元野犬が愛情をたっぷり受けて家庭犬へと大変身
きっかけはパナソニック保護犬猫譲渡会

ライター:川本央子、フォトグラファー:川面健吾
2026年10月2日
ペット

人も犬も猫も「家族」みんなが幸せにくらせる社会の実現を目指して開催している「パナソニック保護犬猫譲渡会」(協力:朝日新聞社sippo編集部)。これまでにのべ3万人以上が来場し、399頭(2026年9月9日時点)の譲渡につながっています。

奨太郎さん、美保さん夫妻は、2024年4月開催の譲渡会で、元は野犬だった「ハニー」ちゃんと出会い、家族に迎えました。一つひとつの不安に丁寧に向き合い時間を重ね、今では散歩では公園に集う他の飼い主と親睦を深め、ハニーちゃんは気の合う友達犬とじゃれ合って遊ぶなど、くらしは幸せにあふれています。その歩みを聞きました。

金色のまつげをたたえたまっすぐな瞳

——犬を迎えようと思った経緯を教えてください。

奨太郎さん:一生に一度は犬を飼いたいという思いがずっとあって、妻にもそのことを話していました。犬を迎えたら、そこから10年、15年の付き合いになりますよね。自分たちの年齢を考えると、迎えるなら今なのではないかというタイミングでした。

美保さん:私は坂上忍さんのことがすごく好きで、「坂上どうぶつ王国」を以前から見ていました。番組を通して譲渡会のことも知っていたので、まずは家族で譲渡会に行ってみることにしたんです。パナソニック保護犬猫譲渡会も、坂上さんの活動を見ているなかで知りました。

——迎えるなら、保護犬と決めていたということですか?

美保さん:はい、決めていました。坂上さんの活動を通して保護犬やその保護活動を見ていましたし、私は3頭の猫とくらしてきた経験があるのですが、その子たちはみんな捨て猫でした。ペットショップで犬や猫を買うという意識が、そもそも私の中になかったように思います。

奨太郎さん:妻は昔から、保護犬や保護猫を取り上げた動物番組は必ず録画して、熱心に見ていました。ふと見ると大号泣していることもあったりして。

美保さん:とはいえ、最初は雰囲気を知るという気持ちで譲渡会を訪れていました。パナソニック保護犬猫譲渡会は行ってみた2つ目の譲渡会だったのですが、1つ目もこのときも、その場で犬を決めようとは思っていませんでした。

——それが、出会ってしまった?

美保さん:そうなんです。ハニーはずっと同じ場所に座っていたのですが、瞬間的にパチッと目が合いました。金色のまつ毛をたたえ、まっすぐこちらを見てくる瞳に、どうしようもなく惹(ひ)かれました。

写真:ハニーちゃん(推定5歳・女の子)
ハニーちゃん(推定5歳・女の子)

——即決という感じだったのですか?

美保さん:いえ、それがまったく(笑)。もともと小型犬と思っていたのですが、ハニーは13kgの中型犬であることがネックでした。私のなかで、犬を迎えることと看取ることはセットだったので、果たしてハニーのような中型犬を、病気になったときに介護できるだろうかという不安がありました。

奨太郎さん:譲渡会は一番早い時間帯の枠に参加していたのですが、会場近くのファーストフード店と、再び戻った会場で、ひたすら家族会議をしました。最後は時間にせかされるように、夕方の譲渡会終了間際に申し込んだ感じでした。

時間を重ねることで、くらしのビジョンが見えた

——トライアル※までも時間をかけたと聞きました。

美保さん:ハニーの保護団体は「特定非営利活動法人ALMA(アルマ)」さんです。譲渡会の後日、「お世話など、ハニーとかかわる練習に来ませんか」と連絡をいただきました。毎週行かせてくださいと伝えて(笑)。それから1カ月の間、毎週末、夫と子どもも一緒にハニーに会いに行きました。

奨太郎さん:ハニーは元野犬の子だったので、人慣れできるのだろうかという思いもあったため、ボランティアさんがする散歩に同行させてもらい、その後にはふれあいタイムも毎回つくってもらっていました。

美保さん:クレートの中にいるハニーを「出してみて」と言われたとき、最初はかまれるのではないかと、怖くてできませんでした。でもそうした気持ちも正直に伝えて。「難しいと感じることがあれば何でも言ってくださいね」と言ってくださり、私たち家族の気持ちに寄り添ってくださったことに今でも感謝しています。

(※トライアル=正式譲渡の前に一定期間一緒にくらして相性や生活環境を確認するお試し期間のこと。多くの保護団体で譲渡審査の一環として行われています)

写真:おやつをもらうハニーちゃん
おやつをもらうハニーちゃん。食べることが大好き!

——トライアルへの決め手は何でしたか?

美保さん:会いに行くにつれてハニーとのくらしがイメージできようになっていきました。イメージでき、これなら大丈夫そうだと、私が納得したタイミングだったと思います。

奨太郎さん:正直に言うと、私は早い段階でいつ来てもいいよという気持ちになっていました。でも、私は仕事がありますし、ハニーのお世話をする時間が長くなるのは妻です。一緒にいる時間がもっとも長い人が納得することが大切だと思い、そのときを待っていました。

美保さん:トライアルでイメージはより明確なものとなり、そのまま正式譲渡となりました。

写真:ハニーちゃんと犬友
いつものお散歩コースでは、犬友がたくさんできた

初めての旅行で、「飼い犬」になった

——ハニーちゃんが来た当初、大切にしていたことはありますか。

奨太郎さん:ハニーは家に来るなりダイニングの一画に置いたクレートに入って、そこを居場所にしたようでした。まずはハニーに安心してもらうことを大切に、声かけを意識的にしつつも、ハニーの居場所にはいないようにしました。ただ、初日、翌日と、ハニーはずっとクレートに入ったままでした。もともとの習性やクレートで過ごしていた保護施設での習慣を思うと、このままだといよいよ出てこなくなりそうだと思いました。

美保さん:習慣が根付いてしまう前に家の中に慣れてもらおうと考え、トライアル3日目にはクレートの上部を外し、クレートの周囲を囲っていたサークルも早めに撤去して様子を見てみることにしました。するとハニーは、ダイニングテーブルの下で過ごすようになりました。ハニーの安心した様子に私たちもひと安心。おかげで散歩にも連れ出しやすくなり、そうしてよかったと思っています。

写真:まったりゴロゴロするハニーちゃん
まったりゴロゴロするのも散歩中の楽しみ

——生活で困るようなことはありましたか?

美保さん:それが、本当になかったんです。ハニーは半年くらい新しい家族が決まらなかったと聞いていたのですが、そのことが信じられないくらい、来たときからお利口でした。

奨太郎さん:攻撃的な面もない穏やかな性格に加えて、アルマさんのところでとても上手にトレーニングをしてもらっていたのだと思います。来たときから散歩を楽しんでいましたし、自宅でのケアや動物病院の診察もおとなしくさせてくれました。

美保さん:体が大きな人を怖がったり、ハーネス(胴輪タイプの散歩用具)を変えたら警戒して散歩を拒否したりすることはありましたが、問題に感じるほどではありませんでした。むしろハニーの苦手なことを知ることができ、理解が深まるのを感じていました。

写真:保冷剤を入れたクールネックとハーネスカバーをつけたハニーちゃん
保冷剤を入れたクールネックとハーネスカバーは美保さんの手作り!

——ハニーちゃんとの距離が縮まったと感じる、ターニングポイントのようなものはありましたか?

奨太郎さん:旅行です。2025年の秋に、ハニーと一緒に静岡県の伊東に行きました。ハニーは終始うれしそうで、海岸ではしっぽをブンブン、ドッグカフェでは鹿肉のメニューを前に目をキラキラさせていました。アルマさんに写真とともに旅行の報告をしたら、「飼い犬になりましたね」と言われ、その言葉にジーンとする気持ちになったのを覚えています。

美保さん:旅行以来、ハニーは昼間私たちが出かける準備をしていると「どこかに連れていってくれるの?」とわくわくした顔をするようになりました。新しい場所では不安そうにすることが多かったのですが、旅行が本当にいい経験になったと感じています。

写真:お散歩するハニーちゃん
ハニーちゃんはお散歩が大好きで、朝は美保さん、夜は奨太郎さんが担当。夜は休憩しながら約2時間たっぷり楽しむことも多い

ハニーがいる、それだけで幸せ

——ハニーちゃんの好きなところはどこですか?

奨太郎さん:笑っている顔ですね。

美保さん:ハニーはうれしいときや楽しいとき、目を細めて笑っているような顔をするんです。食べることが大好きなのでジャーキーをよく作るのですが、作っていると「私のでしょ?」と見てくるその顔もすごくかわいくて大好きです。

写真:こちらを見つめるハニーちゃん
「父、母だいすき」

——素敵ですね。夢だった犬とのくらし、今、幸せですか。

奨太郎さん:それはもう。本当に夢だったから、旅行のような特別な時間だけでなく、自宅でブラッシングしているような何気ないときも、そこにハニーがいるだけでいつも幸せを感じています。

美保さん:それに、ハニーが来て私たちも健康になりました。毎日の散歩で足腰が強くなり、早足でスタスタ歩けるようになりました。

写真:ぐんぐん歩くハニーちゃん
ぐんぐん歩くハニーちゃん。全身から「楽しい!」が伝わる

美保さん:実は、今年の5月に元保護猫の「ソラ」も迎えました。ハニーを迎える前年に、結婚と同時に実家から連れてきていた先代猫の「くう」を看取っていました。犬派の夫と猫派の私との間で、「犬と猫、同時に一緒にくらす」という夢を昔から持っていたのですが、くうを亡くしたことが本当につらくて、猫は迎えられないと思っていました。それがハニーとの幸せな日々を送っていくうちに少しずつ前向きな気持ちになり、叶えることができました。

奨太郎さん:成猫だと先住犬に慣れにくいと聞き、アルマさんに相談して子猫を紹介してもらいました。ソラが来てすぐのハニーは、存在しないものとしてソラから一生懸命目をそらしていましたが、今では並んでご飯を食べられるまでに距離が縮まりました。

美保さん:ハニーは私たちの娘そのものだと感じます。それこそ夫は、ハニーにデレデレ(笑)。ソラも一緒に、この先も楽しくくらしていきたいです。

写真:ハニーちゃんとソラくん
ソラくんもすくすくと成長中(提供:美保さん)

家族にだけ見せてくれる姿にもまた、いとしさが増す

——ハニーちゃんとここまで歩んできて、今感じていることを教えてください。

美保さん:元野犬の子は警戒心が強かったり、人間に対して怯(おび)えたりする子も多いと思います。でも、ハニーは優しくて、穏やかで、トレーニングの合図もよく理解するとても賢い子です。野犬の中にもいろいろな性格の子がいることを知ってほしいと感じています。

奨太郎さん:人間だって、一人ひとり性格が違いますよね。野犬の子が持つ特性をその子の個性として受けとめると、個性はいとしさに変換されることを実感します。

美保さん:信頼関係を築くのに時間はかかるかもしれませんが、その個性は、野犬だったときその子が生きるために習得した大切な術なのだろうとも思っています。笑ってくれたり、体を預けてくれたり、日々成長します。家族にしか見せない顔を見せてくれるたびに、いとしさが深まっていきます。外の生活で苦労した分だけ、1頭でも多くの子が、家族の一員として幸せに過ごしてほしいと思っています。

写真:ハニーちゃん

ご夫妻の言葉は、ハニーちゃんのためを思い、ハニーちゃんの幸せこそが自分たちの幸せであるということが伝わるものばかりでした。保護犬や保護猫を迎えるにはいくつかの条件がありますが、それはさまざまな状況から保護された経緯のある犬や猫が再びつらい思いをしないための安全策であり、迎える側にとっても「安心して家族として迎えるための準備」と言えます。そして、迎えた先には、かけがえのない時間が待っています。

家族のかたちはそれぞれでも、ともに過ごす時間がかけがえのないものであることに変わりはありません。パナソニックは、保護犬猫譲渡会の開催や、犬猫とのくらしに寄り添う製品づくりを通じて、人も犬も猫も「家族」みんなが幸せにくらせる社会の実現を目指してまいります。

2026年10月2日 ペット

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