利尿作用があり、摂取すると脱水を引き起こす。脱水になると身体は水分を保とうとするので一時的にむくむ

3.足のむくみには、強めのマッサージが良い

×
強くもんでもむくみは改善しない。一般的なむくみならイタ気持ちいい程度にマッサージするのがおすすめ。中には病気が潜んだむくみもあるので、たとえば片足だけむくむといった人は医療機関に相談しよう

4.足のむくみには、ふくらはぎをマッサージすると良い


足のむくみの解消には、ふくらはぎのポンプ機能を利用することが必要。また、ひざ裏にあるリンパ節を刺激することでむくみの軽減が期待できる

5.足がむくむ時は、動かず安静にする

×
安静よりも、適度な運動などでふくらはぎのポンプ機能を働かせることが大切。疲れて休みたいときは、足を心臓よりも高くすると良い。重力の影響で血液は下にたまるので、眠るときも足元が心臓より高くなるようタオルなどを引いて、その上に足を乗せて寝るのがおすすめ

6.着圧ソックスはむくみに効果があるので、それ以外の部分もきつめの服を身につけるのが良い

×
たとえば上半身を締め付けると腹圧がかかるので、足から上がってきた血液が心臓に戻りにくく、むくみになってしまう。ひざ下までの締めつけがおすすめ

7.むくんだ時は、まず温めるのが良い


むくんだ足は、血管が収縮して代謝が落ちている可能性がある。入浴などして温めることで、こわばったふくらはぎをやわらかくすることができる。冷やすとさらに代謝が落ちてしまうので注意しよう

8.足がむくんだら、熱めのお湯で入浴すると良い

×
適温は38〜40度。熱めではなく、人肌程度の温度で身体の芯から温まるのが良い。シャワーと比べたら、湯船のほうが水圧がかかるので、断然湯船がおすすめ

9.足のむくみ予防には、日頃から運動やウォーキングをするのが良い


足のむくみは、ふくらはぎや足首を動かす運動が有効。したがってウォーキングなどの有酸素運動や適度な運動が効果的。昇降運動や、座った姿勢でもできる足首の上下運動などをこまめに取り入れていこう

専門医おすすめ!むくみを解消する「春の足むくみケア」とは?

写真:女性が足をマッサージする様子

足のむくみの原因をおさらいしたところで、では実際にむくみのケアはどのようにすればよいのでしょうか?

「足のむくみには、ふくらはぎマッサージと足首の上下運動をメインで行っていきましょう」と長﨑先生。

春の足むくみ、解消ケア

【1】ふくらはぎのマッサージ

ふくらはぎの一番ふくらんでいる部分を両手で後ろから包むように握り、下から上へもみほぐしていく。強すぎず弱すぎず、気持ちいいと感じる程度にもむ。入浴後や寝る前などのちょっとした時間に行う。

ふくらはぎのマッサージのイラスト

【2】足首の上下運動

座った姿勢でつま先を上げたり下げたりする。20回ほど繰り返し、また気づいたときに同じように行う。

足首の上下運動のイラスト

上記の2つのケアは、回数や行うタイミングなどの制限はないそう。自分が心地よいと思える頻度やタイミングで行っていきましょう。

簡単な運動やストレッチで副交感神経を優位に!春のむくみを乗り越えよう

「また、上記のケアだけでなく、日頃からよく歩くことで足のむくみは予防できます。アキレス腱伸ばしなど簡単なストレッチを追加するのも良いですね。市販の弾性ストッキングを履いて、ウォーキングやストレッチを行うのもおすすめです。こういった軽めの運動やストレッチを取り入れることで、乱れがちな自律神経のバランスも整っていきます。さらに深呼吸や入浴、短時間の瞑想を取り入れることで、リラックス効果を得られ、副交感神経を優位に保つことができます。交感神経が優位になりがちな春だからこそ、リラックス時間や気分転換も取り入れていきましょう!」

監修

写真:長﨑 和仁さん

長﨑 和仁(ながさき かずひと)

医師、下北沢病院副院長。慶應義塾大学医学部を卒業後、国内の病院に勤務し研鑽を積む。2004年、スタンフォード大学外科フェローとして渡米、帰国後は浜松日本赤十字病院外科部長、さいたま市立病院血管外科医長を経て、現職。著書に「足の先生!足のむくみ、だるさ、冷え、下肢静脈瘤 どうすればラクになるか教えてください。」(アスコム)や「新しい『足』のトリセツ」(日経BP)など。その他「名医のTHE太鼓判!」「DayDay.」をはじめ、メディア出演多数。日本唯一の足の総合病院・下北沢病院の看板医師として、日々治療にあたり、多くの患者様からの支持を得ている。

2025年2月12日 健康

  • 記事の内容や商品の情報は掲載当時のものです。掲載時のものから情報が異なることがありますのであらかじめご了承ください。