つらいPMS(月経前症候群)は、いつからはじまる?基礎体温で予測し、快適に過ごそう

監修:里井 映利(さとい えり)
ライター:UP LIFE編集部
2025年7月9日
健康

月経前の心身に影響を与える「PMS(月経前症候群)」。毎月のこととはいえ、月によって症状の出方が異なるなど、ふり回されてしまうという人もいるかもしれません。今回は、PMSについて「戸越銀座レディースクリニック」院長の里井 映利先生にお聞きしました。

月経前の不調「PMS」が起こる理由

写真:女性がソファに座って目を閉じている様子

すでにPMSという言葉も浸透し、月経前の心身の不調に対する理解も広がりつつある昨今。しかし、知識としては知っていても、うまく付き合えるかどうかは別問題です。
里井先生に聞くと、月経前に体調不良を感じる方はPMSの可能性が高いそう。

PMSとは?原因や期間は?

「PMSとは、月経がはじまる約2週間前から直前までの間に起こる心身の不調のことです。正直なところ、PMSが起こる原因はまだしっかり解明できていません。しかし、月経前に女性ホルモンが急激に下がることにより、脳内ホルモンや神経伝達物質のバランスが崩れることで、心身に影響が出ると考えられています。ただ、原因が完全に解明されていない以上、環境やライフステージなどの要因も関係しているといわれています」

また、PMSの症状は月経がはじまっても残ることがあるそうですが、月経後まで続く場合は、別の病気が隠れている可能性もあるようです。

PMSの主な症状は?

PMSの主な症状は、吐き気や腹痛、眠気、落ち込み、イライラ、頭痛など。中には、胸の痛みを訴える方もいるといいます。
「人によって症状の種類や感じる度合いが異なります」と里井先生。

症状がひどい場合は、PMDD(月経前不快気分障害)の可能性も

さらに、PMSよりも症状が重く日常生活に大きな支障が出る場合は、「PMDD(月経前不快気分障害)」の可能性があり、専門の医療機関を受診するのがおすすめです。

基礎体温で予測!PMSがいつからはじまるかを知り、備える

写真:グラフを指す手と温度計

そんなPMSですが、基礎体温計を使い普段から体温の変化を知ることで、はじまる時期を予測することができます。

「PMSは月経前の高温期に症状が出ます。普段から基礎体温をつけていれば、かなり正確にPMSがはじまる時期がわかります。大事な予定などは避けるなど、スケジュールの管理もしやすくなるかもしれません。少なくとも心身の不調に対する心構えができますし、予め体調が崩れる可能性を知ることは大きなメリットだと思います」

高温期が目印!PMSのはじまる時期を知ろう

里井先生によると、以下の図のように月経約2週間前からはじまる高温期が、PMS開始の合図になるといいます。

月経周期における体温の変化を示すグラフ。低温期・排卵日・高温期・PMS期間などが記載されている。

予め知ることで、大切な日も快適に

「PMSの時期を快適に過ごすために、自分の身体と心に合った症状の改善方法を探してみてください。心地よく過ごすための選択肢があれば安心できますし、たとえば、人生の岐路になるような大切な日がPMS期間中にあったとしても、事前に知っていればあわてることもありません」

PMSを軽減して、いつも「通常運転」できる生活に

写真:女性が顔に触れている様子。

では、PMSの時期の見当がついたところで、症状を軽減させる方法はあるのでしょうか?

医療の力を借りる選択肢

里井先生に聞くと、医療の力を借りて行う方法と、生活の工夫でつらさを和らげる方法があるといいます。
「医療の力を借りる場合に即効性が高いのはピルです。つらい場合はクリニックに相談し、ピルを処方してもらうのがおすすめです。しかし飲み忘れなど管理に気を使うこともありますし、安全性は高いですがリスクはゼロではありません。
2つ目の選択肢として挙げられるのは、漢方です。体質改善が見込めて人気がありますが、効き方はピルと比べてマイルドです。リスクは多くありません」と里井先生。

普段の生活から改善を行う場合は?

そのほかに、日常生活の過ごし方を工夫し、症状を少しずつ軽減していく方法もあります。

「有酸素運動がおすすめです。週に90分から150分。ウォーキングやジョギングができるとよいですね。また睡眠も大切。睡眠の充足感には個人差があるため、寝足りなさが残らないぐらいしっかり寝られるとよいです。さらにカルシウムやマグネシウム、ビタミンB6の摂取もよいでしょう。食事で摂ることが難しければサプリメントでも大丈夫です。あとはストレス管理も大切ですね。自分の時間を持つことが解決の糸口になると思います」

身体を温めると楽になる

また、昔から月経中とその前後は身体を温めると良いと聞きます。

「実際に、漢方の観点では、月経前から月経中は血や水が身体に滞る時期とされています。身体を温めることで循環を促すことができ、症状が改善しやすくなるのだと思います。また半身浴やレッグウォーマーを使い身体を温めたり、冷たい飲み物を飲みすぎないなど注意することも大事ですね」と里井先生。

知ることが、健やかな生活の第一歩になる

里井先生は、つらい症状には対処法を知ることが鍵になるといいます。
「対処法を知らない状況では、アクションを起こせないし、ましてや治療の選択肢を増やすこともできません。まずはPMSについての正しい知識を得ること。それが症状と戦う武器になると思います。その上で治療の有無を選択すればよいですし、何かに支障が出てから治療をするのではなく、時間に余裕をもって対処することも重要だと思います。

最近では、受験を見据えてPMSをコントロールしたいと希望する中高生の患者さんも少なくありません。個人的にはそういった考え方はとてもよいと思います。治療の選択肢について考える余裕もありますし、治療に入っても薬の変更や治療そのものの試行錯誤など、いろいろ試す時間もあります。

PMSの症状があることは自然なことなので、どのくらいの状態で自分の身体に介入したいか、普段から意識していただけるとよいと思います!」

監修

写真:里井 映利さん

里井 映利(さとい えり)

医師、戸越銀座レディースクリニック院長。日本医科大学医学部卒業後、日本医科大学付属病院、都内周産期センターや総合病院で研鑽を積む。厚生中央病院の産婦人科医として活躍したのち、2024年に思春期から更年期後まで、全てのライフステージの女性の健康を支える「戸越銀座レディースクリニック」を開院。SNSを通して、婦人科系の症状や対策などについても紹介している。

2025年7月9日 健康

  • 記事の内容や商品の情報は掲載当時のものです。掲載時のものから情報が異なることがありますのであらかじめご了承ください。