【お風呂の専門家がすすめる】自律神経を整えて、睡眠の質を上げる入浴法

監修:早坂 信哉(はやさか しんや)
ライター:UP LIFE編集部
2025年12月15日
健康

自律神経を整えるにはさまざまな方法がありますが、忙しい生活の中に取り入れるのは至難の技です。調べてみると睡眠前の入浴を活用して、自律神経を整える方法があることがわかりました。今回は自律神経と入浴、睡眠の関係について、東京都市大学の早坂信哉先生にお聞きしました。

自律神経に影響を与える睡眠

写真:女性が眠っている様子

日本人の睡眠時間が諸外国と比べて少ない傾向にあるといいますが、最近の調査ではどうでしょうか。

40〜50代の4人に1人は不眠!?

「変わらず、日本人の睡眠時間や睡眠の質は改善されていないかもしれません。2023年の調査では、30〜50代の男性、そして40〜60代の女性の4人に1人が慢性的な不眠状態にあることがわかっています」と早坂先生。

※出典:厚生労働省「令和5年(2023)国民健康・栄養調査」の結果

睡眠不足や不眠は心身に与える影響が大きいですが、自律神経にも大いに影響するよう。早坂先生によると、そもそも自律神経のバランスが正常でないと、睡眠が取れないといいます。

自律神経と睡眠の関係

「日中の活動を支える交感神経が、夕方に向かって休息を司る副交感神経に切り替わっていくのが本来のあり方です。しかし現代は、副交感神経が働く時間帯に交感神経を刺激することが多い環境。夜遅くまでの仕事やスマートフォンの使用、アルコールや精神的ストレスも副交感神経へのスムーズな切り替えを難しくする要因になります」

質の良い睡眠とは?「スッキリしたかどうか」が睡眠の質を判断するポイント

睡眠不足や睡眠の質の低下は、目覚めたときの体感によって判断できるといいます。
「やはり睡眠の質が下がるとスッキリは起きられません。自律神経が整っている場合は、朝方に休息側の副交感神経から活動側の交感神経へとスイッチします。これが正常に行われれば目覚まし時計に頼らなくても、アラームが鳴る前に目が覚めますが、その逆ならば起きられないですし、起床後も疲れが残っているように感じます」と早坂先生。

睡眠前の入浴を活用!自律神経を整える習慣で睡眠の質を上げる

写真:お風呂場のイメージ

睡眠が自律神経にも影響を与えることがわかりましたが、実際にどうしたら睡眠の質が上がるのでしょうか?

入浴で副交感神経にスイッチし、睡眠を変える

「最低限の睡眠時間の確保や、就寝前のスマートフォンの使用を控えるなど心がけてほしいこともありますが、手軽なのが入浴を利用する方法です。実は適切な条件のお風呂に入るだけで、交感神経から副交感神経への切り替えが行われ、自律神経のバランスを整えることができるんです」

入浴で深部体温を上げて、スムーズな入眠を促す

入浴で就寝前の身体の深部体温を上げることができると早坂先生は話します。
「より良い睡眠のためには、入眠が大切。そのためには就寝前に一旦、深部体温を上げることが重要です。人は深部体温が上がってから1〜2時間で自然と下がり、そのタイミングで入眠していきます。入浴によって深部体温を上げることで、その後の体温の低下の基盤をつくることができます」

だからといって、闇雲に湯船に浸かればいいわけではないと早坂先生。
良い睡眠のために以下の条件を守って入浴してみましょう。

質の良い睡眠に導く!「入浴のイロハ」

  1. 湯温は38〜40度
  2. 入浴時間は10分
  3. 湯船からあがったら、PCでの作業やスマートフォンの使用は避ける

「入浴のイロハ」の注意点は?

湯温は上記の温度より1度でも高くなると作用が変わってくるそう。副交感神経を呼び起こすためには「ぬる湯」がおすすめです。熱い湯が好みの方もいると思いますが、夜に42度を超える湯に浸かると交感神経が活性化し、眠りにつきにくくなってしまいます。

また、入浴時間は連続しなくても良く、洗髪をはさむなどしてもOK。10分が長く感じる人は、ラジオや音楽を聞くなど、ぼんやりしながらでもできることを入浴タイムに取り入れましょう。ただし気持ちがたかぶったり、頭を使うようなメールやSNSのチェックはおすすめできません。

さらに、特別な事情がない限り入浴は全身浴がよいでしょう。半身浴だと入浴時間を長くしなければなりませんし、上半身の冷えにつながることも。

マインドフロネス!?取り入れたいプラスαのテクニック

「プラスαのテクニックとして、湯船に重曹とクエン酸を2:1の割合で入れるのもよいでしょう。一般的な200ℓの湯船には、重曹が30g、クエン酸が15gほどの量です。湯が泡立ち、炭酸泉のように湯触りがよくなりますし、身体が温まりやすくなります。さらに、浴室の照明も明るすぎるものよりも暖色系がよいですね。洗面器に張った湯に好みのアロマを加えたり、手足から身体の中心に向かって手でゆっくりなでるようなマッサージも効果があります。湯船の中で瞑想をしながら腹式呼吸をするのもおすすめ。呼吸は吸うを1、吐くを2の割合で息を吐くのを長くするのがポイント。『マインドフロネス』と呼んでいますが、これらは副交感神経を活性化する方法として取り入れて損はないでしょう」

入浴で睡眠の質が上がり、自律神経も良いバランスに!

写真:伸びをしている女性

早坂先生は、それぞれの自律神経が「働くべきときに作用する状態」というのがベストだと話します。

「自律神経が適切なタイミングでスイッチし合うことで、心身にメリハリが生まれます。そのような状態では、日中は元気に働けますし、夜もスムーズに眠れ、翌朝もスッキリ起きられる。つまり1日を通して快適に過ごすことができるんです。そのためにできることの1つが入浴。最近は風呂キャンセル界隈といった言葉もありますが、ぜひ毎日の入浴に目を向けていただきたい。入浴は自律神経の調律やスムーズな入眠だけでなく、認知症やうつ病、介護予防などにも効果的です。風呂は将来の健康をつくる。それが実現できる場所だと思います!」

監修

写真:早坂 信哉さん

早坂 信哉(はやさか しんや)

医師、医学博士、温泉療法専門医、東京都市大学人間科学部/理工学部医用工学科教授。自治医科大学医学部卒業。同大学大学院在学中に入浴に関する調査・研究をはじめる。その後、同大学医学部総合診療部にて研鑽を積みながら、2005年にはサウナに関する研究をスタート。現在は東京都市大学で教鞭をとるかたわら、温泉やサウナ、入浴の健康効果について情報発信し、人々の健康維持に尽力している。メディア出演も多数、著書に「入浴 それは、世界一簡単な健康習慣」(アスコム)、「かんたんお風呂ヨガ―毎日のなんとなくダルいをほどく」(創元社)など。

2025年12月15日 健康

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