衣類乾燥機のデザイン
「主張しない造形、カラー、質感と、毎日の使いやすさ。今の世の中と人に寄り添う乾燥機を追求」
パナソニック株式会社
くらしアプライアンス社
デザインセンター
山中 重人
昨今、衣類乾燥機が注目を集めています。スペースの関係でドラム式洗濯乾燥機が置けない方や、ランドリールームを作りたい方を中心に、じわじわと人気が高まってきています。
パナソニックは、23年ぶりに新しい乾燥機を発売。2023年の今、くらしにしっくりなじむ乾燥機とはどのようなものなのか。デザイン担当者がその思いを語ります。
第一に、使い勝手
「乾燥機を新しくデザインする」という話を最初に受けたときは、正直驚きと同時に大きな期待を感じました。現行の乾燥機NH-D603・D503は2017年に発売されましたが、そのデザインは2000年に発売されたNH-D502という機種がベースとなっています。つまり23年ぶりの新デザインとなるわけです。
この期間で、世の中は大きく変わりました。
「今の世の中に合う乾燥機とは、どのような乾燥機であるべきか」、毎日使うものだから、機能だけでなく使い勝手まで含めたデザインを検証し始めました。
まずは、私自身が乾燥機を使っていた経験から、「衣類の取り出しやすさ」は改善したいと考えました。
投入口が小さいと、槽の中の衣類が取り出しにくく、中も見づらい。投入口を可能な限り大きくすることで、背の低い方でも槽の中が見やすく、衣類も取り出しやすくなっています。
次に「使う上での安心感」。
乾燥機のドアは人の目の高さにあるため、どうしても目につきます。そこにある大きな透明窓から中の様子が確認出来、フワッと乾燥していく様が見えることは大事なことだと思います。作業をしている過程を確認できる安心感は、当社の洗濯機と共通の価値として非常に重要なことだと考えています。
そして、ドアの手掛け部分にもこだわりました。ワンアクションの軽い力で開閉できるように、ドラム式洗濯機LXシリーズと同じ方式を採用しました。
手掛けのつかみやすさを重視すると取っ手自体が大きくなり、ボディーの凹みが正面から大きな穴のように見えてしまう。細かいことではありますが、毎日見て触れる部分に対しても、妥協せずに何度も微調整を加えることで、「使い勝手」と「デザイン性」を両立させることができました。
くらし、空間になじむこと
カラーと質感については「主張しないもの」が今の主流です。カラーはホワイト、グレー、ベージュなどロートーンで落ち着いた色合いが人気です。また、床や壁に合うマットの質感が好まれます。毎日見るものですから、空間に自然に馴染むマットな質感やロートーンのカラーリングにしました。
必要な情報を、必要なときにだけ。
乾燥機は1日中使っているわけではないので、電源がOFFの時間の方が長いです。そこで操作部に静電タッチパネルを採用し、空間のノイズにならないシンプルなデザインにしています。
電源がOFFのときは、表示が消えてスッキリ。電源を入れて運転中のときはそのコースが表示され、必要な部分のみ点灯するミニマムな表示となっています。
「こころに触れる清々しさ」を念頭に。
「空間に自然になじむ」という考え方は、ドラム式のLXシリーズや縦型のFW・FAシリーズと同じです。
乾燥機は、縦型洗濯機と組み合わせて使うわけですから、洗濯機のデザインと同じ考え方でデザインすべきと考えました。
ドラム式、縦型、乾燥機。それぞれデザイン担当は異なりますが、統一された世界観・雰囲気で構成されています。
(写真:左からNA-FA12V1、NH-D605、NA-JFA8K2、NA-LX129B)
私たちデザインメンバーが大切にしているのは、「こころに触れる清々しさ」というコンセプトです。
一人ひとりのくらしにそっと寄り添い、使う人の気持ちを汲み取ること。
温かみのあるテクノロジーで、五感に響く心地よさを生み出すこと。
そして、こころにも身体にも、健やかさをもたらすこと。
人とモノと空間が紡ぎ出すよどみのない調和から、「こころに触れる清々しさ」を感じていただけるように、メンバー各々が商品をデザインしています。
「乾燥機のあるくらし」を、一人でも多くの方に。
シンプルで、サニタリー空間に合う使いやすい乾燥機を目指してデザインしました。昔から乾燥機をご愛用いただいている方にも、新しく乾燥機をお使いになる子育てファミリーの方にも、使っていただきたい。
多くの方に気に入っていただけることを願っています。
写真はデザインモデルの為、実際と異なる場合があります。