ジェットウォッシャー開発ストーリー “二律背反”への挑戦 - Episode 02「痛くない」かつ「汚れを強力に除去する」水流をつくる。
ジェットウォッシャー開発ストーリー “二律背反”への挑戦 - Episode 02
「痛くない」かつ「汚れを強力に除去する」水流をつくる。
技術開発 谷口 真一
汚れを強力に除去し、かつ、弱った歯ぐきでも痛くない水流の開発。
汚れを強力に除去するために、まず思いつく手段といえば、水圧を上げること。しかし、健康な歯ぐきならば問題ないのですが、歯周病に罹患した歯ぐきは弱っているため、高い水圧の水流だと、痛みを感じたり出血したりすることがあります。
かといって、痛みを感じにくくするために水圧を下げると、歯間や歯周ポケットの汚れを洗い流す能力が落ちてしまいかねない、という問題がありました。「痛くなく」かつ「汚れを強力に除去する」水流を開発する必要があったのです。
その“二律背反”を両立したのが、超音波水流※です。今回、新しくなったジェットウォッシャーEW-DJ52は、コードレスモデルとしては初めて、超音波水流※を搭載することに成功したのです。
コードレスモデルで超音波水流※を実現するには、新しい技術開発が必要でした。
「ノズルのくびれ」と「流速」が、超音波水流※を生み出す。
超音波水流※は、水流に含まれる微細な気泡が歯に当たって弾ける際の衝撃波が超音波を発生させ、それにより歯の表面の汚れを洗い流す、というもの。超音波水流※を発生させるには、「ノズルの先端がくびれていること」と「くびれ部分の流速を上げること」が必要でした。
「ノズル先端のくびれ」は金型を工夫することで実現できます。一方で、「くびれ部分の流速を上げること」は難題でした。「くびれ部分の流速を上げる」ためには、ノズル内、特にくびれ部分に残った水をいったん取り除き、くびれ部分から先端にかけての水の通り道を「空」にしておく必要があるのです。「残った水」に道をふさがれないことで、本体内のポンプから吐出される水の勢いが失われない、というわけですね。
ノズルのくびれ部分に残った水を取り除くには、どうすればいいか。たどり着いたのは、残った水をノズルの根本側に移動させるため、ポンプに「吸う」機能を持たせることでした。
左は水流のみ、右は超音波水流※。超音波水流※には微細な気泡が含まれています。
ノズルの形状や長さによって、発生する気泡の量にも変化が。様々な形状・長さの試作品で検証を重ねました。
汚れを強力に除去できると同時に、「口に入れやすい」ということも重要だと考えています。
新開発のポンプが“二律背反”の課題を両立させた。
ところがポンプというものは、水を「出す」のは得意ですが、「吸う」のは難しい。色々なアイディアを出して試作品をつくっては、うまくいかなくて…ということの繰り返しでした。考えれば考えるほど構造が複雑になってしまい、とても量産化できない、と思うこともありましたね。
様々な試行錯誤を経て開発した、水を「出す」と「吸う」を両方行えるポンプ。この「吸う」機能は、実は、満水時の使用時間を長くすることにも繋がっています。旧商品をハイスピードカメラで見ると、ノズルの先端から勢いよく水が出た後に、汚れの除去に寄与しない水がちょろちょろっと出ているのですが、この水を出さずに「吸う」ことで、全体として水の使用量が減り、使用時間が長くなったのです。
超音波水流※は当たりが柔らかいので、物足りなく思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、洗浄力は従来の水流より格段に上がっています。口腔内を健康に保つために、ぜひ使っていただければと思っています。
※バブルが弾ける際の衝撃波により超音波が発生する水流。