トヨタマリン 様
この記事を要約すると
・トヨタマリンがスポーツ ユーティリティ クルーザー PONAM-31 Z Gradeを発売中
・それまで車に搭載していたナノイーXを、同モデルで海上モビリティに初めて搭載
・船に搭載するにあたっての効果の検証や、採用の経緯を紹介
トヨタの乗用車にも多く採用されているナノイーXを、プレジャーボートでは世界で初めて採用した、スポーツ ユーティリティ クルーザー PONAM-31 Z Grade。スピードや乗り心地へのこだわりはもちろん、「空気環境」にまでこだわった、その理由とは。トヨタマリンとパナソニックの担当者に聞いた。
※掲載の情報は2023年7月31日現在の情報です。
※パナソニックが依頼し、取材した内容を編集して掲載しています。
高井 智祐
トヨタ自動車株式会社
マリン事業室 企画・開発グループ長
津田 潤一
トヨタ自動車株式会社
マリン事業室 トヨタマリン営業所
サービスチーフ
仁田 直宏
パナソニック株式会社
くらしアプライアンス社
ビューティ・パーソナルケア事業部
デバイスビジネスユニット
デバイスブランドマネジメント部
機能デバイスマーケティング課
廣部 正裕
パナソニック株式会社
くらしアプライアンス社
ビューティ・パーソナルケア事業部
デバイスビジネスユニット
デバイス商品部
機能デバイス設計1課
トヨタの乗用車では、すでに“おなじみ”のナノイーX。
確かな清潔・快適効果と、水由来のやさしさに注目して採用を決めた。
高井(トヨタマリン):
もともと、トヨタでは49車種と大変多くの車種にナノイーXを採用しています(2023年6月取材時。ナノイー・ナノイーXの総計)。日々、クルーザーに採用する新機能を発掘している中で、「空気環境にもこだわりたい」というニーズが高まってきているのを感じていました。
お客様からも「自動車にはナノイーXついてるのに、クルーザーにはついていないの?」というお声をいただくこともあり、新モデル発表のタイミングで搭載を決めました。
PONAM-31では、釣り、クルージングはもちろん、パーティーやキャンプのようにお使いいただいたり、さまざまなシーンで心地よく過ごしていただくことを想定しています。Z Gradeは、VIPやゲストをお招きしたラグジュアリーな過ごし方にも適した船ですので、滞在時間も長くなることを想定し、船内の空間づくりには非常にこだわっています。
クルーザーの世界は、エアコン自体もオプション扱いの船も多い中、Z GradeではナノイーX搭載エアコンを標準装備しているのも、そのためです。
PONAM-31 Z Gradeは、「Luxury party style」と「Workcation Utility」をコンセプトに掲げている。船内で快適にくつろいでいただけるプライベートスペースでありつつ、パーティーシーンでも船内にいたいと思えるかを突き詰めた設計が魅力のひとつ。
高井(トヨタマリン):
特に、ナノイーXの脱臭効果に期待しています。持ち込んだお食事などのニオイもありますが、海のモビリティ特有の磯の香りや、釣ったお魚のニオイなど、陸上とは違うニオイの問題がありました。そうした空間のニオイを、発生時に独特なニオイが出ることもなく、お客様も気づかないうちに効果を発揮してくれるのがいいですよね。
PONAM-31 Z Gradeは、内装にもこだわっておりまして、スエード調のファブリック素材のソファなどを採用しています。こうした布製品などに付着したニオイを少しでも軽減できるということも期待して採用を決めました。
また、菌やウイルスへの抑制効果も、かなり意識してナノイーXを採用しています。新しい生活様式の浸透もあり、たとえばリモートワークなど、長く滞在するような場合でも、しっかり快適に安心して過ごせる空間を提供したいという思いがあります。その点では、非常に期待を込めてナノイーXを採用しています。
(写真は船内エアコンの吹き出し口付近)
津田(トヨタマリン):
お客様の安心・安全というところを第一に選ぶ必要があるので、水から生まれたイオンというところも安心材料のひとつでした。また、ナノイーXは車や家電などで、すでにかなりなじみのあるブランドということもあり、お客様に安心をご提供しながら自然にお使いいただけるだろうと思えたことも、大きな後押しになりました。
船は、単なる移動空間ではなく「くらし」空間。
船内でまんべんなく効果を発揮できるよう、1日かけて実艇検証を実施。
廣部(パナソニック):
もともと、乗用車には多く採用していたナノイーXですが、車と船では容積も大きく異なりますし、船内4ヶ所の吹き出し口のうち、どこから、どのようにナノイーXを放出するのが最適なのかを検証する必要がありました。
高井(トヨタマリン):
車と違って船で過ごす際は、船内でお客様が移動されます。単なるモビリティー(移動空間)としてだけではなく、比較的長い時間を暮らす空間でもあるんですよね。船内で過ごすみなさんに、しっかりナノイーXが行き届くように細かな調整や検証をお願いしました。
廣部(パナソニック):
はじめに、シミュレーションを複数回実施し、最適なナノイーX発生デバイスの取付位置を検討しました。最終的に、船内前方と後方の2ヶ所のエアコン吹き出し口から空間をはさみこむようにナノイーXを放出することを提案し、採用していただきました。
次に船を1日中お借りできたことにより、シミュレーション通りにナノイーXが船内にまんべんなく行きわたっていることを確認できました。
船内のナノイーX拡散シミュレーション
前側、後ろ側にそれぞれ1台ずつ取り付けた場合(下図)の方が、緑色になっている箇所が多く、濃度の偏りが少ないことが分かります。船内にまんべんなくナノイーXが広がっている証拠です。
●図中白い矢印はエアコンからの風の吹き出し方向を、色の濃度は空間中のナノイーX濃度を表しています。赤に近づくほど濃度が高く、青に近づくほど濃度が低いことを表します。
真横から見た図
上図:船内後方に2台取り付けた場合は、サロンスペース上部にナノイーXが集中しています。
下図:運転席前、船内後方に1台ずつ取り付けた場合は、座ったときの目線の高さまでナノイーXが届いています。
真上から見た図
上図:船内後方に2台取り付けた場合は、運転席左横にナノイーXが集中しています。
下図:運転席前、船内後方に1台ずつ取り付けた場合、サロンスペース全体に、ナノイーXが均一に行きわたっています。
ナノイーX発生デバイスは、基本的に交換不要。
お客様にも余計な手間をおかけしないという大きな魅力があった。
津田(トヨタマリン):
船は、とても長い時間お使いいただけるものです。当社のクルーザーも、20年以上現役でご愛用いただいているものも多くございます。
一定期間経つと交換が必要になるようなものだと、なかなか使いづらいなというところもありまして、ナノイーXのように交換不要で長く使えるものは、アフターサービスの目線でもとても魅力的でした。
高井(トヨタマリン):
消耗品がないのは、お客様にとってもうれしいですよね。
津田(トヨタマリン):
プロダクトライフ自体は長いのですが、船の使用時間は、多くても年間150時間ほどと言われています。すでに家電への搭載実績があるナノイーXですが、家電の場合は1年でもっと多くの時間使用しても交換不要で使えるとお聞きしているので、長く使うクルーザーにも安心して採用できています。
自動車メーカーであるトヨタだからこそ造れるクルーザー。
船内で過ごす体験価値に重きを置いていきたい。
高井(トヨタマリン):
トヨタマリンは、自動車の世界でしっかり積み重ねてきた信頼性の高い技術を海の世界にも応用したクルーザーを提供しています。エアコンも、もちろんそのひとつです。また、トヨタが理想に掲げている“FUN TO DRIVE”を実現するために、自動車でも使われているエンジンや、波の衝撃を和らげ安定感のある乗り心地を可能にするアルミ製の船底を採用しています。
さらに、船の操縦をサポートする制御技術は、自動車の自動運転技術を応用して開発されています。
こうしたトヨタの技術を存分に生かして造られたクルーザーに、パナソニックさんが20年以上研究を続けているナノイーXを搭載できたことで、船上、船内での体験価値により重きを置いたクルーザーへ近づけることができたと感じています。
津田(トヨタマリン):
何も意識しなくても、普段通りに過ごすだけで快適にすごせる空間をつくってくれるのが、ナノイーXの魅力ですよね。本当にすごいなと思います。
船内のニオイは、船酔いにも影響することがあり、マリンアクティビティへのハードルを上げている要因にもなっています。ナノイーXが搭載された空調が当たり前になっていって、クルーザーをいまよりもっと楽しい空間にしていければいいなと思いますし、今後もいろいろな分野に広がっていっていただきたいなと感じます。
仁田(パナソニック):
クルーザーへの搭載ははじめてで、当初は懸念もいくつかありましたが、トヨタマリンさまのご協力もあり、最適な形でナノイーXをご活用いただけています。
私は、10年以上ナノイーXに携わっておりますが、ナノイー搭載エアコン累計1,000万台、自動車への搭載も、おかげさまで累計1,000万台を突破しました。今では、自信をもってみなさまにおすすめできる技術だと自負しています。
廣部(パナソニック):
現在、納入事例は自動車が多い状態ですが、船のようなラグジュアリー空間をはじめとして、今後ももっといろいろなところにアプローチし、広げていけたらいいなと思います。
トヨタマリンとパナソニック、双方の技術を掛け合わせて、空気質の視点からクルーザーの世界に新しい価値をもたらした。これまで自動車や鉄道には多く採用されていたナノイーXだが、ついに陸の世界を越えて海上、船の世界まで広がっている。今後も、ナノイーXの広がりには、期待が寄せられている。