パナコラン開発秘話
累計130万台の大ヒット 家庭用の高周波治療器の登場
1989年(平成元年)10月、当時の松下電工は、家庭用高周波治療器「パナコラン」を発売しました。政治評論家の細川隆一郎氏が出演したCMの影響もあり、「パナコランで肩コラン」というキャッチフレーズとともに、商品は世の中に急速に浸透していきました。
パナコランの開発がスタートしたのは、発売の4年前の1985年まで遡ります。
欧州で手術後の早期回復等に利用されている高周波治療にヒントを得て、家庭用の簡便な治療器として独自に考案した研究試作が、開発責任者の目に留まりました。9メガヘルツの微弱な高周波を身体に当てていると局所の痛みが和らぐ感覚があり、何とかこの全く新しい技術を生かした製品開発をできないかと考えはじめました。
しかし、商品化には、幾多の困難が立ちはだかりました。なかでも困難を極めたのは、医療機器として発売するための承認を得ることです。家庭用の高周波治療器というもの自体、それまで前例のないものでした。医療機器として販売するには、新たに臨床試験などで安全性や有効性を証明し、薬事審査をクリアする必要がありました。薬でいうと新薬の開発に相当するような大変な開発となりました。
臨床試験は公立の病院、2箇所において最低60人の患者さんに試してもらって効果を証明するというもの、臨床試験には筑波大学、及び東京大学等が引き受けてくれることになりました。臨床試験はダブルブラインドテスト(二重盲検法)と言って、動作するサンプルと、形が全く同じで動作しないサンプルの2種類を作り、どちらかわからないようにして患者さんに使用して頂き、試験を行うというものでした。動くサンプルを使った患者が効かないと言ったら有効性はないということになり、動作しないサンプルを使った患者が効くと言ったらそれは暗示的な効果しかないという試験で、とても厳密な評価をクリアしなければならなかったのです。臨床試験の結果は極めて良好で、学会にも発表されましたが、それだけでは医療機器としての承認は得られず、何故効くのか? の作用機序を立証する必要もある、という大きな難題がありました。
作用機序を究明するには、更に大変な費用と時間が掛かりましたが、群馬大学や国立公衆衛生院の協力を得て、高周波が血管や血流に与える影響を実験で明らかにすることができました。
こうして念願であった医療機器の承認を得ることができ、4年の時を経てついにパナコランの発売に至りました。刺激感がなく、小型で、貼っておくだけで痛みを忘れることができると大変評価され、商品は売れに売れました。多いときでは月3万台、累計約130万台の大ヒット商品となったのです。
デジタル社会のコリに強~い味方、コリコランの登場
時代は変わり、IT機器の発達は私たちの生活を大きく変化させました。長時間のパソコン作業を伴うデスクワークやスマホの普及により肩コリや腰コリの悩みが急増しているという昨今の変化の兆しもあります。しかし忙しい日常でマッサージや整体に行く時間が中々取れない人が多くいます。このような環境の中、時間や場所を選ばず手軽にコリを治療できるニーズが高まっています。当社としてなんとかして悩みを解決できないか、その手段として当社独自の高周波技術に再び着目し仕事中までも治療時間に変える新たな提案できる可能性があると考え、開発を進めました。当時メガヒットしたパナコランをヒントに、現代社会にもマッチする治療器を提案できないか、新たな肩・腰コリ改善の文化を創造できないか、と考えた末に生まれたのがコリコランです。コリコランには、「世の中の働く人々の肩や腰のコリがない(凝らん)イキイキした生活を提案したい」 という想いが込められて名付けられています。