女性ホルモンの変化と「痛み」の関係とは?基礎体温を知ることで予測できる!女性の痛み


監修:山崎 愛美(やまさき かなみ)
ライター:UP LIFE編集部
2025年5月15日
健康
肩こりや腰痛、ひざの痛み…。一見、性別とは関係がないような部位の痛みですが、最近ではこれらの痛みの背景に、女性ホルモンが関係していることがわかっています。頻度の差はあれど、痛みを感じたことが無い女性は少ないはず。今回は女性が抱える痛みについて、理学療法士の山崎愛美先生にお聞きしました。
どんな痛みがある?女性に多い痛みの種類

身体のどこかが痛い!何かしらの痛みに悩まされる女性は多いはず。実は痛みの感受性には性差があり、女性の方が痛みを感じやすいという研究※もあります。
女性ホルモンの変化が自律神経に影響して、痛みを引き起こす
「女性は、ホルモンバランスの変化によって、ひと月の間でも肩こりや腰痛などの骨盤まわりの痛みが出やすい時期があります。出産や更年期などライフステージが変わるタイミングでは、女性ホルモンも大きく変化するので、手指やひざなどの関節が痛くなったり、痛みによる倦怠感も感じやすいかもしれません」
生涯を通じ、大きく変化する女性ホルモン。このホルモンの変化によって血流を制御する自律神経が影響を受け、血行が悪くなり、筋肉がこわばって痛みにつながるという一連の流れがあります。
また、女性ホルモンの影響だけでなく、日常生活によって痛みが出やすくなる場合があるそう。
「デスクワークなどで同じ姿勢でいることが多い方は、首、肩、腰の慢性痛が出やすいです。立ち仕事の人にも足腰の痛みが出やすいですし、ヒールの影響で足指の変形もあるかもしれません。また、介護や保育のような中腰になる機会が多い人は、腰痛率が高いですね」
ホルモンバランスやワークスタイル以外に、女性だからこそ痛みを感じやすくなる理由はあるのでしょうか?
女性だから痛む!?女性と痛みの密な関係

女性の身体構造が痛みと関係している可能性もあるそう。
女性の筋肉や関節と痛みのつながり
「女性は男性と比べ、筋肉量や関節の形状にやや違いがあるため、それが痛みの間接的な原因になる場合もあります。
たとえばぎっくり腰はインナーマッスルが弱かったり、正しく機能できていない場合に起きやすいもの。インナーマッスルは妊娠や出産で機能が低下するので、産前産後に腰痛が出るのは当然です。また、骨盤も男性に比べ幅が広く浅い構造。その構造自体が痛みを起こすわけではありませんが、不安定になりやすい形状ともいえます。
さらに、靭帯も女性の方が柔軟性が高いんです。女性アスリートが月経前に怪我をしやすいというのは、月経前にホルモンの影響でさらに靭帯の柔軟性が高まることも関係しているかもしれません」
痛みの知識を上げる!
女性ならではの身体構造やワークスタイル、生活習慣が女性ホルモンの周期と相関し合って、さらなる痛みを呼ぶことも。しかも、痛みが慢性化するとメンタルヘルスにも影響します。慢性化させないためには、痛みを知ること=「痛みの知識を上げる」ことが大切!
山崎先生は、生まれ持った身体構造を変えることはできなくても、女性ホルモンの変化を理解して、痛みがでにくいよう予防することが重要だと話します。
女性の基礎体温でホルモンの変化を把握しよう!
「たとえば、女性の基礎体温を測ることで、少なくともひと月の間に起こるホルモンの変化は把握できます。体温が高温期に入る黄体期から月経までの期間は、女性ホルモンが乱高下します。その結果、水分や老廃物がたまってむくんだり、血行不良で筋肉がこわばるなどの症状が出ることも。さらに月経がはじまれば自律神経が乱れ、血流が悪化し筋肉の痛みだけでなく冷えやだるさも出てきます」
痛みも気持ちも楽に!女性ホルモンの変化から考える痛みの予防と改善

黄体期から月経後までの期間は、どのように過ごせばよいのでしょうか?
身体を温めることが大切!
女性ホルモンの影響で女性の体温はひと月の間に変化します。高温になったら黄体期が始まった合図です。
この時期はホルモン変動による身体の変化がみられるため、激しい運動は避けてウォーキングなどの軽い運動や、
入浴で身体を温めることがおすすめ。そして体温が下がったら始まる月経期では、身体を温めつつ休ませて、
リラックスすることを心がけましょう。
身体の温めには、さまざまな温活グッズの力を借りるのも良いでしょう。
「足首を温めると身体が温まりやすいです。足首は筋肉や脂肪がうすいので血管が皮膚表面に近い状態。外からの温めや、足首のストレッチで、直接的に血液を温めることができるのです」
この期間の身体の変化を整理すると…
黄体期(高温期) | 月経期(低温期) |
---|---|
身体中の痛みを感じやすい時期 | 腰痛や下腹部痛など、骨盤まわりの痛みが出やすい |
身体を温め、ウォーキングなどの軽い運動を | 無理な運動を避け、リラックスして過ごす |
痛みに先手を打つ!新しい痛み対策
「基礎体温を把握しながら痛みを感じやすい黄体期の過ごし方を考えることで、痛みに先手を打つことができるかもしれません。痛みや不調があると、外出を諦めたり気分も落ち込みますよね。女性ホルモンの変化はネガティブな影響として捉えられることもありますが、この女性特有の変化を知ることができれば、痛みや不調が出る前にケアができますし、気分も楽になると思います」
監修

山崎 愛美(やまさき かなみ)
理学療法士。産後リハビリテーション研究会代表。海外で行われている産前産後の母親に対するリハビリテーションに感銘を受け、医療職に向けた産前産後の母体へのリハビリを提案する「産後リハビリテーション研究会」を立ち上げる。川崎市を拠点とする「Women’s Body Labo」も主宰。助産雑誌「ウィメンズ運動療法」(医歯薬出版)の執筆や、「たまごクラブ」(ベネッセコーポレーション)の監修も。
- 出典 Li, Jessica X.L., et al. "Sex differences in pain expressed by patients across diverse disease states: individual patient data meta-analysis of 33,957 participants in 10 randomized controlled trials." Pain 164.8 (2023): 1666-1676.
2025年5月15日 健康
- 記事の内容や商品の情報は掲載当時のものです。掲載時のものから情報が異なることがありますのであらかじめご了承ください。